最近、MacBook Proのトラックパッドがクリックを認識しなくなり困っています。聞いた話では、裏側のネジが緩んでいるのかも、と。保証対象外になる覚悟で開梱してみますか……。

さて、今回は「高精細」について。今夏リリース予定のMountain Lionのみならず、OS X/iOSファミリーを語る際に必須となるこのキーワードをもとに、これからの画像と音について考えてみたい。

これからのMacを語るキーワード「高精細」

先日公開されたLionのシステムアップデート(v10.7.4)が話題を集めている。表面的には、SMBサーバの信頼性向上やSafari 5.1.6への更新がメインだが、AutomatorやTextEdit、Terminalなどいくつかのアプリケーションのアイコンが、今回のアップデートから最大1,024×1,024ピクセルに解像度がアップされているのだ。

ご存知のとおり、従来OS Xのアイコンは512×512ピクセルが最高の解像度とされていた。この仕様はSnow Leopard(v10.6)のリリースにタイミングを合わせて策定されたものだが(関連記事)、後日iPhone 4に搭載された「Retinaディスプレイ」でその意図が明かされた。MacでなくiPhone/iPadで先に実現されたのは、液晶パネルの単価など現実的な部分を考慮してのことだと考えられる。

OS X 10.7.4に収録された、Terminalのアイコン(ICNSファイル)。1,024×1,024ピクセルのイメージが新たに追加されている

その証拠に、Xcodeに収録の設定ツール「Quartz Debug」は、Tigerのときから1ピクセルを縦横2倍で描画する「HiDPIモード」をサポートしていた。つまり300dpi近い水準の高精細ディスプレイへの対応は織り込み済みで、アイコンの高精細化もその流れにある措置といえる。画素数が従来比4倍の1,024×1,024ピクセルのアイコンが登場した事実は、いよいよMacにRetinaディスプレイが搭載される時期が近づいたことの証拠なのだ。

Quartz Debugには、従来の1ピクセルを縦横2倍(4ピクセル)の情報量で描画する「HiDPIモード」が用意されている

次に来るのは「音」の高精細化か?

情報量が増せば緻密な画像を描けることは、iOSデバイスのRetinaディスプレイが証明したとおり。そして忘れられがちだが、「音」にも同じことが言える。実際、注意深くApple製品周辺を見渡せば、音の高精細化(ハイレゾ化)を予感させる証拠がいくつかある。

ひとつは、2009年リリースのiTunes 8.1で、デフォルトのエンコード条件がAAC/128kbpsからAAC/256kbps(iTunes Plus)に変更されたこと。ビットレートが2倍になったことは、単純計算でデータ量が倍増することを意味し、そのぶん音の描写力/再現性が向上する。iTunes Storeで取り扱う楽曲も、2007年から段階的にiTunes Plusへ移行しており、ここ日本でも今年2月からiTunes Plusに切り替えられた。

現在、iTunesデフォルトのエンコード条件はAAC/256kbpsに設定されている

もうひとつは、可逆圧縮コーデック「Apple Lossless(ALAC)」のオープンソース化(関連記事)。WAVEやAIFFといった非圧縮音源を劣化なく50~60%程度に圧縮できるうえ、iPodやiPhoneなどApple製オーディオ機器のほとんどが対応、しかもApple肝いりのAirPlayでそのままワイヤレス送信できる(AirPlayはオーディオデータをALACで送受信する)メリットもあることから、今後主要なオーディオフォーマットとなる可能性が高い。再配布の制限が緩いApache License 2.0が適用されることもあり、サードパーティー製品での採用も見込まれる。

オープンソース化を受け、Apple Losslessの再生に対応したAVアンプも登場し始めた(写真は「DENON AVR-2113」)

となると、今後iTunes Storeの標準オーディオフォーマットがALAC(44.1kHz)にシフトしていく可能性も出てくる。高精細化というトレンドが表示装置限定ではなく、サウンドデバイスも含まれると解釈すると、非可逆圧縮のAACではクオリティ面で限界があるからだ。ALACのオープンソース化は、そのための布石なのだろう。

可逆圧縮コーデックを採用した音楽ダウンロード販売は、現在のところコアなオーディオファン向けだが、そちらの世界はすでに192kHz/24bitなどというハイレゾ音源が人気だ。それに比べれば、音楽CDの44.1kHz/16bitというデータ量はかわいいもの、しかもALACには可逆圧縮機能があるのだから、iTunes Plusの次にくるフォーマットとされても不思議はない。オーディオファンに言わせれば、ハイレゾならぬ"ミドルレゾ"程度の情報量かもしれないが、それでもOS Xにおける音の水準が数ランクアップすることは確かだろう。

オーディオファン向けの音楽配信サイトは、すでにCD品質を上回るハイレゾ音源を中心にラインナップされている(画面はオンキヨー公式音楽ダウンロードサイト「e-onkyo」)