The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

一中国人、されど英雄 イップ・マン 序章

 およそ一ヶ月前の「イップ・マン 葉問」に引き続いて「イップ・マン 序章」を観てきた。

 まあ、これ「序章」とついてはいるけれどおまけでも外伝でもなんでもなくて単にこっちが「1」で「葉問」の方が「2」なんですね。これ何でも反日描写が問題となって日本での一般公開が控えられたとのことなんですが、観てみると「それほど騒ぐほどのものかなあ」という疑問が湧く。勿論、僕はそういうのにあんまりうるさくないからかもしれないが。「2」の方が新宿武蔵野館で5000人突破すれば「序章」も公開、とのことだったんだけど単に話題づくりの出来レースのような気もする。
 

物語

 1935年広東省佛山。武術道場が集まるこの町で、詠春拳の使い手イップマン=葉問は町の名士として尊敬を受けていた。今日も新しく道場を開いた廖師匠との手合わせ挑戦を受けるがこれをあっさり退ける。それは戦った二人だけの秘密だったがたまたま窓からのぞいていた茶屋の次男が言いふらしてしまう。名誉を汚されたと道場主は葉問を問い詰める。茶屋の長男で廖の弟子でもある林が弟の嘘ということで話は収まった。この騒ぎを収めにきた警察署長、李訢はすでに武術の時代は終わった」と拳銃を向けるが葉問は一瞬のうちに拳銃を分解してしまうのだった。
 しばらくして、佛山に道場破りが現れる。その道場破りの金は次々と佛山の師匠たちを破り葉問に挑む。葉問はしょうがなく挑戦を受け入れこれを撃破する。町を守った葉問の名声はこれまで以上に高鳴り、署長が心酔したこともあって弟子志願者が大量に来るのであった。
 1937年、日中戦争勃発。1938年には佛山にも日本軍が進駐し、葉問の屋敷も日本軍司令部として接収され葉問一家は場所を移し極貧生活を余儀なくされる。妻が身体を壊し、葉問も日雇いの仕事に就くがここで林と再会する。また、署長が日本軍の通訳として日本の空手家と戦う武道家の志願を米一袋で募る。止める葉問を振り切って林は募集に応じる。しかし林が帰ってくることはなかった。次の日、林の安否を確かめに葉問も志願。そこでは日本の空手家と廖が組み手をしていた。見事空手家を降した廖だったが3人組み手に失敗、責任者三浦将軍の副官佐藤によって射殺されてしまう。怒った葉問は10人組み手を希望しこれを撃破。三浦に名を問われた葉問は「一中国人だ」と答えるが通訳の署長によって名を知られてしまう。
 さらにその頃、葉問の友人の紡績工場が盗賊となったかつての道場破り金に脅されていることを知り、葉問は詠春拳を工員に教える。そして再びやってきた金を撃退し林の弟も戻ってきた。
 日本軍によって家を追われる葉問。三浦は日本兵にも詠春拳を教えるように言うが葉問はこれを断る。だが、三浦と戦うことは承諾。かくして葉問と三浦の試合が始まった・・・


劇場に飾ってあった木人。一家に一台欲しい!
 
 「2」の方から見ているため、色々こんがらがることも多い。「2」の方ですっかり更正した伊武雅刀似の人が「序章」で道場破り後山賊になった金ですね。それと「2」の方でぼろぼろになってトリの丸焼きを万引きしてた人はこちらで紡績工場を経営してた社長さんですね。外見が全然変わってたので、後から確認しました。
 一番びっくりするのはずっと赤貧な葉問一家を見てたため「序章」冒頭での優雅な生活を送っている描写。これを見ると葉問師父は全然働いていない。彼は道場も開いていないし、悠々自適の生活を送っている。多分親の代からの資産家。善良なサイヤ人みたいなんもんですね。
 前半の平和な佛山と日本軍の進駐後の佛山では画面自体のトーンが大分違う。明るい光の下の前半と、どんよりした後半。まあ、どんなに言い繕ったところで、日本が中国に侵略したことは紛れもない事実なので悪役になることはしょうがないと思う。それでも三浦将軍(演じているのは池内博之)は正々堂々とした人物に描かれているしあからさまな間違った日本描写もないと思う。そもそもこれは「ドラゴン 怒りの鉄拳」とほぼ同プロットの話だ。
 ドニー・イェン演じる葉問師父は「2」」同様人格的に完成された理想の大人。途中から経験したことない貧乏生活に陥るためそこでの混乱が少し面白い。
 後は「2」の方ではひたすら耐える妻を演じてた美人の奥さんが、武術ばかりで子供に目を向けない夫をたしなめたりと元気な姿を見れるのも嬉しい。
 通訳を演じる人は日本軍と中国人の間に挟まれて大変な人なのだがこの人も葉問に心酔しており印象の強いキャラ。アメリカのテレビドラマ「DR.HOUSE」でジェームズ・ウィルソン医師を演じてたロバート・ショーン・レナードに似ていると思った。
 で、三浦将軍を演じる池内博之である。この人は大河ドラマ新撰組!」の久坂玄瑞役(ちなみに僕の中で久坂玄瑞武市半平太が「二大過大評価されすぎな幕末の人物」)が印象深い。この人が武術をたしなんでいるとは知らなかったが(wikipediaによると特技:柔道、らしい)、見事に凄腕の空手家を演じドニーさんとスウィングする組み手を見せてくれる。「2」の「ボクシング×中国武術」よりは「空手×中国武術」の方が親和性は高いよね。
 
 オープニングクレジットで「詠春拳アドバイザー」みたいな形でクレジットされてたのが葉準という人でおそらく劇中に出てくる葉問の息子さんですね。この子が道場破り金との試合中三輪車で割って入って母親の伝言「反撃しないと家のものが壊れるから反撃しなさい」を伝えるシーンは面白かった。で、この子は「2」の方でも同じ子役が演じてるみたいで「序章」が1935年に始まり「2」が1950年の話なのにほとんど成長していない!まあ、「ロッキー」シリーズでは急にスタローンの息子が成長したり「バットマン・ビギンズ」の時は赤子だったのに「ダークナイト」では小学生ぐらいに急成長してたジム・ゴードンJrみたいな話もあるのでいいんだけれど。
 
 この「序章」の最後を見ると最初から「2」を作る予定ではなかった風な終わり方でこちらはこちらで後にブルース・リーを弟子にとったというモノローグがかぶさる。その他何人かの登場人物の変遷を考えるとやはりできることならこちらを先に見てから「イップ・マン 葉問」の方を見た方がいいと思います。もし時間、地域的に都合のつく方はそのほうがオススメ!

やはり劇場にあった懸賞用のドニー・イェン師父のサイン入り「イップ・マン 葉問」DVD。スゲー欲しかったけどさすがにパンフもう一部買う余裕はなかった!

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 しかし、これ2作とも今年のベストに入るかも知れんよ。すごいなあドニー師父。
 
 今回の記事を書くに当たって@chatoraneko (とらねこさん)のツイートを参照しました。サンクスです。