2013年、J1の戦術トレンドのお話
皆様、こんにちは。本日は、2013年のJ1のトレンドについて、まとめておきたいと思います。
これについては、以前もちょいと触れたんですけど、今日は、詳しくやります。内容的には4231から3421に変形するフォメを使うチームが増えたって話と、最初から3421でやってるチームのお話です。
今シーズン、4231、もしくは442をベースにして、攻撃時に3421に変形する形を採用していたチームとしては、横浜FM、C大阪、川崎、FC東京の4チームが上げられます。
一方で、3421を採用していたチームとしては、浦和、広島、柏(途中から)、湘南の4チームが上げられます。
J1では、3421フォメで攻撃を行うってのが、2013年は戦術面でのトレンドになってまして、守備時には4バックで守るか、5バックで守るかで、それぞれのチームが試行錯誤していました。
2013年のJ1で、何で3421が採用されるようになったのか?というお話
まず、戦術トレンドの話の前に、守備ブロックの崩し方の話になるんですけど、こいつは、
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この本の中にガンバ大阪の遠藤のインタが載っていて、それがわかりやすいので、そっちを紹介しておきます。軽く引用しますが、
(インタビュアー)カウンターのときは使えるスペースも多いし、狙いどころもたくさんあると思いますけど、パスを5本、6本とつなぎながら前に運んでいく遅攻のときは、相手守備ブロックが既にできあがっていてスペースが少ないことが多いですよね。そこでボールを回しているとき、遠藤さんは相手ブロックのどこがどうなっていくのを見てるんですか。
(遠藤)まず基本的に間でもらうってことですよ。そこで一回起点を作ることによって、必ず相手の守備陣はズレなきゃいけなくなるし、それを繰り返すことによってスペースができてくる。あまりそこ(間)のスペースを使わないチームもありますけど、うちは使うので。見てる人には難しいとは思いますけど、基本的には相手が守りやすい攻めをしない。そういう発想から来てるんだとおもいます。
ってものです。ここでの「間」ってのは守備ブロックのギャップのことなんですけど、442で守備をやるチームの場合、どこにギャップが生まれやすいかっていうと、
この白い円で囲った場所になります。SBとCBの間、ボランチとSHの間です。ここは442で守備をやる場合、特にギャップが生まれやすいポイントでして、ガンバってチームは、左右にボールを動かしながら、ココにギャップを作ろうとしてきます。
現在、442守備をやる場合に特に問題になるのがSHとボランチの間のギャップで、SHに攻撃に特徴のある選手(主にWGタイプ)を入れてしまうと、ボランチやSBとの連携が上手くいかず、SHとボランチの間にギャップを作ってしまうって問題を抱える事が多い訳です。
でもって、ここで3421が、何で442相手に採用されるかって話になるんですけど、図でやると、流れとしては、
こういった形にもっていきやすいんです。
これが442の守備に対して3421を使うメリットでして、442に対して、3421は守備をずらしてギャップを使いやすいフォメなんです。
3421を使う時のポイントとしては、3バックから1度、サイドにはたいて、相手の守備ブロックを横に広げ、そこからSHとボランチの間のシャドーに1度ボールを当ててボランチに落とすか、そのままシャドーが前を向くって形で高い位置に起点を作ってから崩しに入ります。
最初から3421でやるチームは別として、442もしくは4231から3421に変形するチームの場合、
攻撃時に、こんな感じでポジションチェンジを行ってきます。狙いとしては、
ここの赤で囲ったエリアにスペースを作る事です。相手のDFをシャドーやSBで引っ張る事により、赤いエリアにスペースを作る、又はボランチがフリーになりやすい状況を作るってのが狙いになります。
2013年J1のメタゲームのお話
さて、こういったフォメを使うチームが増え、一回サイドにはたいた後に、中のギャップを使おうとするチームが増えてるのが最近のJ1の特徴になります。サイドからドリブルしてクロス上げまくるってチームは、全体として見ると以前より減ってます。
一方で、こういったチームが増えた事から、それに対するメタゲームが進行しました。特に守備面で。わかりやすいのが、セレッソ大阪、横浜Fマリノス、J2でしたけどガンバ大阪で、トップ下にバランサータイプの選手をいれるようになってます。セレッソはシンプリシオ、マリノスは俊輔、ガンバの場合は遠藤です。図でやると、
こんな感じでトップ下の選手が、守備のバランスを取ります。相手チームの降りてくるトップ下にはチェックに出て、ボランチが前に釣り出されすぎないようにする、ボランチがサイドに釣り出されたらバイタルのカバーに入ってバランスを取る訳です。
