4.コクランライブラリーより災害被害者および救援者のメンタルヘルス

(京都大学教授古川壽亮作成)

早期介入
PTSDの予防、ASDの治療
Psychological debriefing for preventing post traumatic stress disorder (PTSD)
PTSDを予防するための心理学的デブリーフィング
外傷となる出来事のあと、個人を対象とした単一セッションの心理学的デブリーフィングがPTSDを予防するのに有効な治療であることを示すエビデンスはない。心的外傷被害者に画一的にデブリーフィングを行うことはやめなくてはならない。スクリーニングをしてから治療をするというアプローチの方が適切かもしれない。 [ ダウンロードPDF ]

Multiple session early psychological interventions for the prevention of post-traumatic stress disorder
PTSDを予防するための複数セッションの早期心理学的介入
外傷となる出来事のあとにルーチンに施行することが推奨される心理学的介入は存在しない。複数セッションの介入も、単一セッションの介入と同様、人によっては害作用があるかもしれない。心的外傷被害者の全員に複数セッションの介入をしないことが、現時点では、明らかに推奨される。 [ ダウンロードPDF ]

Early psychological interventions to treat acute traumatic stress symptoms
ASD(急性ストレス障害)の治療のための早期心理学的介入
外傷に焦点を当てた認知行動療法(trauma-focused cognitive-behavior therapy: TF-CBT)が、ASDの患者に対して、待機群や支持的カウンセリング群よりも有効であるというエビデンスが存在する。ただし、包含された臨床試験の質はさまざまで、かつそのサンプルサイズはしばしば小さいものであった。また、包含された試験にはかなりの臨床的異質性と統計学的異質性があった。よって、この系統的レビューの結果を解釈するのには慎重でなくてはならない。 [ ダウンロードPDF ]

 

後期介入
PTSDの治療
Pharmacotherapy for post traumatic stress disorder (PTSD)
PTSDに対する薬物療法
PTSDの治療に薬物療法は有効でありうる。それは中核症状も、随伴する抑うつや機能障害も、軽減する。このレビューの結果は、PTSDの薬物療法においてSSRIがファーストラインの薬剤であること、また長期治療においても意義があることを支持ししている。しかし、これらのエビデンスには重要なギャップがあり、PTSDの治療においてさらに有効な薬剤が必要である。 [ ダウンロードPDF ]

Psychological treatment of post-traumatic stress disorder (PTSD)
PTSDに対する心理療法
個人を対象とした外傷に焦点を当てた認知行動療法(trauma-focused cognitive-behavior therapy: TF-CBT)、EMDR、ストレスマネジメント、およびグループを対象としたTF-CBTがPTSDの治療において有効であるというエビデンスが存在する。その他の、外傷に焦点を当てていない心理学的治療は上記の治療程はPTSD症状を軽減しなかった。治療後2-5ヶ月の時点で個人を対象としたTFCBT, EMDRがストレスマネジメントよりも優れていること、TFCBT, EMDRおよびストレスマネジメントが他の治療よりも有効であることを示すエビデンスがいくらか存在した。心理学的治療が有害であり得るかどうかを確定するにはエビデンスは不十分であった。介入群では脱落が多くなる傾向があった。今回包含された比較にはかなりの異質性があり、出版バイアスの可能性を考慮すると、このレビューの結果を解釈するのに慎重さが必要であろう。 [ ダウンロードPDF ]

Combined pharmacotherapy and psychological therapies for post traumatic stress disorder (PTSD)
PTSDに対する薬物療法と精神療法の併用
PTSDの治療において、薬物療法と精神療法を併用することが、それぞれ単独よりも有効であるとするエビデンスも、有効でないとするエビデンスも、十分ではなかった。 [ ダウンロードPDF ]

その他
Psychosocial interventions for prevention of psychological disorders in law enforcement officers
法執行官における心理学的障害の予防のための心理社会的介入
小規模で質の低い臨床試験によるエビデンスしか存在しないが、それは、警察官が心理社会的介入から益を受ける可能性を示唆している。益は、身体症状、不安・抑うつ・睡眠障害・皮肉・怒り・PTSD・夫婦問題や葛藤といった精神症状に及ぶ。害作用についてのデータはなかった。包含された研究をメタアナリシスすることは出来なかった。 [ ダウンロードPDF ]


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