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昔懐かしいD&Dの「赤箱」が最新版になって復活!

2011年01月26日 18時00分更新

文● ゲームライター 都基路

 「ロールプレイングゲームの“赤箱”」と聞いて「うわ、懐かしい!」と思う方、ASCII.jpの読者の方の中には少なくないのではないでしょうか。

 “赤箱”とはもちろん、「ダンジョンズ&ドラゴンズ」(D&D)という、世界で最初のロールプレイングゲーム(日本で言うところのテーブルトークRPGはもちろん、パソコン、家庭用ゲーム機を含めたすべてのRPGの始祖である、紙と鉛筆&サイコロで遊ぶRPG)の、最初のボックスセットの愛称です。日本でも世界でもD&Dの象徴――いや、RPG全体の象徴とすらなってきた存在こそ、1983年に発売された、D&Dの赤い箱のボックスセットだったのです。

「ダンジョンズ&ドラゴンズ」の“赤箱”

「ダンジョンズ&ドラゴンズ」の“赤箱”が2010年12月に復活!

 この赤箱は、日本でも1980年代に大ヒットしました。当時のファミコンでのロールプレイングゲーム・ブームと相まって、一大ブームを巻き起こしたのです。「大学時代に友だちとわいわい遊んだ」などといった経験をお持ちの方も少なくないはずです。

 その最新版とも言える、『ダンジョンズ&ドラゴンズ第4版 スターター・セット』が2010年12月に、まさに赤い箱のボックスセットの形で発売されました。ラリー・エルモアの描く、“あのわくわくする、どこか懐かしいイラスト”も、そのまま掲載されています。RPG好きの方なら、部屋に飾ってながめるだけでも楽しいアイテムかもしれません。

 この最新版の赤箱は、D&D第4版の、2レベルになるまでのプレイに必要なルールブックやアイテムがこのセットだけですべてそろうという、入門者用のボックスセットになっています。D&Dの最新版であるこの「第4版」の特徴は、パーティー・プレイを引き出すルールとデータ群にあります。従来のD&Dに比べ、よりエキサイティングに、そして初心者でもより容易にプレイが可能なシンプルさを兼ね備えているのが魅力です。

“赤箱”が日本のRPGカルチャーに与えた影響は計り知れない

 さて、かつての“赤箱”の影響がどれだけ大きかったかを、ご存じない方のために、改めてご紹介してみましょう。

 世界には、あらゆるコンピュータRPGの源流とされるゲームがあります。『Wizardry - Proving Grounds of the Mad Overlord』(ウィザードリィ 狂王の試練場)と『Ultima』(ウルティマ)、そして『Rogue』 (ローグ) です。

 電子ゲームにおけるRPGジャンルの先駆けとなったこれらのゲーム……これらは実はすべて、「1人のときも、D&Dで遊びたい!」という欲求から生まれたと言われているのです。日本でもウィザードリィのために高価なApple IIを購入したクリエイターが幾人もいたのはよく知られている逸話です(ちなみに、ウルティマには前身のバージョンとして『Akalabeth』という製品があります)。

 日本でも、RPG分野では上記のパソコン用タイトルの日本語版のほか、日本製の『ドラゴンスレイヤー』(1984年)、『ハイドライド』(1984年)、『ザナドゥ』(1985年)、『イース』(1987年)、『ロードス島戦記~灰色の魔女~』(1988年)が登場し、ブームとなります。ゲームセンターでは『ドルアーガの塔』(1984年)が登場。ファミリー・コンピューターでは『ゼルダの伝説』(1986年)、そしていまや国民的RPGとも言われる『ドラゴンクエスト』(1987年)、『ファイナルファンタジー』(1987年)なども登場し、現在まで続くRPGの大河が流れ始めました。それらすべてに共通するのは、主人公が戦って経験値をためて成長し物語を進めていく、というシステム。これらはすべて、D&Dの赤箱が初めて日本にもたらしたものだ――と言えば、その影響力の大きさがおわかりいただけるでしょう。

 一方、日本ではアナログ(非電源系)の、いわゆるテーブルトークRPG(会話型RPG/TRPG)も、まさに赤箱を含む『ダンジョンズ&ドラゴンズ』日本語版(1985年)を発端にブームを巻き起こします。D&D以外にも、『トンネルズ&トロールズ ファンタジーRPGルールブック』(1987年)、『ルーンクエスト』日本語版(1987年)、『ウォーハンマー・ファンタジー・ロールプレイ』(1991年)をはじめとする翻訳タイトルのほか、国産でも『ローズ・トゥ・ロード』(1984年)、『ワースブレイド』(1988年)、『ロードス島戦記 コンパニオン』(1989年)、そして文庫版ルールブックとして日本製TRPGの代表格となる『ソード・ワールドRPG』(1989年)などが登場し、現在に至っています。それ以外にもSF、サイバーパンク、学園モノなどの、多彩なテイストのTRPG作品が数多く翻訳・製作されました。そこらから、パソコン、ファミコンへとゲーム化されていったタイトルも1つや2つではありません。

