1963年に高速道路が開通して以来、高速道路標識に使われてきた「道路公団標準文字(公団ゴシック)」が引退することになったそうです。
公団ゴシックと言えば、時速100kmで走っても、100~150m手前から6秒以内で文字が認識できる。というのがセールスポイントでした。しかし、標識に使用されていない新しい文字を使う場合に1から文字を作る必要があったり、公団ゴシックの開発者が他界されていることもあって、デザインの統一性を疑問視する声もあったようです。
そういった背景もあって、高速道路標識の技術基準の見直しのタイミングで、公団ゴシックに代わるフォントとして、複数のゴシック体を比較検討したそうです。その結果、新たに和文フォントに採用されることになったのは「ヒラギノ角ゴシック体 W5」です。
このフォントが採用されたポイントは以下の通りです。
・文字の端部が強調され末広がりになったデザインで、つぶれにくく遠くからも読みやすい
・他のゴシック体と比較して一つ一つの部首が明瞭で瞬間的に認識しやすい
また、「これまで必要に応じて1字1字制作されてきた従来の書体に代わって、デジタルフォントによる精度の均一化、制作工程・管理の合理化も可能になる」というのが、デジタルフォントを採用する利点になるそうです。
「ヒラギノ角ゴシック体」と言えば、2001年にリリースされたMac OS X 10.0でOSの内蔵フォントに採用され、iPhoneやiPadなどのiOSでも使用されています。なので、Macユーザーのみならず、iOSユーザーの間でも、すっかりお馴染みですね。
ちなみに、MacOSXで採用されている「ヒラギノ角ゴシック体」は、W3、W6、W8の3種類で、iOSの方はW3、W6の2種類で、高速道路標識に採用されたW5は含まれていませんので、あしからず...
それにしても、2001年にAppleがMacOSXで採用したフォントが日本の高速道路でも使われるようになるというのは、当時は誰も想像しなかったことでしょうね...iPhoneやiPadの普及で「ヒラギノ角ゴシック体」自体の知名度が上がっていること、このフォントを使った場合に、文字の拡大縮小(ピンチイン&ピンチアウト)が視野性を下げずに快適にできることなど、そういう実績面も評価された...のでしょうかねぇ。
なお、今月開通した東九州自動車道の道路標識の和文フォントは「ヒラギノゴシックW5」で統一されているそうなので、利用する機会があれば、じっくり見てみたいですね!
高速道路の標識、「ヒラギノ」書体に iPadと同じ[朝日新聞]
ヒラギノフォント、高速道路標識の和文書体に採用 [大日本スクリーン]
(KENTA)