日本人はアジア代表として世界で活躍しよう

@jmizuno くんからお誘いをいただき、京大情報学同窓会超交流セッション2010Sep, みんなの未踏プロジェクト!というのに行ってきた。

なんかのっけからハイテンションすぎてほとんどついていけなかったのだが、パネルディスカッションは興味深かった。@jkondoさんと@ttakasukaさんの掛け合いがおもしろい。日本の国策としてソフトウェア産業をどうすべきか、という話に関する持論のぶつかりあい。基本的にはこれからの時代は個人で戦える時代じゃない、というのが @jkondo さんのスタンス。それに対して数だけ増やせばいいと見える未踏は時代錯誤ではないの、という話。

@jkondo さんは、これからは個人の時代ではなく組織の時代だという話にそこからつなげていたが、自分が思うのは、確かに数が増えればいいというわけではないが、世界に切り込んで行ける少数の精鋭がいま日本に求められているのではないかなと。そのうち世界中のソフトウェア産業で「アジア圏、特に日本語と中国語を対象にしたソフトを作りたい」となったとき、そこに入れるのが日本人である、というのはたぶん今だけだと思う。今後数年から10数年のうちに、そこに入れるのは日本語を勉強した中国人に取って代わられる。

中国と日本の文化(言語)の違いなんて、欧米とアジアの文化(言語)の違いからすると無視できるものと思われるだろうし、日本語は中国語の方言の一つくらいにしか世界的には思われていないだろう(大きな目で見るとあながち間違っていないとは思うが)し、中国人のできる人は日本人よりは英語できるので、そういう人に日本語を学ばせたほうが効率がよい、ということになるだろう。

そうはいっても、日本語(文化)と中国語(文化)は相当違うので、もし1つしかないポジションに日本人が坐るか中国人が坐るかは、日本人に取っては大きな問題なのだが、日本人は奥ゆかしすぎてそこに先に坐ろうとしないので、たぶん中国人が作った(日本に対する無理解の詰まった)ソフトを嫌々ながら文句を言いつつ使う時代が来るのだろうな、と思っている。

MS-IME は中国人が作っているから日本語がダメダメなんだ」と言われたときは「いや、それは違う。日本人も作っている」と反論した(日本側にも開発者がたくさんいるのは事実)が、世界的に MS ほど日本人をこういう仕事に張り付けておける企業はそう多くないであろう(たぶん MS 以外には Google くらいか)。

いまでもたとえばマニュアルなんて大企業では日本人が書いていなくて中国人に(ソフトを渡して)日本語を書かせたりしているし、翻訳の世界でも日本語を学んだ中国人が英語から日本語に翻訳したりするサービスが着々と増えつつある。そんな馬鹿な、中国人が訳したものは日本語としてまともじゃないだろうし、と思うのは分かる。それでも使われているし、どんどん日本人の翻訳者/作業者を駆逐しつつあるのである。(機械翻訳が翻訳者を駆逐するのとどちらがいいのか、日本人はよく考えたほうがいいと思うが)

@jkondo さんもパネルで言っていたし、自分もその後のショートトークで発言したのだが、日本の情報系のレベルは世界的に見てそんなに悪くない。Microsoft Research に行っても Apple に行っても思ったが、Stanford の学生と東大・京大生を比べても、ほとんど違いはない(少なくとも東大の上位10%は Stanford の平均と同じかそれ以上だろう)。英語が多少できないくらいで、プログラミングは相当できるし、数学的知識など、かなり日本人は優秀なのである。変に「アメリカすごい」と思うのは止めたほうがいい。日本人は自分たちを卑下しすぎだと感じることがある。

ただ、それでも日本人が伸び悩むのは、日本人であること、日本語を喋るアジアの一員であることを誇りにしないからかなぁ、と思うのである。日本に産まれて日本で育ったらそれを売りにしたほうがいいのに、下手に「グローバルスタンダード」とやらに合わせようと根無し草になったり、仕事をこなす実力をつけるのより英語のほうに熱を入れたり、明後日の方向に努力している人が多い印象である。

考えてみれば、アメリカ(ヨーロッパ)発のソフトなりブランドなりでも、日本に進出するときは(日本の文化は特殊なので)日本に合わせてたくさんリサーチして作り直すわけだし、日本から出て行きたいなら相手に合わせて作り替えるべきだし、なんかそういう努力をしないで「日本で作ったものを世界で売ろう」とするのは違うんじゃないかと思う。そういう努力なしに売れる可能性があるのは、日本で流行っているものを使うことに価値がある(と思う人たちがいる)アジア諸国、もしくはアニメやマンガ経由で影響力のあるフランスなど一部の地域(分野)だけであって、そういうニッチで活躍する戦略でなければ、相手の文化に合わせて作るべきだと思う。自分の文化を尊重してもらいたかったら(どんな)相手の文化も尊重すべきであり、それは自分の文化を相手に押し付けることではないのだ。

やたら内輪受けっぽく盛り上がる会ではあったが(京大の情報学の同窓会なんだから仕方ないかもしれないが)、非常に参考になった。やっぱり日本で日本発の情報系の産業を根付かせようと思ったら京都を中心とした近畿エリアかなぁという思いを強くした。NAISTと京都の接続がもう少し便利になればこの流れに NAIST も入れると思うのだが、現状ちょっと遠いのがなんとも言えない。NAIST も毎年コンスタントに未踏に1人、未踏ユースに1人くらい採択されるのは、1学年150人程度であることを考えると驚異的な率だと思うのだが……