スウェーデンのような金融政策はやらないで、スウェーデンのような増税政策だけ抜き取ろうとする | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

スウェーデンのような金融政策はやらないで、スウェーデンのような増税政策だけ抜き取ろうとする

秘書です。

増税と成長率論争では、キーとなる成長率は名目4%です。

高橋洋一さんによると、成長率の差は、短期では財政再建に影響はでないが5年を越えると名目成長率4%を境として財政再建シナリオに影響が出ます。

だから、絶対に増税派は名目4%成長を認めません。試算をしません。最大で名目3%の試算しかしないで、「ほら、そんなに必要増税額は変らないでしょ」といいます。

一方で、成長派については「いまさら高度成長は望めない」と、あたかも成長派は7%成長とか10%成長という夢をいっているようなレッテルを張る。

4%成長は、欧米では当たり前の成長率です。反成長派は、日本は欧米に劣っているということを前提にしています。

なお、経済財政諮問会議における成長率と金利に関する論争については、高橋洋一(2006)「政府部内で高まる成長率・金利論争を斬る」『週刊東洋経済』東洋経済新報社、2006年2月25日、pp.100-102.)


一体改革案 民主党の反発強く、決定先送り
< 2011年6月21日 2:12 >日テレニュース24
http://news24.jp/articles/2011/06/21/04184887.html

 政府・与党は、20日に社会保障と税の一体改革の政府案を決定する方針だったが、消費税率引き上げに対する民主党内の反発が強く、決定を先送りした。

 社会保障と税の一体改革の政府案は、20日の決定を目指していた。しかし、「消費税率を15年度までに段階的に10%に引き上げる」とした最終案に対して民主党内で異論が相次いでおり、20日の民主党議員らの会合でも2時間以上にわたって激しい議論が繰り広げられた。

 民主党・小林興起衆議院議員「今年の経済成長率が10%になり、来年は20%になるだろうとドンドンと上がっていくならば、『消費税を議論しようじゃないか』ということもあり得たかもしれない。日本経済がどうなるかわからないという時に、本当にこの案を突き進めるつもりか」

 仙谷官房副長官「バカなことを言いなさんな。年率10%の成長なんてことがあるはずはない。そんな理論に基づいてこの社会保障を考える、そういう理論であれば、いくら議論しても相いれることはない

 結局、20日も意見はまとまらず、予定していた政府案の決定は21日以降に持ち越された。

 菅首相の肝煎りで始まった一体改革は、党内ですら意見の集約ができない状況が続いている。


→名目4%成長前後です。真の争点は。

→そこで、2011年3月9日衆院内閣委員会の中川VS与謝野論争を。ぜひ、政府・民主党でこの続きをやってください!



○中川(秀)委員 ・・・私はそこでお尋ねしますが、アメリカ、イギリス、スイス、スウェーデン、こういう国々の金融政策は、あなたの言うところのインフレを当てにした政策であり、これは悪魔の政策なんでしょうか。どうでしょうか

○与謝野国務大臣 先生の経済政策の決定的な間違いというのは、日銀の金融政策が発動されれば何でも可能だ、そう思っておられるところでございます。

 リーマン・ショック以降の日本銀行の行動は、いわゆる日本銀行が伝統的にとってきた行動に加えて、CPの購入あるいはREITの購入、株式の購入等々、非伝統的な政策も行っておりまして、マネタリーポリシーとしては、私は、日銀は精いっぱいやったと思っております。

○中川(秀)委員 これも後世いろいろ歴史家がちゃんと検証してくれると思いますが、私は何も、日銀の経済政策一本でこういう経済不況、この打開をしろと申し上げたつもりは一度もございません。

 あなたは今答えていないんですけれども、伝統的な政策に加えて非伝統的な政策を少しやったと。しかし、だれが見たってツーリトル・ツーレート。さっき言ったように規模も全然違うわけですよ。二・八倍とか二・四倍とか。こっちは〇・一倍、一割しかしていない。それについて、外国は悪魔的な政策なんですかと聞いているんですが、あなたは答えていただけません

 これも答えられないんだろうとは思いますけれども、例えば、リーマン・ショック以降、スウェーデンの国立銀行、よくあなたはその例を出すわけですが、これは、ゼロ金利と量的緩和政策をとってバランスシートの規模は三倍以上にしています。二〇〇九年の四月から十一月までにマイナスになった消費者物価指数は、二〇一〇年の二月、一・二%とインフレ目標の範囲に戻っています。今でもそんな水準で維持されています。これも悪魔的な手法なんですか。悪魔的な手法なのかどうか答えてください

○与謝野国務大臣 先生が引用される諸外国の例は、ほとんど日本には適用できない例ばかりでございます。

 現実的に、リーマン・ショック以降、金融市場がどうであったかといえば、常に金余りの状態であった。しかも、日銀の短期金利の誘導もゼロを目指していましたし、量的緩和もやりましたし、日銀の当座には常に大きなお金が積まれていた。長期金利は一・一%―一・五%の間を動いていたということで、日本経済全体として、ベースマネーであろうが何のお金であろうが潤沢にそこに実は存在したのであって、お金の不足が日本経済の回復をおくらせたという議論は多分成り立たないんだろうと思っております。

