国内

世論調査が選挙結果と一致するのは回答者が年配だらけだから

 毎週のように新聞・テレビで大々的に報じられる「世論調査」の結果。政治家もメディアも数字を根拠に政局や政策を論じるが、果たしてその「世論」は信頼に足るものなのか。メディアの情報操作を扱った『スピンドクター』などの著作がある窪田順生氏が、内部資料と調査担当者の証言などをもとに、世論調査の裏側を明らかにする。

 * * *
 世論調査をしている現場では、調査のあり方に疑問の声は上がっていないのか。
 
「僕のノルマは12人でしたが、2人だけしか会えませんでした。2人とも40代の女性です」

 そう語るのは今年、ある新聞社の面接式世論調査に参加したアルバイト男性である。2日間にわたって、東京都のひとつの区内を、世論調査担当部門から手渡された12名の名簿をもってひとりひとり戸別訪問したが、20~30代は不在か拒否。一緒に参加した友人も口を揃える。

「28歳のサラリーマン男性宅は4回訪ねましたが、結局会えずじまい。会った7人は、40代から50代後半。男女はちょうど半分ずつです。20代、30代は会えませんでした」

 要するに、彼らが聞いた「世論」は40代以上しかないということである。

 コンピュータが無作為に選び出した固定電話にかけるRDD(ランダム・デジット・ダイヤリング)方式という最もポピュラーな電話調査も実態は同様だ。峰久和哲・朝日新聞編集委員は新聞業界誌『ジャーナリズム』のなかで、「有権者に占める20代の割合は14%ですが、RDDだと、残念ながら5%しか取れません」と明かしている。

 かなり偏った集計だが、なぜこれが「世論」といえるのか。共同通信社の世論調査を担当する世論総合研究所所長の谷口哲一郎氏は次のように説明する。

「20代については3~4倍ぐらいのウェイトをかけて数字を補正しているんです。もちろん年齢だけではなくて、地域の偏りなども補正して実態に近づけます」

 だが、このような「若者不在」こそが実態を反映しているのだとの指摘もある。前出『ジャーナリズム』誌に登場した鈴木督久・日経リサーチ取締役はこう述べている。

「若者に到達できないという意味では、世論調査と選挙の投票結果とは非常に似ているんですよ。これが世論調査による選挙結果予想が当たる秘密です」

 鈴木氏は「世論調査はそれでいいとは言えません」ともいう。だが、実情は若者不在の「世論」であることは間違いない。

※週刊ポスト2011年3月4日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

伊藤沙莉は商店街でも顔を知られた人物だったという(写真/AFP=時事)
【芸歴20年で掴んだ朝ドラ主演】伊藤沙莉、不遇のバイト時代に都内商店街で見せていた“苦悩の表情”と、そこで覚えた“大人の味”
週刊ポスト
総理といえど有力な対立候補が立てば大きく票を減らしそうな状況(時事通信フォト)
【闇パーティー疑惑に説明ゼロ】岸田文雄・首相、選挙地盤は強固でも“有力対立候補が立てば大きく票を減らしそう”な状況
週刊ポスト
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
伊藤
【『虎に翼』が好発進】伊藤沙莉“父が蒸発して一家離散”からの逆転 演技レッスン未経験での“初めての現場”で遺憾なく才能を発揮
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン