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初めて「守り」に入るソフトバンク 孫社長の窮地救うウィルコム

ジャーナリスト 石川 温

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ソフトバンクモバイルが2011年冬から12年春商戦の新製品発表会を9月29日に開催した。米グーグルの基本ソフト(OS)「Android(アンドロイド)」を搭載したスマートフォン(=高機能携帯電話、スマホ)が11機種なのに対して、従来型の携帯電話は1機種にとどまるなど完全にスマホにシフト。iPhoneを国内で独占的に扱えなくなる可能性が高まるなか、大きな戦略転換の兆しを見せた発表会となった。

iPhone関連の質問には「ノーコメント」

先週、「KDDIがiPhone導入」との報道があったこともあり、ソフトバンク孫正義社長のコメントに注目が集まった今回の発表会。iPhoneにかかわる質問に孫社長は予想通り、KDDIの田中孝司社長と同じく「ノーコメント」を貫いた。

米アップルの新製品発表は現地時間で10月4日を予定しており、それまでは何も話せないのだろう。ただし、もし独占が続くのなら、孫社長は自信を持って「これからもソフトバンクはiPhoneをプッシュしていく」と宣言したはずだ。しかし今回は「iPhoneは最も優れたスマートフォンの一つ」といいつつ「アンドロイドは若い女性や日本特有の機能など、多くのユーザーのニーズを満たせるようにこなれてきた」とも言及。iPhone中心からアンドロイドも強化する路線を明確にした。孫社長のiPhoneからアンドロイドへシフトを示唆する"弱気な"発言こそが、KDDIのiPhone導入を裏付けているともとれる。

今週の発表でKDDIがソフトバンクモバイルの「ホワイトプラン」に対抗する「プランZシンプル」をぶつけてきた。このためソフトバンクとして対抗プランを投入するかを孫社長に尋ねたが、答えをはぐらかされてしまった。かつてソフトバンクは徹底的に"攻め"の姿勢を見せていたが、今回の発表会の孫社長はいつもと違いどことなく弱気な発言に終始していたように感じられた。iPhone人気に支えられているうちに、ソフトバンクはいつしか"守り"の体勢に入ってしまったのかもしれない。

中国・インドと互換性ある高速化技術を採用

今回の発表会で多くの時間が割かれたのが、高速通信対応への取り組みだ。「HSPA+」方式に対応し、仕様上は下り方向で最大毎秒21メガビットとなる「ULTRA SPEED」対応機種を4機種投入する。

 これらのスマホは「新しい周波数帯(1.5GHz)を利用しており、道路でいえば混んでいない状態。全国で広いエリアをカバーしている」と孫社長は胸を張った。NTTドコモがLTE(サービスブランドは「Xi」)を、KDDIがWiMAXを内蔵したスマホで年末商戦に乗り出すなか、ソフトバンクモバイルはHSPA+で勝負するつもりだ。ただしスマホなどを介してほかの機器をネットに接続する「テザリング」に対しては、「検討している」(孫社長)という回答にとどまった。WiMAXは通常のパケット料金に525円追加するだけでテザリングを利用できる。NTTドコモもXiでテザリングに対応しているだけに、「検討」が続くとサービス面で見劣りしそうだ。

新しい取り組みとして「SoftBank 4G」を始めることも発表した。4Gとは第4世代移動通信の略称で、昨年末「第3.5世代移動通信システム以上の技術を4Gと呼んでよい」という国際電気通信連合(ITU)の勧告により使用が認められた。このため米国では携帯電話会社各社が、HSPA+やWiMAX、LTEといった各方式を「4G」と呼ぶようになっている。米国では「言ったもの勝ち」の状態で、もはや技術的側面よりもマーケティング的な側面で使われる言葉となってしまった。ソフトバンクは日本国内で真っ先に「4G」と言い切った。

SoftBank 4Gは、ウィルコムが開発していた「XGP」と呼ぶ方式をワイヤレスシティプランニング(WCP、東京・港)という会社が継承して、新たにAdvanced XGP(AXGP)として提供する。中国やインドなどで普及が見込まれているTD-LTE方式と「100%互換」(孫社長)なのだという。

記者会見場にはウィルコムでネットワーク開発などに携わっていた技術者の姿もあった。ウィルコムの副社長を務めた近義起氏(現WCP最高技術責任者)は「AXGPとTE-LTEのチップは全く同じもの。ほかの部分もTD-LTEと同じになりつつある」という。ハードウエアでTD-LTEと同じものを導入できれば、コストを押さえてネットワークを敷設できるメリットがある。

AXGP対応のポータブルWi-Fiルーターは来年2月以降に投入する予定。AXGP内蔵スマホも「来年には続々と登場する」(孫社長)という。

アンドロイドは1.5ギガ帯、iPhoneは2ギガ帯に

他社に先んじてiPhoneを導入し、スマホがネットワークに与えるインパクトを身にしみて感じているソフトバンク。それだけにネットワークの強化は同社にとって至上命令となっている。

