「K-POP」と書いて「グローバル・ポップ」と読んでみる

気づけば世の中のチャートにはK-POPが次々とランクイン。これは別に日本だけの事象ではない!? グローバル・ポップにおけるK-POPのメディア戦略に迫る。
「KPOP」と書いて「グローバル・ポップ」と読んでみる
世界中で飛ぶ鳥を落とす勢いの4人組のガールズグループ「2NE1」の最新シングル「Lonely」のプロモーションは完全にデジタルベースで行われた。PVはYouTubeで。オフショットやライヴヴァージョンはweb番組「YG ON AIR」で。ファンとの交流は「me2day」というSNSで。PVの再生回数は2週間で700万回超え。「この動画の人気が最も高い地域」は「(ほぼ)全世界」。メンバーは右上から時計回りでBom、CL、Minzy、Dara。

少女時代、東方神起、SHINeeを擁する芸能プロダクション「S.M.エンタテインメント」(以下SM)が主催するオールスターコンサート「SMタウン」の初の欧州パリ公演(6月10日@Zenith、7,000人収容)のチケットがわずか15分で完売した。追加公演を求めてデモが起こり300人が結集、急遽開催が決定した追加公演が完売するのに要した時間は10分だった。この事実を受けて、ライバル会社の「YGエンターテインメント」(以下YG)のヤン・ヒョンソク社長はメディアにこうコメントした。「この現象は、もはや『韓流』という言葉では語れない」。「この現象」とは、すなわち「K-POPのグローバル化」だ。

そのYGが、いまBIGBANGと並んで最も力を注いでいるガールズグループ「2NE1(トゥエニーワン)」の最新デジタルシングル「LONELY」は、リリースからわずか2週間でYouTubeでの再生回数が700万回を優に超えた。その統計を見てみると、ほぼ世界中でこの映像が見られていることが分かる。アクセスがまったくないのは、どうやらチャドとコンゴと北朝鮮だけだ。

YGは昨年9月からYouTubeとパートナーシップ契約を結び、アーティストのオフィシャル映像を惜しげもなく世界に開放してきた。同時にウェブサイト、アプリ、SNSを縦横に連動させながら情報を世界規模で拡散してきた(韓国版Twitterとでも言うべき「me2day」で絶大な人気を誇る2NE1のメンバーDaraは、先ごろ延世大学でソーシャルネットワークに関するレクチャーで特別講師として登壇した)。さらに今年4月から韓国の音楽サイト内で「YG ON AIR」という自社番組の放映を開始、情報発信の新たな回路も開拓。2NE1の「LONELY」についていえば、テレビでのプロモーションはいっさい行わず、代わりに曲のアレンジ違いのライヴヴァージョンをこの番組内で毎週新たに披露するという試みも行っている。

デジタルメディアを駆使して情報をグローバルに拡散させつつ、世界中のファンをウェブ上のある1点に集約する。YGとSMというK-POPの2大巨頭は、それを徹底的に推し進めることでK-POPを新たなステージへと引き上げた。新しいステージとはすなわちグローバルマーケットだ。東方神起やBIG BANGのアルバムがアメリカのiTunesストアのアルバムチャートに初登場でトップ10入りするといった驚くべき事態は、ある面で、意図された戦略の目論見どおりの結果なのだ。

日本においてもK-POPの浸透ぶりは目覚ましい。それもあくまでもこうしたグローバル戦略の一環だ。K-POPは、おばさま向けのコンテンツという考えはそろそろ改めたほうがいい。5月にBIGBANGのコンサートに行って改めて驚いたのはその客層の若さだ。デジタルメディアを通じて(チャドとコンゴ、北朝鮮以外の)世界中のファンとリアルタイムでシンクロしているのは、おそらく彼ら・彼女らのようなYouTube世代なのだ。そこでは、「洋楽/邦楽」という区分けはもとより意味をなさない。「K」とくくる必要さえない「グローバル・ポップ」としてYGやSMのアーティストが認知される日は、どうやらそんなに遠くなさそうだ。

TEXT BY KEI WAKABAYASHI