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SEO対策をミステリ本にした異色作『検索刑事』

こんばんは。夜中たわしです。

『検索刑事(デカ)』という、変わった小説を読んだのでその感想です。

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概要

本書はなかなか変わった作品です。概要をAmazonの内容紹介から引用します。

前代未聞の検索エンジンミステリー小説

IT会社社長が殺された事件を捜査中、警察に一通の脅迫文が届く。 「『羽毛布団』のキーワードで1位を取らなければ、天誅を下す」……。 新人女性刑事の京丸は、SEO業界を捜査するために、SEO会社 やページ制作会社に聞き取り捜査に向かう。しかし、そこには今まで 知らなかった検索エンジンの“裏"が浮かび上がり、ネット業界の 闇の部分が広がっていた。果たして、検索結果で上位表示される 方法は解明されるのか? そして、IT会社社長を殺した犯人を逮捕 することができるのか?

Amazon内容紹介より

SEO対策とは「Search Engine Optimization」の略で、「検索エンジン最適化」を意味しています。要は、Googleなどで検索した時に上位表示されるための対策のことです。

このような一見取っ付きにくいテーマを小説形式にしてしまったという時点で、私が購入する動機として十分でした。(私は常に変わった本を求めています)

ストーリー

主人公は女刑事。ネットの知識がほぼないにも関わらず、脅迫文に従って『羽毛布団』のキーワードで1位を取るサイトの作成を任命されます。

この刑事がサイトの作成と事件の捜査を進める中で、出会った人々からSEO関連の知識を得ていく、という流れでストーリーは展開します。

正直ストーリーはオマケ程度で、SEOの解説がメインに感じました。7割くらいはSEO関連の解説的なやりとりでした。

ですが小説形式というのは素晴らしく、内容はビジネス書なのにも関わらず本当に読みやすかったです。1時間半くらいで読めました。

主人公の協力者「瀬尾」

瀬尾という、男子高校生が登場します。この高校生、その名の通り、SEOに詳しいです。この安易さ、なかなか好み。

途中、主人公は瀬尾に羽毛布団サイトの作成を持ちかけます。

ですが羽毛布団なんていうビッグワード(競争率の高いキーワード)で1位を取るなんて並大抵のことではなく、それも期限は6ヶ月。大学受験を控えている瀬尾が片手間にできる作業ではありません。

そして受験を棒に振ってでもやってくれと押してくる主人公に対したまらず瀬尾が言ったセリフがこれ。

「何で俺が羽毛布団のサイトを作るために、浪人しなきゃいけないんだよ!」

これには笑いました。

こんな軽妙なやり取りで話は進みます。

内容はSEO初心者~中級者向け

本書はアフィリエイト用のWebサイトをこれから作ろうという人をメインターゲットとして書かれています。

主人公が最初はSEOの知識のないド素人なので、一緒に学んでいくことができます。

その代わり、ある程度知識のある人にとっては物足りない内容に思いました。ただ娯楽目的で読むなら、知識がある方が楽しめます。

私もある程度ブログを運営していてSEOについて少しはかじっているので前半部分は物足りなく感じましたが、知らない知識もいくつかありました。

たとえば『掃除機 壊れた』で検索した時にGoogleは何を表示してくるか、という話題が登場します。

直感的に考えると掃除機が壊れた人の悲壮感漂う記事がヒットしそうな気がしますが、実際に上位に表示されるのは、壊れた掃除機の修理方法に関するサイトです。

Googleはユーザーが何を求めているかまでを想定して、検索順位を決定しているのです。検索上位を狙うなら、そこまで想定する必要があるということです。

SEOって、しんどいなあ……。

おわりに

本書の終盤、犯人のセリフにこんなものがあります。

「笑っちゃうと思わないか。検索エンジンというロボットのために、ロボットみたいな文章を人間が書かされるんだぞ。これじゃあ、どっちが人間で、どっちがロボットかわかったもんじゃない」

この、SEO対策をしている人すべてが共感するであろう叫び。震えました。

SEO対策に興味を持ち始めた人、また変わった小説が読みたい人はどうぞ!

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