3421で攻撃してくるチームが増えてる現状、442で前に二人残して、4-4の8枚でブロックを固めるチームは減ってます。多くのチームが、守備時にトップ下を一枚下がらせて守備のバランスを取らせてます。4-4-1がJ1では基本になってます。8枚ブロックだと、サイドにはたいてから中のギャップに当ててくるチームに対して、守るきるのが非常に難しいんです。
また、バランサーの仕事として、下がってボールを受けて捌くってのも重要でして、トップ下が下がる事で、中に入ってくるWGのスペースを作り、中に入ってくるWGによって相手SBを中に絞らせて、SBが上がるスペースを作ります。トップ下がバランサーを兼ねているので、セレッソやマリノス、ガンバのCFはフィニッシュに専念できるようになります。宇佐美が「ヤットさんがトップ下になってから、さらに居心地がよくなった」って話をしてましたが、あれ、どういう事かというと、ちと、フットボールラボから画像拝借しますが、
長崎戦
京都戦
これ、ロチャと宇佐美で2トップ組む場合と、宇佐美と遠藤で2トップ組む場合のフォメです。これね、長谷川監督の苦労の後がみえるフォメなんですよ。
つまり、ロチャと宇佐美で2トップ組ませると、前に二人残して基本的に8枚でブロック組むことになるので、SHに守備力ある奴を使わないといけない。一方で、遠藤と宇佐美なら、遠藤は下がってきて守備してくれるから9枚で守れるので、サイドに倉田とか二川さんみたいな攻撃力の高い選手を入れられるんです。
また、ビルドアップでも違いがあって、遠藤がトップ下の場合、宇佐美はビルドアップの時、下がってボール回しに参加する必要性が無いんです。遠藤が全部やってくれるし、守備でも下がる必要がない。だからフィニッシュに専念できる。一方で、ロチャと組む場合、宇佐美はボール回しで詰まったら下がってボール回しに参加しないといけないし、場合によっては下がって守備することもしないといけない。だから、どうしてもゴール前にいる時間が減ってしまうんです。まあ、どっちにしても宇佐美は点取ってましたけどね。ただ、居心地がいいのは遠藤のトップ下の方だったと思います。宇佐美はゴールに専念できますから。
この辺りは、セレッソのシンプリシオと柿谷、マリノスの俊輔とマルキも一緒で、トップ下が攻守でバランス取ってくれるので、CFはフィニッシュに専念できてました。こういったバランサーは、前の枚数が足りないならCFのサポートに入るし、後ろの枚数が足りず、ボール回しが上手くいかないなら、最終ラインまで降りてきます。守備の局面でも、バイタルのカバーやボランチのケア、下がってくるトップ下のチェックを怠りません。
トップ下にこういったバランサーを配置するってのは昨今のJ1での、ある種のトレンドになってまして、「サイドに一回はたいた後に中のギャップに当ててくるチーム」に対しては有効な手になってます。
ちなみに、スペイン代表の場合は、シャビをトップ下にしてバランス取らせてます。あれがトレンドの発端になったのかもしれませんね。
最後に今年のJ1でバランス取りに失敗してたチームの例として
最後になりますが、今年のJ1で攻守のバランス取りに失敗してたチームとして、鹿島と川崎の話をしときます。これ、図でやりますけど、この2チームは守備で問題を抱えており、
こんな感じでした。川崎にしろ鹿島にしろ、後半戦あたりで大分マシになりましたけどもね。前半はホントに酷かった。
これらの2チームは、CFとトップ下が前に残り気味で、後ろ8枚でブロック組む事が多いんですけど、その時、両SHが川崎の場合、小林とレナト、鹿島の場合、ジュニーニョと遠藤康って感じなんですが、どっちも攻撃に特徴がある選手で、守備はアレな選手なんです。対面の相手を見るくらいしか出来ず、SBやボランチと連携しながらバランス見て守るのは不得意な選手です。
なんで、これら2チームは、簡単にSHとボランチの間にギャップが出来てしまい、そこを使われてしまうチームでした。湘南とやった時、ベルマーレは別にポゼッションが上手いチームじゃないんですけど、えらい簡単にSHとボランチの間のギャップにパスが通せていて、「ベルマーレにこんな簡単にパス通されてたら、守備崩壊するだろ・・・」と思ったチームでもあります。両チームとも、降格した磐田とそう変わらない失点数ですけど、こーいう守備やってたら、失点多くなるのは当然です。(川崎の話なんですが、何でケンゴがバイタルのケアを必死にやらないのか不思議でした。大迫が前に残り気味なのはしょうがないとしても、ケンゴは戻ったほうがいい。)
今回の記事では浦和とか広島、湘南タイプの奴の話は扱いませんでしたが、眠くなってきたので、こっちは、又今度やります。
本日はこのあたりで。
ではでは。