- 110722 「THE NANBA SHOW 相当衝撃的なスクールポップ!! Vol.3」@渋谷 duo MUSIC EXCHANGE
3回目の南波志帆主催イベント、テーマは「夏祭り」。会場に入ると、テーマに合わせて、前日スタッフと仕入れたという「日本の祭り」の音源がSEとして流されていた。その音源は、当人たちの思惑とはかなり異なっていたもののようで、夏祭りの陽気な音楽ではなく、祭りの風景を切り取った、いわばフィールドレコーディング物であった。祭囃子部分も時折あるけれども、大部分は祭りに集まった人達の会話や、その場の自然音が延々と続くというもので、それが流れる天井の高い広いフロアは、まるでDavid ToopのDJを思わせる異様にサイケでドラッギーな空間となっていた。南波志帆はMCで、「お化け屋敷みたいになっちゃいました」と笑いながら弁解した。
この奇妙なSEが流れ続ける中、いつものように「実行委員長 南波志帆」の影ナレへ。そしてそのままポニーキャニオンレーベルメイトのカコイミクと6人のバックバンドが登場。バンドはとても心地よいグルーヴを聴かせたが、ミッキーことミクさんは所謂歌い上げ系ディーヴァの人で、巧い人が犇めくこのジャンルでは声に相当な個性、アクの強さが無いと生き残れないだろうな、などと思った。
再び祭囃子の転換の後に、D.W.ニコルズ。4ピースバンドだが、ドラム&ベースのリズム隊が女性という珍しい編成で、しかもこのドラムが強烈に重いサウンドを叩き出す。あまりのかっこよさに身震いした。バンドのサウンド自体は、まさに春風が似合う超爽やかな、垢抜けない清々しさが魅力的で、野外で聴いたらとても気持ちいいだろう。観客も大いに盛り上がっていた。
20:15、「水色ジェネレーション」ジャケットの水色水玉ワンピースに、トレードマークのサイドポニーテールで南波志帆登場。ギター岩谷啓士郎、ベース須藤優、ドラムNona Reeves小松シゲル、キーボードは渡辺シュンスケに代わってオトナモード山本健太。盤石のフルセット。
しかし、南波志帆が対バンイベントに出るときの宿命か、最初からPAのバランスがおかしくてずっこける。もうこれは対バンイベントでは100%そうなのだから仕方がない。普通のヴォーカリストとは比較できない声の質感と声量の特性上、事前のリハをもってしても回避しがたいのだろう。ミキシングはMCを挟んで4曲目から持ち直し、そこからは最高の南波ショウ。
アルバムが出たばかりなので、まだ聴いていない人も多かろうという事で、新曲は一曲のみ。初めてライブで披露された「水色ジェネレーション」。サウンドそのものよりも、圧倒的な爽やかさから、ポータブル・ロック、水族館レーベル、New Musik、Tony Mansfield、そういったイメージが怒涛のように押し寄せる。何故か宮川弾が付けたという少しだけアイドルめいた振りも爽やか。
前の曲が終わると同時にハットだけが静かに走り始め、しばらくしてから流れるようにピアノが重なってゆく、ドキッとするほどクールに始まった「それでも言えない You & I」、ライブの山場を作る最高のグルーヴ、須藤優がいつも以上にスラップベースを効かせる。
そして南波志帆。全く危うげなところがない。うまく歌うだけでなく、ライブという磁場を乗りこなしていく、その成長過程を、これまでは見守るような気持ちで見ていたが、もうその必要はない。かつて「細くか弱いけれど芯のある女の子」だったその女性は、全身がばねのような強さとしなやかさを身にまとい、歌い、踊り、そしてくるくると回る。「不安定な儚さの中にある刹那的な輝き」がこれまでの南波志帆であるとすれば、彼女は今、全く違うベクトルで、彼女自身に確信を得つつあるのは確かだった。
「毎日暑いけれど、外気を冷やすことは難しいので、大好きなスイカで体内から冷やすことにしました。」、いつも通りの不思議なMCも、今日はやや作りこみ過ぎ感がある位にしっかりと組み立てられ、会場を一体にしていた。彼女が18歳を機にして急に実力と安定感を兼ね備えてしまったことに対して、ざわざわとしたものを感じている自分がいることを、離れたところから見ているもう一人の自分がいた。かつてPerfumeで味わった、間近で見ていた宝石が、手の届かない距離になっていく切なさと、これからさらに成長して、どんな素晴らしいステージを見せてくれるのかという期待の綯交ぜになった、ざわざわしたもの。楽曲の作風自体も、高校生の瑞々しさから、大人と子どもの間を揺れ動く繊細な時間を描くような、そんな方向へと変化している。多分今が、その時。今だから、見えるもの。
- シャイニングスター (カオシレーター)
- スローモーション (カオシレーター)
- 会いたい、会いたくない
- MC
- 水色ジェネレーション
- きっとすべては夜のせい
- MC
- こどなの階段
- 宇宙の中のふたりぼっち
- それでも言えない You & I (カオシレーター)
- みたことないこと
- MC
- 楽園にて
- EN
- ごめんね、私。
- サンダル (カオシレーター)