シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

とりひきだ。とりひきをしよう。

とりひきだ。とりひきをしよう。あくまがいいました。


いやだ。ぜったいいやだ。めのおおきいひとがいいました。
いいよ。とりひきしよう。くちのおおきなひとがいいました。


くちのおおきなひとのにわは、みるみるきれいなはなぞのになりました。
めのおおきなひとは、まずしくてまずしくておなかがすいてしかたありません。


くちのおおきなひとは、まいにちたのしくてしかたありません。
はなぞのにみのったくだもので、おなかがいっぱい。
だからくちのおおきなひとは、きづきませんでした。


はなぞのがみるみるかれていることを。
きがついたときには、もうおそかったのです。
にどとはなのさくことのないおにわで、くちのおおきなひとは、おおきなくちをあけておいおいとなきながらつぶやきました。


あくまととりひきなんかしなければよかった。


ヤコブ・ファロベック「めのおおきなひと くちのおおきなひと」より抜粋  浦沢直樹「MONSTER」14巻(小学館


福島には原発が必要だった
http://d.hatena.ne.jp/ayua/20110411/1302526954


自分にはこの話は酷く堪えた。
自分の住む場所は浜岡原子力発電所から30km圏内に入る地域だ。なにかあれば、影響はあるだろうし、事によっては避難を余儀なくされる。どこに逃げたらいいのかさっぱり判らないが。


以前、浜岡の事情について書いた。


「格差」の原子力 1
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20070808/1186562992


浜岡も国や電力会社から注ぎ込まれるカネによって「シャブ漬け」にされた土地だ。この地域でも、旧浜岡町(現御前崎市)とその周辺の市町村の温度差は激しい。それはそうだ。事故の被害は市町村境界で収まるわけでは無いのだから。県は形式的答弁を繰り返すだけだったし、保守的な静岡において反対運動はまったく力を持ち得なかった。


今回の事故後でさえも、地震の巣にあるはずの原発に対して無関心状態。なにせ、御前崎市選出の県会議員は無投票当選だったのだから。さらに、原発問題を取り上げようと云う動きは統一地方選でもまったくなかった。
つまり、震災前の福島と同じ、ということだ。


旧浜岡の中でも実は温度差があって、発電所のある佐倉地区では原発の増設計画のたびに不安視する声があったが、地域の声は浜岡町全体では押しつぶされた。


参考:浜岡原発1号炉・2号炉を廃炉
http://www.jrcl.net/frame0304d.html


原子力発電所は、そうした金と権力の使い方を充分に心得た連中が進めるシステムなのだ。抵抗などほとんど無意味だ。くだんのエントリーのコメント欄では、なぜ原発を受け入れたのか、と責任を問う意見があるが、それは原発推進側のえげつない手口を知らないからだ。


原発の立地(「事故が おきたら賠償が たいへんだから」)。
http://d.hatena.ne.jp/hituzinosanpo/20110412/1302598917


こちらで述べられているように、地方に押しつけるために使われる手口はハンパ無い。
まぁ、原子力だけでは無いが。
ルポライター鎌田慧さんが「六ケ所村の記録―核燃料サイクル基地の素顔」(講談社文庫)で描いているが、六ヶ所村の再処理工場も同じだ。あらゆる形で、地域振興の手口をちらつかされ、その失敗のあげくに突き出されたのが「高レベル放射性廃棄物再処理工場」だった。貧しい地域に、雇用をもたらす、交付金も出る、産業も呼べる、絶対安全、etc。これらの言葉に −薄々欺瞞を嗅ぎ取ろうとも− 騙されたとして、誰が責められようか。


でも、もう原発はいらない、というなら、それでも原発を拒否した地域に学ぶべきかもしれない。
先だって取り上げた三重県芦浜(紀勢町)もそう。そして、石川県の珠洲(ここは森喜朗がらみで原発が進められた)。山口県祝島(ここは安倍晋三がらみで原発建設が進められている)。

めのおおきなひとは、おなかがすいてすいてしにそうです。
おおきなめからぽろぽろなみだをこぼしながらつぶやきました。


あくまととりひきすればよかった。


とりひきだ、とりひきしよう。
あくまがいいました。

原発列島を行く (集英社新書)

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日本の原発危険地帯

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六ケ所村の記録―核燃料サイクル基地の素顔 (講談社文庫)

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中電さん、さようなら―山口県祝島 原発とたたかう島人の記録

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珠洲原発阻止へのあゆみ―選挙を闘いぬいて (脱原発シリーズ)

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原発を止めた町―三重・芦浜原発三十七年の闘い

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Monster (14) (ビッグコミックス)

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