マクロビと食養をホメオパシーに絡めて批判します

ホメオパシーの問題点とホメオパシー団体の主張の危険性が世間で話題になっているウチにホメオパシーとマクロビについて類似点を指摘し、問題の俎上に載せたいな、と考えております。その前にちょっと整理しておきたい部分があるので簡単に説明させていただきます。

■マクロビと食養
どらねこはマクロビオティックについて、栄養学的に誤った考えや医療忌避に結びつきかねない主張について批判してきましたが、少し紛らわしいのが『マクロビ』『食養』の関係ではないでしょうか。食養というのは、石塚左玄の主張する食事療養法を根本原理とする食事療養法で、マクロビもこの中に含まれます。どらねこはマクロビではない『食養』についても併せて批判を行っております。どらねこがマクロビという名前を挙げることが多いのは、一般への浸透具合や過激な主張が目立つからであり、『食養』についてもマクロビと同様、妥当性の無い主張であると考えております。

どらねこの想定する『食養』は以下の通りです。

明治時代の軍医である石塚左玄が主張した『食養理論』を根本原理に据えている食事療法や生活習慣で健康になれると主張するモノ。

その石塚左玄の主張は次のキーワードで説明されます。

【食本主義 】『食は本なり、体は末なり、心はまたその末なり』という考え方で、病気の原因は食にあるとするもの。

【人類穀食動物論】人間の歯は形状とその本数を見れば、穀食動物であることが本来の食性であることが分かる。本来の食性を無視した食べ方は健康を損なう。

身土不二生まれた土地の食べ物を食べることや伝統食が健康に繋がるという主張。

【陰陽調和】夫婦アルカリ論(ナトリウムが陽でカリウムは陰)という両者の食物中のバランスが大切だとする考え方に、中国の陰陽理論を採り入れたモノ。

【一物全体食】食物は丸ごと食べることで、本来のバランスが保たれるため、精製食品の問題点を主張した。「白い米は粕である」とし、玄米を主食に据えている。

大雑把ではありますが、石塚の教えに桜沢如一の独自解釈と思想を組み合わせたモノがマクロビオティックであり、石塚の教えを尊重し、現代に伝えようという立場にあるのが、日本綜合医学会の『食養』と理解しております。日本綜合医学会の関係者や親しい立場の人物を挙げると、島田彰真弓定夫安保徹などがおります。思想のぶっ飛び具合ではマクロビオティックには譲りますが、安保徹氏や沼田勇の著書を読めば日本綜合医学会の主張がアヤシイモノであると容易に理解できるでしょう。その他、日野原系食養や、桜沢のマクロビから離脱した河内省一の食養などバリュエーションは色々*1あるようです。

■マクロビ(食養)とホメオパシーの類似点
石塚左玄の食養理論は当時としてはそれほど非科学的な主張ではありませんでしたし、その中には見るべきところもありました。その点については、過去エントリで推測を交えながら考察しております。

関連エントリ→健康食と危険食⑦−石塚左玄の食養

当時としては科学的な面を持つ主張ではありましたが、その後の知見により彼の主張した食品中のナトリウムとカリウムの比率自体が疑わしい事、ナトリウムやカリウムの比よりも大切な要素があることや、伝統食とされる食事では栄養素欠乏を来すおそれがある事などが次第に明らかになってきました。そして、栄養学、食事療法としての主流からは外れる事となりました。これはハーネマンの掲げたホメオパシーの理論と重なる部分が多いように思いますホメオパシーは200年前は科学でしたが、物質の構造が明らかとなり、希釈を繰り返したレメディには元物質が含まれることが殆ど無い事が知られるようになりその根拠が否定されました。
現在に於いて最も確からしい理論や知見を無視し、既に否定された原理を持ち出し、健康増進や病気の回復に役立つという主張を行う、食養(マクロビオティック)とホメオパシーは似たような構造を持つニセ科学なのです。

マクロビオティックは思想なのでは?
食養はともかく、マクロビオティック桜沢如一の思想なのに、ニセ科学扱いして目くじらを立てるなよ、と思っていらっしゃる方もあるかも知れませんが、桜沢はマクロビオティックの考えに科学的根拠を求め、生物学的元素転換説を提唱したルイ・ケルヴランに賛同しその著書を翻訳し、日本での紹介を行っています。また、現在でもマクロビオティックは一般向けに玄米菜食の栄養学的有意性などを説明しており、どらねこは科学を謳っているニセ科学であると考えております。

次回から本格的(?)にホメオパシーとの類似性を指摘していこうかなぁ、なんて思っております。

*1:少し毛色の変わったところでは久司マクロビオティックと分子栄養学を融合させたメディカル・イーティングなんてものもあります。断言します!!