お年寄りがゲーセン集合 1日1000円、交流の場に
若者の娯楽施設だったゲームセンターを訪れるお年寄りが増えている。人気はメダルゲームや通信対戦できるマージャン、将棋。少ないお金でも長く遊べ、お年寄り同士の交流の場にもなっている。少子化で顧客減少に悩む店側も、新たな顧客層として高齢者限定サービスで取り込みを図っている。
「おめでとうございます! 大当たりです」「まあ、うれしい」。「セガワールドドリームファクトリー」(東京都武蔵村山市)に笑い声が響く。午前10時の開店直後からお年寄り十数人がゲーム機に次々とメダルを投入している。
2006年に大型ショッピングセンターの中にオープンした同店。今では客の3分の1がお年寄り。週3日以上通う"常連"も30人ほどいる。
ルーレットなどでメダルを獲得するメダルゲームのほか、競馬ゲーム、クレーンを操作して景品を取るクレーンゲームなどが人気。メダルは店に預けることもできる。
「最初は孫と一緒に来たんだけど、今は自分が夢中になって」と市内の女性(65)。「にぎやかで友達もできるし気持ちが若返る」と、ほぼ毎日朝から夕方まで過ごすという。退職後に通い始めた男性(74)も「家にいても老けるだけ。手や頭を使うので健康に良い」と笑顔だ。
ゲーム会社のコナミデジタルエンタテインメント(港区)などによると、ゲームセンターに来るお年寄りはここ数年で顕著に増えた。あまりお金をかけず、1日千円前後で遊ぶ人が多いという。都内の男性(73)は「パチンコや競馬では1日1万円以上かかることもある。安く遊べるので毎日でも通える」と利点を話す。
背景には少子高齢化の進行も。減り続ける若者より幅広い年齢層に目を向け、大人も手軽に楽しめるメダルゲームなどを設置する店が増えたことが影響したとみられる。
「日本アミューズメント産業協会」(千代田区)によると、ゲームセンターは不況と少子化の影響で淘汰が進み、全国の店舗数は03年の2万6359店から09年に1万9213店へとこの6年間で3割弱減った。ある経営者は「若者のみをターゲットにするのは苦しい時代になった」と話す。
独自サービスを導入する店も多い。「アドアーズ竹ノ塚店」(足立区)では、千円でメダル100枚のところ、65歳以上は50枚サービス。防寒用の毛布も貸し出す。「セガアリーナ浜大津」(大津市)は毎週日曜、60歳以上は交換できるメダル数を1.5倍にしている。
同店では、ネット対戦ができる将棋やマージャンなども人気。弁当などを持参して外で一緒に食べる客もいるという。田中惣一店長(39)は「ゲームに興味を持ったお年寄りから操作方法を聞かれる機会も増えた」と話す。
高齢者の研究に携わる新谷尚紀国学院大教授(民俗学)は「70歳前後のお年寄りは時間的、金銭的に余裕がある。都市部を中心に近所関係が希薄になり老人会に所属する人も減ったが、ゲームセンターが現代の新たな交流の場になりつつある」と指摘する。