写真●ITジャーナリストの佐々木俊尚氏
写真●ITジャーナリストの佐々木俊尚氏
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 「TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアを、テレビや新聞に取って代わるチャネルと考えるのは間違いだ。ソーシャルメディアは、マスメディアやインターネットに蓄積される情報のフィルターとして機能する」。2011年7月20日、ガートナー ジャパンが主催する「ガートナー ビジネス・インテリジェンス&情報活用 サミット 2011」のゲスト基調講演に、ITジャーナリストの佐々木俊尚氏(写真)が登壇。ソーシャルメディアを活用したマーケティングの在り方と、情報爆発時代におけるソーシャルメディアの役割について講演した。

 佐々木氏は、ブログやソーシャルメディアが台頭する以前の情報の流れを「大河」に例える。「マスメディア時代のマーケティングでは、スポンサー企業が大河の上流から流した情報を、消費者は“しじみ”のように河口で受け取っていた」。一方、ソーシャルメディアが普及した現在は、「細い水流が縦横無尽に走り、水たまりが点在している。消費者は、“蛙”や“蟹”のようにそれぞれの水たまりに生息している状況」だという。

 「企業がアプローチしたい人達、すなわちリテラシーが高く購買意欲が旺盛な消費者の多くは、大河の河口ではなく、ソーシャルメディアの水たまりに生息している。そのため、従来のように上流から情報を流しても、水たまりに情報を注ぎ込むことはできない」と佐々木氏は説明。企業がソーシャルメディア上の消費者に効果的にアプローチするには、「企業の中の個人がソーシャルメディアに参加し、消費者と個人対個人の関係を築くことだ」とし、ソーシャルメディア上の“個人と個人のつながり”が情報の流れを作る時代になると指摘した。

 さらに、こうした“個人と個人のつながり”は、情報爆発の解決策にもなるという。インターネット上に膨大な情報が日々蓄積されていく情報爆発の時代には、どのようにして数ある情報の中から自分に有用な情報を抽出するかが課題となる。佐々木氏は、「情報を取捨選択する力がある“目利き”の人物(キュレーター)と、ソーシャルネットワークを通じて個人的につながることで、膨大な情報をフィルタリングすることができる」と述べた。

 例えば、キュレーターとつながることで、消費者はインターネット上の情報だけでなく、既存のマスメディアからも効率よく情報を収集できるようになると説明。情報収集のために雑誌を定期購読していなくても、キュレーターの「この雑誌の今月号で~を特集していた」といったツイートなどを参考にして、「雑誌をスポット購入すればよい」といった例を挙げた。