山田祥平のWindows 7 ユーザーズ・ワークベンチ

SP1の公開で完成度を高め、本格的普及期に入るWindows 7



 Windows 7 Service Pack 1がRTMした。この記事が掲載されるころには一般公開され、Windows Upadateやマイクロソフトのサイトからのダウンロードなどで入手可能な状態になっているはずだ。それに先駆け、2月17日には、MSDNやTechNetの会員向けにマルチランゲージ版のDVDイメージや、各エディションのwith SP1イメージが公開されている。

●SP1はWindows Updateの集大成

 RC版の導入については、以前のこの連載で紹介した。今回RTMしたものも、それと大きく異なるわけではない。累積的なアップデートやセキュリティパッチの集大成というべきもので、クライアントとしてのWindows 7に新機能を追加するものではない。強いていえば、SandyBridgeのAVX命令をサポートしたことくらいだろうか。

 DVDイメージには、アーキテクチャ別に3種類のバイナリが収録され、setup.exeを実行すると、それが実行された環境に応じて、適切なバイナリが呼び出されるようになっている。DVDは下記のような構成だ。

2010/11/23 11:49536,437,704windows6.1-KB976932-ia64.exe
2010/11/23 11:49947,070,088windows6.1-KB976932-X64.exe
2010/11/23 11:49563,934,504windows6.1-KB976932-x86.exe
2010/11/23 11:4943autorun.inf
2010/11/23 11:49102,672setup.exe
5 個のファイル2,047,545,011 バイト

 タイムスタンプを見るとわかるように、ファイルは2010年11月23日に完成しているようだ。RCが公開されたのは2010年10月26日だったので、ほぼ1カ月間でフィックスし、約2カ月で公開に至ったことになる。

 もし、RCを導入済みの場合は、いったんアンインストールしてから導入する必要がある。ちなみに、RCは、2011年8月30日から通知を開始し、11月30日にはSP1 RCの使用期限が切れる点に注意してほしい。RCも、RTMも、アンインストールするためには、Windows Updateのナビゲーションペインにあるコマンドリンク「更新履歴の表示」を開き、さらにコマンドリンクの「インストールされた更新プログラム」」を参照、「Microsoft Windows(KB976932)のService Pack」を右クリックしてアンインストールする。RC、RTMともに、このKB番号が同じである点に留意したい。

●2010年11月末時点にいったんタイムスリップ

 試しに手元のPC5台にインストールしてみた。64bit、32bit、Windows Server 2008 R2、RCを入れていたもの、いないものなど、それぞれ異なる環境だ。プロセッサの処理能力にかかわらず、おおむね30分以上はかかるようなので、時間に余裕のあるときに導入することをおすすめする。ただ、セットアップウィザードで導入を確認すれば、再起動のプロセスを含めて、特に操作を求められることはないので、場合によっては無人で導入することもできる。できることは待つだけだ。

 x64用のバイナリが1GB近くあり、サイズ的に突出している。導入した環境の1つは、システムドライブの残り容量が1GBを切っていたため、警告が出て導入を続行できず、空き領域を確保する必要があった。

 導入に成功すると、何が変わるかといっても、特に変わった点は見つからない。RCではデスクトップの右下に評価版のクレジットが表示されていたが、RTMでは当然そのようなことはない。RCの環境は3台のPCで2カ月間使い続けていたが、それと比べても何の変化もないように感じる。ただし、タイムスタンプから想像できるように、システムの状態が2カ月分さかのぼることになるため、いくつかのセキュリティ更新プログラムがSP1のインストール後に導入される。その際には、もう一度再起動が必要になるので、インストール後、すぐに手動でWindows Updateを実行して導入しておいた方がいいだろう。

コマンドプロンプトで確認すると、SP1適用後のWindowsバージョンがわかる。
コンピュータのプロパティではService Pack 1と表示されるようになった。

 いずれにしても、日常的なWindows Updateをきちんと適用していた環境なら、SP1を入れることで問題が起こることはなさそうだ。特別な理由がない限り、導入を見送る必要はなさそうだ。

●Internet Explorer 9もRCが公開

 一方、ほぼ同時期にInternet Explorer 9がアップデートされ、こちらはRCが公開されている。SP1と異なり、ベータからの上書きアップデートが可能で、さらに、RCからRTMへの移行も保証されているようだ。

 導入しても何の変化もないSP1と異なり、IE9はベータからRCで大きく変わった印象がある。処理速度も体感として速くなっているし、使い勝手も向上している。これは入れない手はない。

 例えば、ベータではアドレスバーとタブバーが一行に表示されていたが、タブの右クリックで別の行に表示することができるようになっている。たくさんのタブを開くユーザーにはうれしい改良だ。

別の行にタブを追加することもできる。たくさんのタブを開くユーザーには気の利いた機能だ

 また、アドレスバーと検索バーが統合されたのはいいものの、キーワードを入れてもうまく検索できないケースが多かったが、RCではきちんとデフォルトの検索プロバイダーに文字列が渡るようになっている。ストレスを感じることが多かった不具合だけに、これはうれしい。

アドレスバーの横幅が広がるので、今開いているURLの確認もたやすい。キーワードをたくさん指定しての検索にもうれしい。

 さらに、ページの右クリックによるショートカットメニューの中に「コピーしたテキストを使用して検索」というコマンドが追加されている。ワープロやエディタで文字列をコピーし、それを使って検索ができるわけだ。Ctrl+Shift+Lというショートカットキーも割り当てられている。アドレスバーの右クリックで貼り付けてから検索するのと、大きく手数が違うわけではないが、エンターキー1回分のストロークを省略できる。

ページの右クリックによるショートカットメニューにはコピーしたテキストを使用して検索が追加されている

●磨きがかかる完成度

 SP1の適用により、Windows 7のバージョンはMicrosoft Windows [Version 6.1.7601]となる。RTMの出荷開始から約1年ちょっとだ。もともとWindows 7は、これまでのWindowsに比べてもRTMの出来という点では極めて完成度が高かったが、それに加えてSP1が公開されたことで、その完成度に磨きがかかったといえる。

 すでにRTMは、使い始めの時点で多くのアップデートが必要で、クリーンインストールしたり、新たなプリインストールPCを購入したときには、最初に長い時間をかけてアップデートしなければならなかったが、しばらくはSP1と若干のアップデートで済むし、おそらくは各社PCの夏モデルあたりは、最初からwith SP1の状態で出荷されるようになるのだろう。

 SP1のリリースにより、これまでWindows XPを使い続けてきた企業も、そろそろ潮時だ。マシンの耐用年数も考慮しなければならない。今後のリプレースは一気にWindows 7化が進むだろう。いよいよ本格的な普及期に入ったといえる。