 それらと同時に、TRPGと関連した数々の文庫ファンタジー小説も多数発表されていきます。代表的タイトルである『ロードス島戦記』(1988年)、『ドラゴンランス戦記』(1987年/日本語版)、『フォーチュン・クエスト』(1989年)、『スレイヤーズ!』(1990年)といった名作を読んだ方も多いでしょう。これらのTRPGのプレイの様子を読み物とした“リプレイ”も、このTRPGブームの中から生まれた本です。

 アニメでも『ドラゴンクエスト』(1989年)、『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』(1991年)、『ロードス島戦記』(1991年)、『風の大陸』(1992年)、『スレイヤーズ』(1995年)、『ロードス島戦記-英雄騎士伝-』(1998年)と“剣と魔法”のファンタジーに絞っても名作の名前がどんどん挙がります。

 これらのすべての発端が、日本では、D&Dの“赤箱”にあるのだ、と見ることも可能なのです。いかに日本の文化にも大きな影響を与えた存在であったか、ということです。

D&D第四版の赤箱の中身とは?

“赤箱”の内容物一覧

“赤箱”の内容物一覧

 そのようなブームからだいぶ経った2011年にも、各社から何タイトルもの新作TRPGの発売が予定されています。他のエンターテインメントに比べ、TRPGは「物語に参加している」という思いをより強く抱ける遊びです。そのためプレイで感じる楽しさには、他の何物にも代え難いものがいまだにあります。

 赤箱には、新旧版ともに、同じ文句がうたわれています。箱のフタに「ロールプレイング・ゲーム――それは君の想像力が生み出す究極のゲーム/剣と魔法、怪物と財宝が君を待つ」とあります。箱の背には、「君の冒険のすべてがここから始まるのだ!」とあります。あなた自身の冒険譚を紡いでくれる赤い箱を、ぜひこの機会に、手にとってみられてはいかがでしょうか。

 念のために強調しておきますが、今回のボックスセットは、かつての赤箱――「セット1 ベーシックルールセット」――の復刻ではありません。D&Dの最新バージョン「第4版」を遊ぶためのゲームセットで、箱の中身が冊子2冊とダイス一式だけだった旧赤箱と違い、より進化したD&Dを楽める構成になっています。

「プレイヤーの書」と「ダンジョン・マスターの書」の2冊

“赤箱”に含まれる「プレイヤーの書」と「ダンジョン・マスターの書」の2冊

 赤箱といえばデッドリーな(=プレイヤーキャラが死にやすい)ソロ・シナリオで有名でしたが、新赤箱でも冊子の1冊目である「プレイヤーの書」(“この本を最初に読もう!”と書いてある)がまるまる2部構成のソロ・アドベンチャーシナリオになっています。一人でゲームブック形式で本を読み進めながらキャラを作っていき、冒険を始めることができるのですが、物語を進めていく中で、やはりキャラクターが死んでしまうこともあるようです。

 なお、箱の中に同梱されているもう一冊「ダンジョン・マスターの書」には、実際に仲間で集まって遊ぶためのセッションのルールと、シナリオが収録されています(そのほかにシナリオの作り方、マスタリングのコツ、モンスターカタログなども「ダンジョン・マスターの書」に掲載されています)。

 箱の中には、それらに加えて、カラーマップ、厚紙トークンも入っており、ルールに合わせた魔法や技をプレイしやすくする“パワー・カード”も入っています。キャラクター・シートやダイス一式と合わせて、箱を開けたときのワクワク感は、昔に比べても倍増したと言えます。

書籍以外の付属品一覧

書籍以外の付属品一覧

 RPGは、ご存じのように、キャラクター・レベルを上げて強くなり、仲間を増やし、装備を整え、ストーリーの結末までいくのが主な遊び方になっています。

 ですが、個人的には、旧赤箱では3レベルまでしか上がらないのにも関わらず、シナリオを自作したりして、赤箱だけで延々と遊んでいた思い出があります。おかげで今でも手元にある旧赤箱は、箱、冊子ともボロボロなのに、続く青箱(エキスパート・ルール・セット)、縁箱(コンパニオン・ルール・セット)、黒箱(マスター・ルール・セット)の順に痛みが少ない状態になっています。ちなみに、現行のD&Dの出版社であるホビージャパンの「HJゲームブログ」では、これらの写真が見られます。

 TRPG、RPGともに、SF、ホラー、ロボット、学園、サイバーパンク、スチームパンク、吸血鬼ものと様々なジャンルがあります。その中でも「剣と魔法」を自らの力として冒険を進め、モンスターと戦いを繰り広げるファンタジー分野は、プレイヤーがそれを能動的に準体験するロールプレイング・ゲームの王道ものとして、今でも輝きを失いません。ぜひ一度、数人の友だちで集まって、新赤箱でわいわい遊んでみてはいかがでしょう。

 なお今回の赤箱は、ホビージャパンが発売していることもあり、アナログ・ゲームショップ以外でも、広くオンライン・ショップを含む書店で購入ができます。

『ダンジョンズ&ドラゴンズ第4版 スターター・セット』

価格:
5040円(本体 4800円+税)
発売日:
好評発売中(2010年12月)
発売元:
ホビージャパン
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