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アルマにとってのフェアリーナ様が象徴するあかりの心

Togetter - 「優れたファンタジーとして読む『ジュエルペット てぃんくる☆』の素晴らしさ」


 ↑いずれちゃんとした文章にまとめ直したいつもりな、ジュエルペット てぃんくる☆のファンタジー解釈なのですが。
 ずっとうまくイメージできていなかった「アルマにとっての母親(フェアリーナ様)が何を象徴しているのか」という疑問に、「これか!」という結論が得られたのでとりあえずメモしておきます。
 やたらと象徴、象徴と繰り返すことになりますけど、深読みやこじつけじゃなくて「ファンタジーは一人の人間の心の象徴である」という前提の話なのでそういうものだ、と思ってください。
(本当にしちゃいけないタイプのコジツケは「『指輪物語』の指輪は核兵器の象徴である」などのように、人間の心と無関係な現実と結びつけちゃうこと。)



 以下、ネタバレ内容を含みます。

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 アルマにとってのフェアリーナ様は精神的クライシスの原因。永遠に生き別れねばならない、という絶望から、魔法世界すべて(象徴的には、あかりの心の世界)を道連れに破滅しかけます。
 『ジュエルペット てぃんくる☆』という物語は、このアルマの絶望を救うことで、あかり自身も全人格的な調和を得るという物語なのだと思います。
 アルマが「ジュエルランド最強の魔法使い」と設定されていて「ジュエルランドを絶望で覆い尽くせる」のも、ひとりの人間が心に抱える「無意識」の強さ……全人格に及ぼす「影響力の強さ」を物語っているかのようです。


 しかし、その絶望の原因であるフェアリーナ様は、無事に取り戻すことのできる存在としても描かれるので、取り返しのつかない「母親の死」などを直接意味するわけでもなさそうでした。
 失うことでショックを受けるけども、取り戻すことも可能な「母親的なもの」……というのはいったい何を表しているのか? これは、イメージできそうでなかなか言葉にならない問題でした。


 そこで、アルマがあかりの無意識であることを鑑みると、現実のあかりもまた「母親の愛を受けられなくなった」という、共通した境遇が思い浮かびます。
 あかりの場合は正確に言うと「母親の愛情を信じられなくなった」という心理状態ですね。
 その反面、キャリアウーマンな母親のことをあかりは尊敬しており、嫌うこともできない。だから「かつて愛してくれた母親」と「立派だが愛してくれない母親」のふたつに母親のイメージが引き裂かれることになる。


 この「分裂した母親像」をジュエルランドに投げかければ、「情の深い母性」の象徴であるフェアリーナ様と、「厳格な母性」の象徴であるジュエリーナ様がそれぞれ相当するのではないか。
 だから、アルマにとってフェアリーナ様(=母性愛)を失う悲しみは「あかりが母親の愛を信じられなくなったこと」の鏡写しで、ジュエリーナ様への反抗心は「あかりが無意識に母親を恨んでいたこと」の鏡写しなのかもしれません。


 そして、あかり自身が30話で「再び母親の愛情を信じられるようになったこと」がジュエルランドにも奇跡を起こし、最終的にアルマもフェアリーナ様の母性愛を再び手に入れ、ジュエリーナ様への敵意も和らげることができたと。


 アルマとフェアリーナ様が「魔法の力を失うことで地球に住めるようになった」という変化も重要な気がしています。
 つまり「魔法力が強い」ということは、それだけイマジネーションの強い観念的な存在だということ。
 すると「魔法力の強いフェアリーナ様」は「娘がイメージする理想的な母性」を意味していて、魔法を失うことは「実際の母性」として受け入れなおすことに繋がるんでしょう。
 また、もちろんアルマ自身も魔法を失うことで、「無意識の暗い領域」からあかりの意識下へと移動することも可能になると。


 こんな風に、「あかりの母親に対する分裂した想い」がジュエルランド内で再現されたのが「アルマのフェアリーナ様を失う悲しみとジュエリーナ様への敵意」なのかもしれないと理解してみると。
 アルマが絶望から回復して、あかりと仲良くなるまでの流れが「心のドラマ」としてスッとイメージしやすくなりました。もちろん元々、「なんとなく」で観ていても充分に調和を感じられる物語展開だったのですが(バッデストやオババの役割にも注目したいところ)。


 言葉でうまく表現しきれませんが、これはもう一度、アルマ関連の回を通して観なおしたくなる「気付き」でしたね。