欧州中銀、期間3年の資金50兆円供給 初の入札
【ベルリン=菅野幹雄】欧州中央銀行(ECB)は21日、これまでで最長の期間3年の資金供給の入札を初めて実施した。523の金融機関が4890億ユーロ(約50兆円)の資金を要請、ECBは全額を供給する。欧州債務危機に伴う金融市場の緊張で資金繰り不安を抱える欧州の銀行などがECBの新たな流動性供給策に殺到した格好だ。
ECBは8日の定例理事会で政策金利を0.25%引き下げて年1.0%にすると決定。同時に銀行の資金繰りの困難に対処し、従来は13カ月が最長だった資金供給策の期間を3年に延長した。固定金利で無制限に資金供給する異例の策となる。
資金繰りの困難が銀行の経営危機を招いて金融システム不安が広がるのを防ぐ。金融機関が企業や家計にお金を貸さなくなって実体経済の活動が鈍る「貸し渋り」の阻止も狙った。
ECBの資金供給期間は今月22日から2015年1月29日までの1134日間。資金供給の要請額は事前の市場予想の約1.5倍にのぼった。どの金融機関が資金供給を求めたかは公表していないが、500を超す大量の金融機関が加わった。
民間銀行はECBの資金供給策を利用すると市場で自行の資金繰り不安の噂が立ちかねないと利用を控えがちだった。だが欧州の債務危機に伴う金融市場の緊張で銀行間の資金のやりとりが低迷、域内の銀行はユーロや外貨のドルなどの資金調達難に見舞われ、「中銀頼み」になっている。
ECBのドラギ総裁は19日、欧州議会の経済・通貨委員会で、12年の1~3月期に国債や金融債の大量償還が控え、金融市場の緊張が増すとの警戒感を表明した。欧州連合(EU)から来年夏までに自己資本比率の大幅引き上げを求めたことで、域内の民間銀行が資産売却や貸し渋りに走って資産価格や実体経済に負の悪影響を及ぼす展開にも懸念を表明した。
「超長期」ともいえる異例の資金供給は、市場関係者の間で要求が根強い域内国国債の買い上げ策の規模拡大でなく、銀行への流動性供給を増やして危機拡大に対処するECBの方針を鮮明にしている。ECBの資金を金融機関が国債投資に回すことで、間接的に危機国の国債の値下がり防止につながる思惑も指摘されている。