「道後温泉は無事です」 愛媛の観光地、風評被害に懸念

    影響のない観光地を訪れて地域経済に貢献することも、支援の一つ。

    川の氾濫や地滑りなどにより各地で大きな被害が出た西日本の豪雨。愛媛県でも南部3市を中心に20人を超える死者が出た。

    報道からは、県全体が混乱に陥っているという印象を受けがちだが、影響を受けた地域以外では通常の社会生活が続いている。地域経済の活性化は、これからの復興に向けても重要だが、道後温泉などの観光地では、風評被害などを受けて影響が長期化することへの懸念が広がる。

    通常営業中の道後温泉本館

    愛媛県の場合、県庁のある松山市の市街地は豪雨の影響をほとんど受けておらず、市内の観光名所、道後温泉も通常通りに営業中だ。四国地方は10日に梅雨明けが宣言され、その後は晴天が続いている。

    だが、約40軒の旅館やホテルがある道後温泉旅館協同組合によると、7月6日に雨が激しくなって以降、宿泊のキャンセルが相次いでいるという。

    組合の越智英幸事務局長は「電話でお問い合わせを頂いた場合、『影響はなく、通常通りに営業しています』と説明すれば、予定通りお来しいただけることもある。だが、ネット予約などの場合はそのままキャンセルになることが多い」という。

    7月14日からはかき入れ時の三連休だが、宿泊客の動向がどうなるか、事務局長は気を揉んでいる。

    「風評被害を防ぎたい。テレビなどで被災地の惨状が報じられ、県内全域が大きく被害を受けたのではという印象を受ける方も多いと思うが、そうではない。被災した中四国地方のお客さんがいらっしゃるのは難しいかもしれないが、関東や関西などからお越しいただければ」

    松山空港は11日現在、運航状況は正常だ。愛媛県内の高速道路も同日現在、通行止めはない。

    道後温泉は2001年3月の芸予地震で、宿泊者数が落ち込んだ。瀬戸内の島を結んで広島と愛媛をつなぐ高速道路「しまなみ海道」の開通(1999年)で伸びた客足は10万人単位で減った。しかし近年は回復し、2016年は、2001年以降で最高の96万人を記録していた。

    今回の水害では、仮設の入浴場が設けられた大洲市などに向け、道後から3000枚以上のタオルを送るなど、被災地支援を続けている。

    道後のシンボルの公共浴場、道後温泉本館前で人力車の客を集めていた山本裕太郎さん(32)は「そろそろ夏のシーズンに向けてお客さんが増えないといけないのに、このところ観光バスで降りてくる団体客の姿が減っている。もうちょっとお客さんがいてもいいはず」と語る。

    今回の水害では、同じ自治体でも河川の氾濫や土砂崩れで被害を受けた地域と、そうでない地域の差が大きい。

    宇和島市では吉田町地区での地滑りなどにより11人の死者が出たが、市中心部では影響が少なく、商店などは営業している。中心部にある道の駅「きさいや市場」では、新鮮な宇和海の海産物が並んでいた。

    道後の活性化に向けた大学での研究の一環として、温泉街で観光客らへのアンケート調査を行っていた愛媛大学社会共創学部2回生の野田昌寛さん(20)は「地域を盛り上げたい。過剰に自粛が広がるのは、復興のためにも良い影響を与えない」と話した。