 アンドロイドスマホで発生するトラフィックはHSPA+を導入した1.5GHz帯に流し、メインとなる2GHz帯はiPhoneに振り向けたい狙いがある。一方、無線LAN(Wi-Fi)スポットが10万カ所を突破したと明らかにした。繁華街や地下鉄駅などでは携帯電話網ではなく、Wi-Fi経由でデータ通信をオフロード(回避)していくつもりだ。

ただWCPの近氏は「クラウドは暗闇」として、モバイルネットワークで大量のデータ通信を発生させる状況に警告を鳴らす。「いまクラウドがもてはやされているが、ネットワークの逼迫は将来、大きな問題を引き起こす。AXGPとWi-Fiスポットへのオフロードはもちろんやるが、やれることをすべて展開していかないとトラフィックの急増には対処できない」(近氏)。PHS網でデータ通信に料金定額制をいち早く導入し、ネットワークのトラフィック事情に詳しい近氏だけに重みがある。

「モバイルインターネット」を早くから標榜してきたソフトバンクは、HSPA+、AXGP、Wi-Fiなどあらゆる通信技術を投入して、増え続けるトラフィックに対処していく。その点でAXGPにつながるXGPを持っていたウィルコムを傘下に収めたのは、かなり得な買い物であったし、孫社長には先見性があったといえそうだ。

アンドロイドにシフトしたスマホ戦略

これまでの屋台骨だったiPhoneを独占的に扱えなくなりそうな状況の下で、今回ソフトバンクが発表した11モデルを見渡すと、iPhoneに代わる「ソフトバンクならではのアンドロイドスマホ」は皆無だったように思う。

シャープのハイスペック端末「AQUOS PHONE 102SH」、NECカシオモバイルコミュニケーションズの「MEDIAS CH 101N」、パナソニックモバイルコミュニケーションズの「LUMIX PHONE 101P」といった国内メーカーのモデルは、過去の例からみて、いずれNTTドコモ向けにも提供される可能性が高い。

今回のイチオシとして紹介された「AQUOS PHONE 104SH」は「アンドロイドの次期プラットフォーム」を搭載するという。次期プラットフォームとは10月11日に米国で詳細が発表される予定の「Ice Cream Sandwich(アイスクリームサンドウィッチ、コードネーム)」のこと。ただ同端末は、次期プラットフォームにいち早く対応するため、おサイフケータイワンセグなどの日本特有機能はあえて非搭載とする。グローバルメーカーに対抗するため、「最新プラットフォームを素早く載せる」ことを目的にしたスマホなのだ。

 しかしシャープ関係者は、「アイスクリームサンドウィッチの詳細はグーグルからまだ開示されていない。開示された後、すぐにソフトウエアの開発に着手する予定」という。情報が開示されてから5~6カ月で開発し、来年春の発売を目指すスケジュールだ。

11日の発表会は韓国サムスン電子とグーグルの連名となっている。これはサムスンがすぐにアイスクリームサンドウィッチを搭載したスマホを発売することを意味する。サムスンが開発した端末は、日本国内ではNTTドコモから発売される可能性が高い。シャープはすぐに発売できるサムスンから5~6カ月のハンディを背負っているのだ。

ソフトバンクにとっては、「次期プラットフォームに対応」と明言したAQUOS PHONE 104SHを"ドコモよりも先に投入できるか"が焦点になってくる。

救済したウィルコムに救われた発表会

今回のラインアップを見わたすと、「ソフトバンクにしかないスマホ」は京セラ「HONEY BEE 101K」か、中国ZTEの「STAR7 009Z」、米デルの「Streak Pro 101DL」になってくる。

HONEY BEEはウィルコムが女子中高生をターゲットにして累計200万台を売り上げたPHS端末をアンドロイドスマホに進化させたものだ。先日のウィルコムの新製品発表会にはHONEY BEEの後継機種がなく、女性向け別ブランドが登場したのは、ソフトバンクがHONEY BEEを「移籍」させたのが理由だった。

ウィルコムで女子中高生に大人気のブランドを持ってきたのは、それだけソフトバンクモバイルが女性を重視している現れだ。HONEY BEEは、メールや発話、メニューなどのボタンが盛り上がっており、かなり使いやすい印象があった。画面構成などは徹底的に若い女性をターゲットにしているが、操作面はスマホに慣れたユーザーこそが使いやすさを感じるようになっている。今回のラインアップでは、他社にないソフトバンクを代表するモデルだと思われた。

今回の発表会を振り返ると、Softbank 4G(AXGP)もHONEY BEEも、ウィルコムが培ってきた財産をソフトバンクのものに昇華させた印象が強い。昨年、ウィルコムを救済していなかったら、今回の発表会は寂しいものになっていたかもしれない。ソフトバンクは経営難に陥ったウィルコムを救済したが、発表会で明らかにされたネットワークや端末を見ると、今回ばかりはソフトバンクがウィルコムに救われた感さえある。

その一方で、これまでiPhone人気に乗って攻めの姿勢をとってきたソフトバンクにとって、"いかにアンドロイドスマホでソフトバンクらしさを出していくか"がこれからの課題のように感じられた。

石川温(いしかわ・つつむ)
 月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。近著に「グーグルvsアップル ケータイ世界大戦」(技術評論社)など。ツイッターアカウントはhttp://twitter.com/iskw226

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