今となってはプレゼンテーションなんてさして珍しいものでもなく、ビジネスの現場では日々、さまざまなプレゼンテーションが行われています。しかし、プレゼンテーションが珍しくなくなったとはいえ、プレゼンが相変わらず難しいものであることに変わりはありません。聞き手はプレゼンを聞くことに慣れきっているし、伝えなきゃいけないことはどんどん複雑になるし、かといってプレゼンできる時間は限られています。

プレゼンって難しい

 そこで登場するのが、よりシンプルに、よりロジカルに、という考え方です。複雑なことを、分かりやすく順序立てて説明することで、聞き手の理解を促すというものです。同時に図解やデータ、グラフを駆使すれば、より信頼性も増します。そう考えると、難しいことを分かりやすく説明する能力というのは、現代のビジネスマンにとって必須のスキルかもしれません。

 それでは分かりやすい説明さえできれば、プレゼンテーションはうまくいったと言えるのでしょうか。PowerPointやKeynoteでカッコイイ資料さえ作れば、それでプレゼンテーションは成功した、と言えるのでしょうか。

 答えはたぶんNOです。特に自社の製品やサービスを「提案」しなければならない時には、いくら複雑なことを分かりやすく説明しても、それで提案が受け入れられることはあまりないはずです。なぜならば、そんなプレゼンはハッキリ言って面白くもなんともないからです。

 ビジネスの場では、PowerPointを使って論理的に説明するプレゼンが近年のトレンドです。しかし、リーマンショック以後、景気の後退から立ち直っていない日本では、そんなプレゼンだけでは聞き手を動かすことがとても難しくなっているのが現実です。そこで、ロジックやデータだけでなく、もっと感情も前面に出し、そして相手の感情をも動かしてしまうようなプレゼンが、今のビジネスの現場で求められているのではないでしょうか。

これまでのプレゼンテーションの限界を知る

 現在のようなつまらないプレゼンが増えてしまった原因の一つはプレゼンツールにもあると言えるでしょう。確かにPowerPointやKeynoteは、今やビジネスマンにとって必携のツールであることは間違いありません。さらに日本の場合、これらのツールはプレゼンのみならず、資料やレポートの作成で使われているケースも多いのが特徴で、なんでもかんでもPowerPointでまとめるというのが今どきです。

 これらのツールが非常に優れているのは、そのまま紙に印刷することができるからです。パソコンで書いた内容が紙でも同じように表現できるという素晴らしい機能は紙文化の日本ではとても重宝されるわけです。

 そうやって日本のビジネスにおけるプレゼンでは、たいてい、提案資料を紙に印刷して配布し、同時にパソコンをプロジェクタに接続して配布資料と同じスライドをスクリーンに投影、プレゼンターはスクリーンに書いてある内容を読み、参加者は手元の配布資料を読む、というスタイルが一般的になっているのです。

 紙への印刷を前提としている以上、A4という決まった枠の中に、情報を上手に詰める必要があります。ゆえに論理的に順序立てて説明したり、図解やフレームワークを使って説明したりする技法がとても重要視されてきたのです。

 そう考えると、さまざまなテクノロジーやツールが発展し、一見世の中がどんどん便利になっているようで、実際には私たちは今も紙に縛られ、ITに振り回されているだけのような気がしてなりません。こんなのをプレゼンと呼ぶのであれば、それはつまらないと言われても仕方のないことかもしれません。