気がつけば国際観光都市になっていた秋葉原2010年アキバまとめ(街編)(1/3 ページ)

» 2011年01月05日 11時11分 公開
[古田雄介,ITmedia]

既存の土地は横ばい、一方で再開発エリアは地価が10年前から3倍上がった区画も

秋葉原の再開発エリアを示す千代田区の資料。赤線が東京都指定の土地区画整理事業区域、黄色線が土地計画区域を示すが、アキバTMOは地図上の区域にとらわれずに、アキバという街全体のマネジメントを行っている

 現在の秋葉原駅周辺の施設やインフラは、数10年の時間をかけて計画されてきた。秋葉原駅周辺には1975年に廃止された秋葉原貨物駅や1989年に大田市場に移転した神田市場の跡地など、6ヘクタールの広大な土地があり、これが再開発の主な舞台となっている。

 この土地は全体的なコンセプトが決まらないまま長い年月が過ぎたが、1997年に東京都と千代田区、既存市街地や再開発に参入する企業が話し合いする「まちづくり推進協議会(通称、Aテーブル)」が発足。以降は急ピッチで再開発が進められ、2008年にはAテーブルメンバーの多くが出資して「秋葉原タウンマネジメント株式会社(アキバTMO)」を設立した。以降は、各事業者や行政が開発を進めながら、アキバTMOで街をマネジメントしていくといったスタイルが現在まで続いている。

 再開発事業は2011年に終了するが、すでに大部分が完了している。2005年8月につくばエクスプレス秋葉原駅、2005年9月にヨドバシカメラ マルチメディアAkiba、2006年3月に秋葉原UDXと秋葉原ダイビルからなる秋葉原クロスフィールドがオープンしており、現在のアキバの姿を1つの完成形としてみていいだろう。街の東西で行き来しにくく、駐車場の少なさを含めた交通の不備といった再開発前の課題は、大幅に改善されている。

 また、既存市街地からの意見を取り入れて、“過去の街”にしないようにマネジメントを進めたことも一定の効果を残していた。端的なのは地価の変動だ。国税庁が発表している路線価格(地価の指標のひとつ)を2001年と2010年で比較してみると、再開発エリアは2〜3倍の高騰が各所にみられるのに対し、既存市街地はほぼ横ばいで、従来どおりの価値を維持しているといえる。

 そして、アキバTMOは現在も治安維持や美観推進と同時に、環境整備や観光促進などで街全体の価値を高める活動を精力的に進めている。その中でも、外国人観光客に向けた取り組みが目立つ。

 千代田区まちづくり推進部の佐藤武男氏は、「とにかく多くの国の方が楽しめる街にしたいんですね。それで例えば、秋葉原観光情報センターには英語と中国語が話せるスタッフを常駐させて、英中韓の言語を案内看板に載せるといった取り組みをしています。さらに2011年からはロシア語やスペイン語などの言語にも対応していきたいと考えていまして、アキバTMOで準備を進めているところです」と語る。

 前回紹介したソフマップやアトレも、外国人観光客に向けた取り組みを積極的に行っていたが、アキバTMOでも実践しているあたり、その意識は街全体で共有されている感があるようだ。実際のところ、どれほどの需要があるのだろうか。次のページから探っていこう。

千代田区による、秋葉原駅付近地区の開発動向一覧図。多くのランドマークが再開発で作られたと分かる(写真=左)。国税庁の財産評価基準書にある路線価図の平成22年(2010年)分と平成13年(2001年)分の値を比較した。再開発エリアは大幅な高騰が目立つ(写真=中央)。千代田区 まちづくり推進部 都市計画課 地域経営主査 佐藤武男氏(写真=右)

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