625万人の「国民生活を第一」に破壊する国家公務員給与10%カット-人間と経済つぶす悪循環 | すくらむ

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国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。


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 国家公務員の給与も、民間労働者の給与も、この10年余下がり続けているのは、先進主要国で日本だけです。その結果、日本は経済成長が止まった唯一の国となってしまいました。(※上の図表群参照)


 公務員であろうと、民間労働者であろうと、働くものの暮らしを切り縮めてしまったら経済成長はままならず、その結果、税収も縮小しさらなる財政悪化をもたらすのです。(※財政赤字の問題については後日エントリーします)


 ◆企業に眠る200兆円
  キャッシュリッチが生む悪循環


 金融投資情報の週刊紙『日経ヴェリタス』(第136号、2010年10月17日~23日、日本経済新聞社発行)は、1面トップから4面まで、4ページにわたって「企業に眠る200兆円」を特集しています。それぞれのページには、「キャッシュリッチが生む悪循環」、「設備投資・人件費の抑制→消費低迷→デフレ」、「企業の過剰貯蓄はデフレスパイラルを加速する」などの見出しを打っています。


 ◆デフレ、円高――
  「カネ持ち企業は自ら生み出した状況に苦しんでいる」


 この『日経ヴェリタス』の記事の本文では、「日銀の資金循環統計によると2009年度末、民間非金融法人(企業部門)の預貯金は203兆8,685億円とかつてない規模」、「東証1部上場企業(金融を除く1,538社)に限っても手元資金は過去最高の68兆円。インドネシアとマレーシア、フィリピンの計3カ国の株式市場をまるごと買える」と指摘しながら、「企業の懐に眠る巨額の資金。投資に回らず、雇用機会の創出にも結びつかない」として、「雇用者報酬は1990年代後半のピークから低下傾向にあり、09年度は253兆円と97年度より26兆円少ない」、「92年度に51兆円あった家計の資金余剰は昨年度11兆円に縮小。70年代に20%を超えていた家計の貯蓄率は最近は2~3%だ。金利低下も進んで、家計が預貯金から得る利子所得は住宅ローンなどの利払いを差し引くとマイナスだ」と指摘した上で、家計が落ち込み、企業に過剰貯蓄が生じることで、デフレや円高を招き、「カネ持ち企業は自ら生み出した状況に苦しんでいる」と記事を結んでいます。


 ◆国家公務員給与10%削減→625.8万人の人件費抑制→所得増えず→消費低迷→デフレ→企業業績を圧迫→将来の資本不足への不安→企業が内部留保を強化→人件費抑制…の悪循環 ★企業の過剰貯蓄がデフレスパイラルを加速する


 この『日経ヴェリタス』の記事の中で、デフレスパイラルとして、「人件費抑制→所得増えず→消費低迷→デフレ→企業業績を圧迫→将来の資本不足への不安→企業が内部留保を強化→人件費抑制…」の悪循環が指摘されています。


 この「キャッシュリッチが生む悪循環」、「企業の過剰貯蓄はデフレスパイラルを加速する」ということが、記事の結論です。この悪循環を打開するためには、労働者の賃金引き上げなどで、大企業の内部留保を社会に還流する必要があるということです。


 この『日経ヴェリタス』の指摘を借りると、いま政府が提案している国家公務員給与10%削減の構図は次のようになります。


 国家公務員給与10%削減→625.8万人の人件費抑制→所得増えず→消費低迷→デフレ→企業業績を圧迫→将来の資本不足への不安→企業が内部留保を強化→人件費抑制…の悪循環


 日本経済新聞社発行の週刊紙『日経ヴェリタス』でさえ、「人件費抑制」がデフレスパイラルの引き金であることを指摘しているのです。そして、実際に国家公務員給与を10%カットすると日本経済は以下のように大きなダメージを受けてしまいます。

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【★上表の試算の詳細→国家公務員給与10%削減でGDP3兆円減少しデフレ加速する】



 ◆公務員人件費を含む公的社会支出が高い国の方が経済は成長している


 それでも、「公務員の人件費は民間とは違う。公務員人件費は低ければ低いほど、国民の負担が少なくてすむのだ」という声が聞かれます。しかし、それは事実と違います。事実は、「公務員人件費を含む公的社会支出が低ければ低いほど、国民は貧困にあえぎながら大きな負担に苦しみ『人間がつぶされ』、経済成長もままならない」のです。


