Tony Atkinson: Chartbook on Economic Inequality

Tony Atkinsonは、各国の所得・資産に関する不平等に関するデータを集めて見やすい形に整理したChartbook on Economic Inequality(リンクはここ)を整備した。それぞれの国について、みやすいグラフと、グラフからどういう傾向が読み取れるかが簡潔に整理されている。主にデータのそろっている先進国しか含まれていない。日本のデータも含まれているのは国際比較を容易にするという意味で喜ばしい。

例として、アメリカと日本のグラフを見てみよう。まずはアメリカから。


  1. 労働所得のばらつきの程度はここ数十年で拡大したか? → Yes。上位10%の所得の中央値に対する比率は1950年の150%から2012年には244%まで上昇した。
  2. 所得の不平等は最近上昇したか? → Yes。所得に関するジニ係数は1980年から7パーセンテージポイント上昇した。
  3. 所得の不平等が低下した時期はあったか? → Yes。1929年から1945年。
  4. 貧困は近年拡大しているか? → No。公式の貧困度は1948年から1970年代にかけて低下した後安定的に推移している。
  5. 高所得者の所得比率のU字型パターンは存在しているか? → Yes。高所得者シェアは1928年から1970年代にかけて低下したがその後倍以上に上昇した。
  6. 資産の不平等は所得の不平等の変化のパターンと同じように動いているか? → Yes。高資産者シェアは1980年代まで低下した後緩やかな上昇傾向にある。
  7. その他の特筆すべき特徴。 → 労働所得のばらつきは1950-1970年に上昇したが総所得の不平等はその時期に増加しなかった。
次は、日本についての同じグラフと質問に対する答え。アメリカに比べるとデータが少ない。所得の不平等度が最近高まったというような論調をよく目にするけれども、それほど大きく不平等度が上昇したようには見えない。


  1. 労働所得のばらつきの程度はここ数十年で拡大したか? → No。上位10%の所得の中央値に対する比率は1960-1970年代に低下した後、特段のトレンドは見られない。
  2. 所得の不平等は最近上昇したか? → Yes。所得に関するジニ係数は1980年2000年代初頭にかけて上昇したが、その後は安定している。
  3. 所得の不平等が低下した時期はあったか? → データ不足。しかし、1938年と1945年のデータに大きな開きがあることから、第二次世界大戦は不平等の改善に寄与した推測される。
  4. 貧困は近年拡大しているか? → Yes。1980年代初頭から2000年まで上昇した。
  5. 高所得者の所得比率のU字型パターンは存在しているか? → No。第二次世界大戦後の高所得者の所得比率は第二次世界大戦前より低いものの、その後は比較的安定している。1990年代以降上昇基調にあるものの大幅な上昇ではない。
  6. 資産の不平等は所得の不平等の変化のパターンと同じように動いているか? → データ不足。
  7. その他の特筆すべき特徴。 → 第二次世界大戦前と後に大きな違い。労働所得のばらつきは比較的安定的。

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