ウェブで学ぶ−オープンエデュケーションと知の革命

ウェブで学ぶ ――オープンエデュケーションと知の革命 (ちくま新書)

ウェブで学ぶ ――オープンエデュケーションと知の革命 (ちくま新書)


WIDEのSOIとか割と昔から(暇つぶし的に)見続けていることもあり「ウェブで学ぶ」と言われても今さらかなぁと思いつつも、子供の行く末を考えたときにちゃんと知っておく必要があるな、とか、オープンエデュケーションの根拠になっているものについて知っておきたくて本書を手に取ってみました。


MITのOCWを初めとして代表的なオープンエデュケーションの事例を紹介しつつ、その形成過程における互助精神/フロンティア精神/いたずら心/宗教的信念などアメリカの社会的価値観の役割まで考察を拡げます。もちろん、ヨーロッパや日本における、それとの比較も含めて。


読んでる途中から、こんな本よんでる場合じゃなくて早くGoogleCalenderに受講計画Inputしなきゃ、って思っちゃうくらい、危機感を煽られました。私が半分ねてる頭でのんびりと趣味的に視聴しているのと同じタイミングで、世界中のハングリーな若者達が生き残りをかけて学習してくるわけですよね。えらい世の中になったもんです。


適切な教育資源の再配分がフラット化を加速してるわけですが、語学の問題でそれを遠ざけちゃう日本人は洒落になりませんね。世界で戦わざるを得ない私たちの子供の世代のことを考えると、親のレベルから本当に環境を変えていかないといけない、心の底からそう思った次第です。


メモ:

  • P.20 起業家タイプの人は、人生のある時期に、たいへんな集中力と気迫で、新しい知識を独学で修得するものなのだということでした。研究者が専門を極めていく中で創造性を発揮するのと違って、起業家はその時代の要請を敏感に感じ取って事業機会を掴み取ります。変化こそが機会を生むわけですから、起業に必要な知識を、起業家が企業段階で全て持ち合わせている場合のほうが希です。


  • P.27 質の高い教育を受ける欧米の若者達は「おまえは何者なのだ。おまえの根拠は何だ。これからおまえは何をしたいのだ」と常に問われながら育ちます。個を磨き、自分の個性を発信しながら社会を生き抜いていくようにと、子供の頃から教えられます。


  • P.29 ウェブが「人生を切り開いていくための強力な道具」となるための第一の柱が「ウェブで学ぶ」可能性。第二の柱が「師」や「同志」と出会えるような「志向性の共同体」の可能性。そして第三の柱が「職を得る、生計を立てる」道筋へとつながる可能性。


  • P.49 実はオープンエデュケーションの考え方は1960-70年代から使われていて、当時は、学校のカリキュラムを学年や教科、授業時間などにできる限り縛られないような柔軟性の高いものにすることで、子供の積極的で主体的な学びを支援しよう、というものでした。


  • P.96 「やってみてどうなるかはわからないけど、ひょっとするといいこと、おもしろいことになるかもしれない」というときに思い切って一歩を踏み出す。そこであまり悩んだり考え込んだりせず、とにかく一歩前に出る。そういう雰囲気がアメリカには蔓延していますよね。


  • P.104 もしかすると、この「カリフォルニアン・イデオロギー」と「東部エスタブリッシュメント的なもの」の融合こそが、21世紀のアメリカを再構築しようとしていて。


  • P.106 「常に体調のいい、テンションの高い、ready(準備の出来ている)状態」をアメリカでは求められる


  • P.139 中学生を対象にしたテストで成績の悪いアメリカが大学ランキングでは上位を独占する理由は、「アメリカの大学に来ているのは、アメリカ人だけではない」ということ。2008年のMITのデータで、学部生の10%、大学院生の40%が留学生。ちなみに東大では、学部2%、院で15%。


  • P.157 ベンチャーというのは多産多死の世界ですから、一つ有望なベンチャーが資金調達して立ち上がったというのは「仮説」の検証がまず始まった、というような意味合いです。


  • P.181 21世紀の教育は、そのようなごく少数の人たちだけを相手にするわけにはいきません。その一方で、既存の学校という教育システムの強制力が機能しにくくなっているという現実を考え合わせると、オープンエデュケーションが普及していく中で、より多くの人たちが望む教育を受け確実に新たな知識や能力を習得するために、「一体どのような強制力が必要となり、またそこにどのような新たな「教えと学び」の可能性が開けてくるのか」を考えるのは、とても重要だと思います。


  • P.185 ハイパーメディアの教材を使った学習は万人にとって効果が高いものとは言えない。学ぶ内容に興味がない人にとっては、受動的なメディアである映画やテレビを同じ時間見るだけの方が、学習効果が高い。学ぶ内容についてあまり知識を持っていない人は、ハイパーメディアでは学習を進めにくい。受動的な気質の人も、ハイパーメディアを使った学習にはあまり向かない。


  • P.196 学校で学ぶものとされていた「最低限必要な技能や知識」自体が、かなりのスピードで流動的に変わり続ける今の社会では、「師」から技能や知識を学べばそれで充分、と言えなくなりつつあります。


  • P.210 「in the right place at the right time」そこは往々にして実践を伴うコミュニティ


  • P.216 「これからの子供達はグローバル経済における職を求めて競争することになるが、アメリカの学校の多くはそのことの準備が出来ていない」「グローバル経済において、売ることの出来る最も価値あるスキルとは知識なのであり、良い教育というものは、もはや機会を得るための道筋ではなくて絶対に必要な前提条件なのだ」オバマ大統領の就任演説で「教育と職」について。


  • P.227 アメリカでは教員免許を取って、大学卒の新任教員として小中高に着任した先生のなんと五割が五年以内にやめてしまいます。本当に過酷な職業で、待遇もあまり良くないし、超過勤務で燃え尽きて仕事を辞めてしまう人が後を絶たない。


  • P.236 オープンエデュケーションというムーブメントは、地球規模で既にたくさんの質の高いプロジェクトが長い間動いてきて、そろそろそれらの総体が学びの世界を変えようというところまで来ているんだということ。


  • P.263 日本語圏のウェブ世界からはまったく見えない大変化が、世界では着実にしかも急激に起きている


ウェブで学ぶ ――オープンエデュケーションと知の革命 (ちくま新書)

  • 週に2コマぐらいスケジュール調整のうえ受講する。できたら感想をつぶやく。
  • マイケル・ウェッシュの「現代の学生のビジョン A vision of Students Today」をみる
  • 自分でもWeb上で講義してみる
  • 定期的に「おまえは何者なのだ。おまえの根拠は何だ。これからおまえは何をしたいのだ」という問いが飛んでくる仕組みをつくる
  • 常に体調のいい、テンションの高い、ready(準備の出来ている)状態、を心がける。もしくはスイッチを探す。