 公務・公共サービスが充実している(公務員人件費を含む公的社会支出の対GDP比率が高い)ほど、その国の経済成長率、一人当たりの所得増加率が高くなることが、アメリカとヨーロッパの比較で分かります。


 OECDの統計によると、1980年の「公務員人件費を含む公的社会支出」の対GDP比率は、アメリカの13.3%に対して、EU15カ国の平均は19.9%です(トップはスウェーデンの28.6%、2位がオランダの24.1%)。1950年から1987年の間の一人当たりの所得増加率を比較すると、アメリカ1.9%、スウェーデン2.7%、オランダ2.5%等、アメリカはヨーロッパのどの国よりも低くなっています。


 1990年から2008年の間の一人当たりの所得増加率を比較しても、アメリカ1.8%、フィンランド2.6%、ノルウェー2.5%等です。2003年の「公務員人件費を含む公的社会支出」の対GDP比率は、OECD平均20.7%、アメリカ16.2%、フィンランド22.5%、ノルウェー25.1%です。2000年から2008年の間に限って一人当たりの所得増加率を見ても、アメリカ1.8%、フィンランド2.8%、スウェーデン2.4%です。公務員人件費を含む公的社会支出が高い国の方が経済は成長しているのです。


 最後に、内橋克人さんの著作『〈新版〉悪魔のサイクル~ネオリベラリズム循環』(文春文庫)の一節を紹介しておきます。


 ◆企業はつぶれても人はつぶれないシステム

  (内橋克人著『〈新版〉悪魔のサイクル~ネオリベラリズム循環』219~221ページより)


 フィンランド、ノルウェー、スウェーデンの北欧諸国は、かつての90年代初頭に日本と同様に不良債権問題に苦しみました。これらの国々でも一時期、商業地の地価が暴騰したのですが、それは日本と同じく80年代に金融ビッグバンを求められ、金融規制緩和によって不動産バブルが起きた結果です。このバブルがはじけたこと、さらにその他にも隣国ソ連の崩壊によって、今までの貿易の仕組みが大打撃を受けたことなど、いくつかの原因が重なって経済が混乱、GDPはマイナスとなり、ことにフィンランドでは失業率も18%近くにはね上がりました。


 しかしこの三国は、その不良債権の処理を94年から96年までの、ものの2、3年で見事に簡単に片づけてしまいました。(中略)負債を抱えた法人に関しては、公的資金による金融機関の救済、会社精算を含むハードランディングによる問題企業の処分などが実施され、この間、激しい企業淘汰がおこなわれました。


 日本では不良債権を抱えた金融機関や事業会社の処置をなかなか決めることができず、結果として「失われた10年」という長い経済停滞を余儀なくされたわけです。


 一方の北欧諸国ではなぜそのようなきびしい処置が可能で、結果として不良債権処理が短期間で解決したのか。


 この問いかけは実はとても重要です。


 北欧諸国では適切な社会保障システムによって、企業を処分したとしても、そこに勤める従業員が生活に困るということがなかったのです。だからこそ、ためらいなく企業が精算できたのです。


 これが日本であれば、ひとつの企業をつぶせばその従業員は翌日から路頭に迷うことになってしまいます。まわり中が不況のわけですから、失業者の受け皿も、特に地方では全くありません。それを考えると、監督官庁も政治家も容易には企業の精算はできなかったのです。


 結論から言えば、日本は「会社をつぶせば人間もつぶれる社会」であり、北欧は「会社をつぶしても、人間はつぶれない社会」だった。それがバブルの後始末の違いに現れたと言えます。


 市場原理と経済効率を優先した、企業中心の社会であるほど、ひとたびバブル崩壊のような「市場の失敗」が現実のものとなったときの抵抗力は弱いのです。その修復には長い時間を要し、多くの悲劇が伴います。


 北欧は日本とは逆に人間中心の社会を志向し、バブルに先立つ数十年の時間をかけて、そうした社会を実現していました。


 会社がつぶれてもその従業員が生活には困らない、企業とは別に国としてしっかりした安全ネットのある社会システムをつくっていたために、後顧(こうこ)の憂(うれ)いなく問題企業の処理が進められ、結果的に不良債権処理が非常に早かったのです。


 企業ではなく社会全体が国民一人一人の生活の面倒を見るシステムがしっかりできていれば、厳密に資本主義のルールに従って問題企業を処分し、市場から退出させたとしても、深刻な社会不安には至らないのです。(以上、内橋克人著『〈新版〉悪魔のサイクル~ネオリベラリズム循環』219~221ページより)


(byノックオン。ツイッターアカウントはanti_poverty)