<高校野球西東京大会:穎明館5-4小平南>◇18日◇3回戦

 サスケ、あらわる-。西東京大会3回戦で穎明館(えいめいかん)が、延長15回サヨナラ勝ちで小平南を下した。4-4で迎えた15回裏の1死三塁で、1番下村紗介(さすけ)内野手(3年)が左中間にサヨナラ安打を放った。その直前には、スクイズのサインを見破られ、ウエストボールに飛びついてファウルにして難を逃れた。伝説の忍者「猿飛佐助」にあやかって名付けられた「サスケ」が、3時間5分の熱戦にピリオドを打ち、4年ぶりのベスト16に導いた。

 振り抜いた“刀”は切れ味十分だった。再試合寸前の延長15回1死三塁。外角の直球に、下村はバットを一閃(いっせん)した。左中間を真っ二つに切り裂くサヨナラ打。「真芯に当たりました。打球の方向を見て、勝ったなと」。7打数3安打で1打点2得点。まるで忍者のような活躍で?

 勝利をかっさらった。

 杉山精一監督(48)から、スクイズの指令を受けて迎えた打席だった。お手のものと、打席に入った。ところが、敵も上手なり。極秘のはずのサインが、見破られていた。1ボールからの2球目、大きく外角に外された。横っ跳びしながらバットを精いっぱい伸ばしてファウルにした。続く3球目も外され、再び跳んだ。バットは届かなかったが、三塁走者が走っていなくて、助かった。そんな状況でも「あと1球で決めればいいと思った」。どんでん返しの人生初のサヨナラ打を振り返った。

 名前は真田十勇士の1人とされる伝説の忍者、猿飛佐助に由来するという。「両親が猿飛佐助の『サスケ』か、霧隠才蔵の『サイゾウ』かで迷ったみたいです。理由は知らないですけど…。この名前を誇りに思っています」。飛んで、跳ねて、バットをひと振り。伝説の「サスケ」は、確かに実在した。

 穎明館はかつてはスポーツ特待生を入れ、04年には夏の西東京大会で準優勝した。だが、06年には推薦制度を廃止、進学校へとかじを切った。下村は理系クラスの学年1位で東大を狙っている。「でも、今はまだ仲間たちと1日でも長く野球がやりたい」。照れくさそうに笑うと、荷物を持って人混みにドロンと消えた。【森本隆】

 ◆穎明館(えいめいかん)1982年(昭57)に創設された、私立の共学校。87年に中等部も設立された。07年からは高校の生徒募集を行わず、完全中高一貫校になった。普通科で、高2から文系、理系コースに分かれる。都内有数の進学校で、今春は東大に5人、京大に1人の合格者を出した。野球は04年夏に西東京準優勝。堀越のグループ校としても知られる。所在地は八王子市館町。寺山政秀校長。