経産省幹部が公表をストップさせた「東京電力解体」案

この霞ヶ関とのもたれあいこそが問題だ
〔PHOTO〕gettyimages

 福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故が長期化する中、東京電力のあり方が焦点になってきた。

 兆円単位に及ぶとみられる被災者への補償負担を考えれば、東京電力が自力で苦境を乗り越えられる可能性はほとんどない。いずれにせよ、政府の関与は避けられない。では、東京電力をどうすべきなのだろうか。問題点を整理しておきたい。

 東電処理政策の目標として、とりあえず次の4点を考える。事故の再発防止、納得感がある補償、国民負担の最小化、電力の安定供給確保である。ほかにもあるだろうが、ひとまず措く。

 まず、事故はなぜ起きたか。巨大な地震と津波という自然災害が直接の原因だが、そもそも原発の安全確保体制にも問題があった。

 政府は原子力安全・保安院と原子力安全委員会という二本立てで原発の安全性を監視していた。前者は経済産業省の外局であり、後者は内閣府の審議会(+事務局)という位置づけである。

東電が天下り先の経産省に監視できるわけがない

 経産省は外局に資源エネルギー庁も抱え、省を挙げて原発推進の旗を振ってきた。同じ役所が右手で原発を応援し、左手でチェックする体制になっていたのだ。現場で働く役人は同じ経産官僚である。東電は経産省からOB官僚の天下りを受け入れてきた。

 規制する側が規制される側の世話になってきたわけで、これで十分に監視できるわけがない。

 原子力安全委員会は学者が委員を務めている。実態は政府と東電の「御用学者」ばかりと言っていい。たとえば、松浦祥次郎元委員長は安全確保には「費用がかかる」と発言していた(テレビ朝日『サンデーフロントライン』4月10日)。番組でも指摘したが、東電のカネの心配をするのは、税金で報酬を得ている原子力安全委員の仕事ではない。これでは東電の代弁者ではないか。

 保安院も安全委員会も「監視役」という本来の役割を果たしていなかった。保安院の経産省からの切り離しを含めて、抜本的な体制見直しは当然である。

 東電を十分チェックできなかったのは、単に政府側の体制の問題というだけでなく、実は東電が地域独占だったという点を無視できない。

 ほかに代替できる企業がないから、東電の力は必然的に強大になる。問題が生じたときに政府がペナルティを課したところで「絶対につぶせない」ので、時が経てば元に戻ってしまう。

 政府とのなれ合いは、他に競争相手がいない地域独占が招いた必然の結果である。なれ合いが不十分な監視の温床となって、それが事故につながった。そう考えれば、地域独占をやめることがもっとも根本的な再発防止策であり、東電処理の必要条件になる。

 電力事業をめぐっては、かねて発電事業と送電事業の切り分け(発送分離)が課題になっていた。発送分離して東電の送電線を自由に使えるようにすれば、発電事業に企業が新規参入しやすくなる。風力や太陽光など新しい再生可能エネルギーの活用も進むだろう。

 ここは東電の発送分離に加えて、地域独占の廃止も組み合わせるべきだ。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら

関連記事