○中川(秀)委員 これについてもさんざん、いろいろな議論があります。大学等の経済学で実証的な議論として行われているいろいろな原則、マンデル・フレミングとかいろいろな学説があります、実証もありますが。そういう中でこれはもう結論が出ていることで、世界基準になっている政策について、あなたは、日本では適用できない、金余りであると。これは大体、日銀も言っていることですが、そんなことじゃないんですよ。

 つまり、ツーリトル・ツーレートでない方法でやれば、もっともっと資金も潤沢に供給をされ、現実に供給され、深刻なこのデフレは終結するんです。私は、あなたがそういうことばかり言っているから、どこまで真剣にデフレを直そうとしているのか、疑問が浮かんでくるわけであります。


○中川(秀)委員 ・・・増税に関するあなたの認識も少し確認したいんですが、ロイターのインタビューで、三月、デフレをどう定義するかわからないが、消費税が上がると物価は上昇する、物の値段は上がるとあなたはお答えになっていますが、デフレというのを一体どう定義しているんでしょうか。毎年数%ずつ消費税を上げることで、物価は上がった、デフレは克服した、そんなことは言えるんでしょうか。私は、むしろデフレ下の消費税増税は結果的にさらなる物価下落圧力になると考えています。むしろそのリスクが強い。だから税収は上がらない。

 一九九一年度、今からもう二十年ぐらい前になりますね。GDP四百七十四兆。二〇〇九年度、四百七十四兆。名目成長率が上がらないと、こんな、十八年間も増税しても税収なんか上がりませんよ。このことをあなたは認めるんですか、認めないんですか。

○与謝野国務大臣 私は、かねてから、中川先生の経済政策はやや日本銀行に期待し過ぎではないかと実は思っております。日本銀行は、やれることは知れておりまして、それが日本経済を救うような万能の武器を持っているわけではないと思っております。

 実は、日本の経済は金融が問題なのではなくて、実際の物づくりの能力あるいは提供できるサービスの能力とかいう、やはり経済の本質的部分の実力の低下というものが日本の経済の最大の問題であって、これをすべて日本銀行の金融政策等々に押しつけるのは多分間違っているんだろうと私は思っております

○中川(秀)委員 驚きました。私は全く見解を異にしますね。今の答弁で、どれだけ逆に、経済をずっとやってきた人たち、あるいは経営者も含め、がっくりされたのかわからないと思いますね。

 それでは、なぜこんなに各国の中央銀行が、ベースマネーも含め量的緩和政策。しょせんは、例えば為替だって同じですよ。円高とデフレというのは同根です。一国が一千兆円の経済で八十兆円も量的緩和をやる、通貨政策をやる。一方は数兆円、二、三兆円しかやらない。一ドル百十円が八十円になるのは当たり前です。そういう金融政策の重要性について全くあなたは理解していないとしか言いようがありませんね。

→与謝野さんと日銀は、欧米のような量的緩和政策がとれないのは、日本のモノづくりやサービスの能力が低いからだ、と考えているわけですね。

日銀の政策が欧米から異質なのではなく、日本経済が異質なのだ、と。だから、欧米の中央銀行がやっても悪魔の手法ではないが、日本がやると悪魔の手法だと。

それは、日本の潜在成長率は0%台という認識が背景にある。こんな考え方のもと、成長率が0%に接近してくると、金融政策をひきしめるデフレターゲットポリシーをやるもんだから、何時の日か、日本は本当に0%成長しかできない国になってしまった。これは金融政策による纏足経済ではないですか。

スウェーデンのような金融政策はやらないで、スウェーデンのような増税政策だけ抜き取ろうとする。しかも、消費税率10%ではスウェーデンのような社会保障はできないでしょう。

政府・民主党の「一体改革」とは、一体何のための改革?


新聞が書かない「経済成長がなければ増税しても税収は増えない」という基本的事実
「 インフレ嫌い」の与謝野大臣には不都合な真実
2011年02月07日(月)高橋 洋一 ニュースの深層
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2043

国会でようやく政策論議がはじまった。ところが、2月4日の衆議院予算委員会で信じられない光景に出くわした。その日、テレビ放映はなかったが、今や国家審議はインターネットで見ることができる。

そもそも新聞やテレビは国会論戦では事前の配付資料がないために、重要な経済問題もほとんどスルーされ、面白い議論もほとんど報道されていない。その一方、たとえば「社会保障と税の一体改革」といった役所側から資料がもらえる話は、所詮政府内検討に過ぎず、ねじれ国会では成立可能性がないのもかかわらず、大々的に報道している。マスコミは政府の広報機関のようだ。

4日、柿沢未途衆議院議員(みんなの党)が与謝野馨経済財政担当大臣に対して質問した。与謝野大臣は、名目成長率に頼る経済は悪魔という発言をしているが、スウェーデン経済の名目経済成長率5%、インフレ率2%をどう思うかと聞いたのである。これに対して、与謝野経済財政担当相は「政治はインフレに頼ってはいけない」と驚くことにスウェーデン経済運営を否定してしまったのだ。

