日経メディカルのロゴ画像

年末年始に増える波照間の“風土病”
藤原 昌平(波照間診療所)

2011/01/26

 島で4回目の年越しを迎えた。年末年始は診療所も休診になっているので島で年を越す義務はないが、島に1人の医師である以上、島から出るのはためらってしまう。診療所を休診にして小さな島での年越しというと、のんびりとした年越しを想像されるかもしれないが意外と違ったりする。旧盆や年末年始には波照間島に帰省してくる方が多く、一時的に人口が増える。人口が増えると急患も増えるのだ。

 ところが最近、人口増加だけが理由ではなく、夏冬の人口が増える時期にのみ発症する疾患が有ることに気が付いた。「中指基節骨骨折」である。なぜこの疾患が多いのか順を追って説明したい。

 当然だが帰省するのは島出身者であり、同級生の久しぶりの再会となる。小さな島で中学校を卒業するまで一緒に成長してきた絆はとても強い。その絆の強さは、はたから見ていてうらやましくなるほどであるが、この同級生が集まると必ず宴会になるのが問題なのだ。

 皆、仕事が休みということもあって夜遅く(むしろ朝)までダラダラと飲む。島に来た当初は飲酒の機会の多さと時間の長さに驚いたものだ。特定健診時にされた調査で「毎日飲酒する」との回答が島民の約40%(女性も含めて)だったというのも納得できる飲みっぷりだ。私の外来では「毎日飲酒する」と正直に答えてくれる方は1%にも満たないのが悔しいところだが…。そんな訳でとにかくよく飲むのだが、やはり同窓会となると昔話に花が咲くらしい。そして男は必ずといっていいほど武勇伝を語り出し、その内容のほとんどが力自慢になる。

連載の紹介

離島医師たちのゆいまーる日記
沖縄県の離島診療所で働く、出身県も経験年数もさまざまな10人の医師が、診療だけにとどまらない日々の生活をつづります。「ゆいまーる」とは沖縄方言で相互扶助の意味。「ゆいまーるプロジェクト」は沖縄県の離島で働く医師たちが集う組織です。現在の執筆者は。「こちら
「ゆいまーる日記」が電子書籍になりました

 2009年から3年間、沖縄の離島で働く若い先生方に持ち回りで執筆していただいた「離島医師たちのゆいまーる日記」。連載のうち、選りすぐりの60本を再編集の上、電子書籍にまとめました。離島で1人で働く医師にはどのような役割が求められるのか、休みは取れるのか、家族はどうなるのか、島の人たちとの関係はどうなのか――。現場の話がぎゅっとつまった書籍となっています。

この記事を読んでいる人におすすめ