先日ホワイトハウスが公開した「オサマ・ビンラディン急襲を見守るシチュエーションルーム」の写真です。
FOXドラマ『24』の設定とは似ても似つかないHPノート...
Windowsとインテルインサイドのシールもそのまんま...
ヒラリー(写真の焦点は彼女の目に)の膝には最高機密ファイル...
このモザイクの写真には何が...
ということより気になるのは、この目の先のビデオスクリーンに何が映し出されていたのか...ですよね? はい。ところがこれが話す人によって全然違うのですよ!
あの怒涛の1週間の動きを振り返ってみましょう。
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まずはオバマ大統領。1日深夜緊急記者会見でこう発表します。
「銃撃戦の後、オサマ・ビンラディンを殺害し、遺体を確保した」
ホワイトハウス高官は直後の記者会見でこう補足しました。
「オサマは急襲部隊に抵抗し、銃撃戦の最中に殺された」
「女性がひとり盾に使われて亡くなった」
一夜明けてペンタゴン(国防省)も昼の記者会見でこう肉付け。
「銃撃戦はあった。ビンラディンは抵抗した」
「彼は確かに女性複数名を盾に使っていた。死んだ女性のほかに怪我を負った女性が2人いる」
「建物にいた時間は40分だった」
それから2時間後、ホワイトハウス報道官との共同記者会見でジョン・ブレナン米大統領補佐官(国土安保・テロ対策担当、上の写真に映ってる)は前夜の状況をこう長々と再現しました。
「ビンラディンは銃撃戦の最中に殺された。女たちを盾にして隠れて。どんな人間かわかるだろう」
「我々は戦況をリアルタイムで見ていた」
(ビンラディン殺害を確認した時の大統領の反応は?)「『We got him』」
ところが翌日(火曜)になって、ホワイトハウスのジェイ・カーニー報道官はTV生放映の会見で「武器は持ってなかった」、「盾の詳細は不明」と修正。
「ビンラディンは銃は持っていなかった」(国防省発表)
「妻も丸腰だった」
「死んだ女性は1階にいて盾に使われたのか、自分から盾になったのか、たまたま銃撃の間にいたのかは不明」
「銃撃戦は作戦の間ずっと続いていた」(国防省発表)
さらに水曜、ビンラディンの12歳の実娘(パキスタン当局が駆けつけた時、娘は父親が殺された場所でふくらはぎを撃たれた母親を膝に抱いて介抱していた)がパキスタン政府の取り調べに対しこう証言していることが判明。
「父は少し抵抗した後、生け捕りとなり、家族の見ている前で射殺されました」
「急襲の最初数分で」
そう言えば月曜夜、両党議会首脳陣のディナーでオバマ大統領は「オサマ・ビンラディンの捕獲と死」(以下の4:33)と妙なこと口走ってましたが...最初は生きていたって意味なんでしょうかねぇ...(CIAは否定していますが)。
それにしても最初の数分でケリがついたのなら、あとの時間は何を? これは後の報道で、コンピュータ5台、ハードドライブ10台、100点を超えるDVD・サムドライブ・メモリースティックなどメモリー端末をせっせとヘリに積み込む作業に宛てていたことが分かってます。
シチュエーションルームの一行は何を見ていたのか?
Business Insiderは2日、情報筋の話として「大統領は急襲を生映像で見ていた」と伝えました。大統領と同席したブレナン補佐官も2日の会見で「全部リアルタイムで見ていた」と言ってます。
具体的にどんな映像かはわかりませんが、The Atlanticが書いてるように今の軍事作戦では兵士一人ひとりのヘルメット・キャムから入る生映像を本部に送るのが、かなり当たり前。ビンラディン急襲という重要任務でSEAL Team 6がひとりもカメラを装着しなかったとは考えにくいですし、それだとするとこんな映像が順次入ってきていたものと思われます(映像は今回の作戦とは関係ありません)。
さて、気になるのは「ビンラディン殺害の瞬間が見れたかどうか?」ですが、次期国防長官に任命されたばかりのレオン・パネッタCIA長官(当日はCIA本部に詰めていた)は火曜夜PBSニュースのインタビューでこう否定していますよ。
Watch the full episode. See more PBS NewsHour.
Jim Lehrer:建物内の映像はあったんですか?
長官:生の情報フィードはありました。
JL:オサマ・ビンラディンが殺される映像は見ましたか?(4:40)
長官:NO。
JL:オバマ大統領が控えていたホワイトハウスのシチュエーションルームの方は?
長官:あちらもリアルタイムで我々と同じ情報を見れたはずです。
JL:大統領はオサマ・ビンラディンが撃たれる場面をご覧になった?(5:21)
長官:NO。実は侵入後20~25分は情報が途絶えてしまい中の様子は全然わからなかったのです。
この後、ワシントン・ポストは7日の記事で「無音のビデオフィードで見ていた」とさらりと紹介(これが今まで出た中では一番詳しい情報)。現場で本人確認のため顔写真照合と身長計測をした際、巻尺を忘れてしまったため、6フィートの長身のSEAL隊員がビンラディンの死体の横に寝転がり、自分より数インチ高いことを確認した話を紹介しています。
情報がリレーされてくるとオバマ大統領は顧問らの方を見て、「この作戦のために6000万ドル(48億円)のヘリを寄贈してやったのに巻尺もないのか」と呆れたとのこと。SEALが火をつけたステルスのブラックホーク、そんな高いんですね...。
しかしまあ、アルカイダも木曜には認めたことだし、オサマ・ビンラディン本人であることは間違いなさそうですよね、実の娘が見たと言ってるんだし...。
そんなわけで冒頭の写真に話を戻すと、作戦のどの段階の映像を見ての反応かは分かりません。最初のブラックホーク・ダウンの瞬間なのか、映像が途絶えた瞬間なのか、それとも死の瞬間なのか...永久の謎ですね。