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「私の曲 一生ものにして」 紫綬褒章の中島みゆき

2009年11月12日

 中島みゆきを巡る話題が近ごろ目白押しだ。「棚から本マグロ」と喜びを語った紫綬褒章受章に続き、主題歌を歌う映画「ゼロの焦点」が14日に公開。18日には16回目となる音楽劇「夜会」が始まり、新アルバム「DRAMA!」も発売される。疲れ知らずの歌姫が目指すのは、「一生もののザルのような実用品」としての歌だという。

 化粧品のCMで松田聖子と共演したのも話題を呼んだ。「酒や年賀状のCMはあったが、化粧品の話が来るとは。実際に聖子さんとご一緒して、『わー、アイドルさんですか!』と新鮮でした」

 松本清張原作の映画「ゼロの焦点」には主題歌「愛だけを残せ」をつくった。時の流れを越えて生き抜く女性の強さを、という犬童一心監督の求めに応えた。

 「清張さんの、事件にかかわる人間たちをいとおしむ視点が好き。私と原作と台本を結んだ3点から、今伝えたいものは『愛』だろうと。表立って歌うのはこっぱずかしいけれど、登場人物の人生観とあわせて聞いてもらえたら」

 CMで白い大型犬に引っ張られたり、監督の名が犬童だったり、犬がらみの話に弱い、と冗談めかして言う。

 「犬に限らず動物は好き。いつも人間の言葉というところをゴチャゴチャやっているから、言葉を持たないのにコミュニケーションしている動物を尊敬する」

 より単純化を図っているという歌詞の切れ味が、アルバム「DRAMA!」ではますます鋭い。レコーディングでは、楽譜ではなく手書きの詞を見ながら歌うという。

 「やっぱり言葉を見ながら歌いたい。短編映画のように曲ごとの歌い方に変化があるけれど、それは編曲や演奏に引っ張られておのずと」

 「DRAMA!」はミュージカル「SEMPO」への提供曲と、「安寿と厨子王(ずしおう)」の話を土台にした「夜会」の曲による2部構成だ。

 「SEMPO」は、ナチスの迫害から逃れようとしたユダヤ人にビザを発給して命を救った外交官、「センポ・スギハラ」こと杉原千畝(すぎはら・ちうね)を描いた。杉原の人道主義を中島流の言葉に置き換えた詞や、子どもへの慈しみを歌った曲が印象的だ。

 かたや「夜会」は、暦売りや除夜の鐘、幽霊など日本的な風物が渦巻く非日常の世界を描く。

 多彩な作品が並ぶが、曲づくりの目標はひとつ。

 「床の間の見事な美術品ではなく、実用品にしたい。一生もののザルとか、100年使えるまな板とか。お父さん方が『地上の星』を携帯電話の着信音にしてくれたのも新鮮だった。目覚ましでも景気づけでもいい。いろんな必要性に応じて、私の楽曲を利用していただけたら」

 夜会「本家・今晩屋」は18日から12月18日まで東京・赤坂ACTシアターで。来年はコンサートツアーも予定している。

 「ツアー前にまたロサンゼルスで新しいアルバムを制作しないと。今度は個人的な、中島色のアルバムになるはずです」(藤崎昭子)

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