なぜか報じられないスウェーデンの「経済成長」
 社会保障のモデルとしてスウェーデンはしばしば登場する。しかし、先進国の中でもスウェーデンがまともなマクロ経済運営によって経済成長をしていることには言及されない。

その一つの事例が、2008年9月に起こった世界金融危機への対応である。すぐに、スウェーデン中央銀行であるリクスバンクは、大胆な金融緩和を実施しバランスシートを3倍以上に拡大した(下図参照)。

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 中央銀行のバランスシートの拡大による通貨増(ベースマネー増)は、まずインフレ率予想の増加になって、実質金利が下がり設備投資需要が拡大したり、通貨安になって輸出が伸びたり、株式等資産市場が活況になり消費が増えたりする。ベースマネー増に対して物価はすぐには上昇せずに、遅れて上昇する。これを経済学ではラグという。

スウェーデンの場合、物価への効果のラグは1年ほどであり、上図のバランスシートの動きを1年だけに右に移行させると、物価の上昇とぴったり重なる(下図参照)。これを見ると、スウェーデンがデフレに陥らなかったことがわかる。

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ちなみに日銀の対応はまったく手ぬるい。与謝野経済財政担当相は、世界金融危機時には自公政権で経済財政担当相であったが、当時「蜂に刺された程度」と発言し、危機感がまったく欠けていた。日銀は与謝野氏がサポートしてくれることをいいことに、世界各国で行われていた金融緩和をサボった(下図参照)。

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多少はバランスシートを拡大させているが、スウェーデンを含め他の先進国が一目瞭然の金融緩和をしているのに、日銀はしなかったのだ。そのために、日本は今でもデフレから抜け出せないでいる。


余談だが、スウェーデンのリスクバンクはノーベル経済学賞のスポンサーである。こんな稚拙な日銀の経済運営を見ていたら、当分の間は日本にノーベル賞をあげたくないだろう。

中原伸之日銀審議委員が漏らした懸念

スウェーデンの例だけあげると都合のいいところだけを見ているのでは心配するかもしれないが、スウェーデンの名目経済成長率5%、インフレ率2%というのは、先進国の平均である。日本だけが、世界とかけ離れているのだ(下図参照)。違いは何と言っても、インフレ率であり、それは第一義的には日銀の問題である。


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1月27日、10年前の2000年7~12月の金融政策決定会合の議事録が公開された。デフレの意味をわからずに、消費者物価上昇率が前年比マイナスにも関わらず利上げされた歴史的にもまれな政策失敗である。その議事録の中で、利上げに反対した当時の中原伸之審議委員は「日本異質論ではなく、日銀異質論と言われかねないと強く懸念している。」と述べている。今でも通用する正しい意見である。

インフレ率が低すぎると、名目成長率が高くならない。となると、税収も伸びない。これは1990年以降に日本で経験してきた事実だ。


しばしば財務省の「ポチ」であるマスコミ論説委員クラスは「ワニの口」という言葉を用いる。これは財務省がマスコミを洗脳するときに用いる図の形から来ている。最近25年くらいの一般会計歳出と税収の推移を記したものである。

1990年以降、歳出は伸びているが、税収は伸びずに、ワニの口が開いたような図になっているのだ。この説明を受けるときに、財務省は税収の伸びない要因を説明せずに、不均衡が拡大していることを強調する。マスコミも説明を受けて鵜呑みにするだけなので、なぜ税収が伸びないかを聞かない。

増税しても経済成長がなければ税収は増えない
 しかし、税収が伸びないのは、名目成長率が1990年以降ほぼゼロであるからだ。1991年度の名目GDPは474兆円であったが、2009年度は474兆円と同じ水準。

ちなみに、財務省のワニの図に、名目GDPを書き込んだものをみれば、誰でもこの様子がわかるだろう(図参照)。

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この20年間で最も税収があったのが、1990年度の60.1兆円。1997年度は53.9兆円で、その後消費税増税したがデフレだったので、その水準すら超えられないまま、現在に至っている。これで、デフレ下では増税しても財政再建できないことは明らかだ。



しばしば消費税キャンペーンでは英国がよく引き合いに出される。その理由は1月24日の本コラム「「消費税増税」賛成の裏側に大新聞の「非競争的体質」あり」( http://gendai.ismedia.jp/articles/-/1961 )で書いた。付け加えれば、英国ではイングランド銀行がバランスシートをスウェーデンの場合と同じように3倍程度に拡大させて金融緩和し、デフレにならないようにしていることは言及されない。

さらに、ダボス会議で、キャメロン英首相は、正常な経済運営を前提して財政再建について4分の3を歳出カットで残り4分の1を増税で賄うと明言している。今の菅政権は、正常な経済運営を間違いだといい、増税だけで財政再建しようとしているが、これは狂気の沙汰だ。

財政再建は重要だが、経済がデフレ下では絶対にうまくいかない。これは、OECD諸国でのこれまでのケーススタディからも証明されている。さらに、社会保障制度の改革も経済がまともでないならできない。

こんな常識すら菅政権は持っていないようでは早く辞めたほうがいい。