VoLTEとPHSはどっちが音質が良いのか?というご質問をいただきました。ので、ちょっと考察してみたいと思います。先に言っておくと、ここに書いたデータは私がいろんなサイトや論文(?)から拾ったデータを勝手に正規化して並べたものなので、公正であるかどうかには全く頓着していません。そもそもそのデータの出元が信頼できるかどうかさえ検証していません。と言うことをお断りしておきます。
ということで、PHSとVoLTEの音質はどっちがいいのか、と言われても、正直、まだVoLTEを使っているところがないので、聞いてみるまでは何とも言えない、と言うのが最も正確なお答えになります。が、あえてむりくりに議論を進めてみます。
VoLTEに使われるコーデックは、AMRかAMRの拡張であるAMR-WBになります。ということは、それらの音質がどんなもんか、と言うことがわかれば、おおざっぱにあたりをつけることくらいはできるようになります。
で、音質の評価というのは基本的には個人的なものなので絶対評価をするのが難しいのですが、難しいなりにもできるだけ公平に評価できる指標がないものか、と言うことで考案された評価方法にMOSというのがあります。MOSにもいろんなやり方があるのですが、その中でも特にITUのなんちゃらで規定されているPESQ評価値というのを、いろんなところから拾ってきてみます。
しかしこれにもちょっと問題があって、結局、その評価値って、評価環境や集めた人の母集団の偏りでころころ変わるんですね。ってことで、比較的音質が良く安定している64kbps-PCM(相当)の評価をもとに正規化したものをここで紹介します。元データはぐちゃぐちゃで見るに堪えないので省略させてください。
方式 | 相対評点 | メモ |
64kPCM(基準) | 1.00 | G.711、データによってはG.722で代替 |
PHS(32kADPCM) | 0.95 | G.726 32kbps |
VoLTE(仕様上最高) | 0.98 | G.722.2 23.85kbps |
VoLTE(必須実装最高) | 0.96 | G.722.2 12.65kbps |
VoLTE(混雑時) | 0.77 | G.722.2 8.85kbps |
WCDMA(GSM-EFR)(参考) | 0.92 | AMR |
GSM(参考) | 0.79 | not AMR |
こんな感じ。あ、一応、言語別評価とかがあるものについては、いくつかの言語での評価結果があれば可能な限り日本語での評価を採用していますので、他の言語を採用しているスコアとのブレは多少はあります。ご注意。
PHSの音質は、相対評価で0.95とかなり高いスコアを出しています。一応の同世代のGSMが0.79ですから、この世代としては確かにとびぬけた音質スコアを持っていたと言えます。
次にWCDMA世代に入ると、一気に0.92という良スコアをだし、PHSの音質にかなり近いレベルに。3G世代ではこのスコアが一応最高スコア(のはず)です。
で、VoLTEですが、VoLTEが採用しているAMR-WBは、ビットレートを上げているだけでなく、サンプリング帯域幅も向上しているため、単純な比較はできない(やっちゃダメ)っぽいです。が、そこで無理を通してみると、VoLTEの最高音質は、なんと0.98という、電話としては最高ランクに近い評価を出しているようです。
ただし、VoLTEの最高音質(レート)は、端末への実装が必須ではありません。サボってもいいことになっています。実装が必須になっている音質(レート)が別にあって、これの評価値が、0.96。多少落ちるとはいえ、PHSの音質と同等以上となっています。
ちなみに、VoLTEも混雑すればレートをどんどん下げることができ、最悪の場合の音質評価値は0.77となります。スマホばかりになってデータ逼迫で音声向け帯域が足りなくなってきた場合、もちろん割り当てポリシーにもよるのですが、ここまで音質を落としてしまう可能性も十分にある、と言うことになります。
ってことで結論を言いますと、VoLTEになると、評価としては少なくともPHS同等以上、固定ISDNにも匹敵する音質を実現することも可能、と言うことになります。
とはいえ、2G方式でありながら、4Gな時代になってもそれと同程度の音質を実現できるPHSの方が実はすごいっちゃぁすごいんですよね。まぁ、当初は固定ISDNの無線子機、と言うのが本来の立ち位置だった方式なので、固定ISDNの音質を損なわないレベルが求められていたわけですけど。
ってことで、VoLTEとPHSの音質について考察してみました。でわ。