すでに先代を持っているというのに。
まだ一年も経っていないというのに。
買ってしまったのには訳がある。
買い替えを決意せざるを得ないほど高速になったから?でも速くなったのはCPUとメモリーで、ストレージはほぼそのままだし、GPUに至ってはわずかとはいえむしろ遅くなってるし。
キーボードバックライトが復活したから?確かにヴェトナム旅行の往復の飛行機の中ではそれが欲しくなった。けど便が割と空いていて、空席で横になって眠れちゃったし。
そもそも、私は量の変化だけで買い替えるタイプじゃないし。
しかし、今度の MacBook Air (Mid 2010; 4,2) は、二つの点で先代と決定的な世代差がある。
一つは、Thunderbolt。これはいわば PCI Express over DisplayPort で、拡張性がこれで一気にデスクトップ機なみに向上する上、Target Disk Mode も手に入る。しかしその恩恵を受けるには、現状において Thunderbolt 搭載 Mac か Thunderbolt Display か、はたまたPegasus RAIDが必要で、すでに「かつ」いまだ iMac (Late 2009; 11,1)を愛用している私にはすぐ活用できる状態にはない。
と、ここまでは発売開始前に「わかっていた」。わかっていたので「いつか買い替えるけど、まだ待つか」という状態だった。
しかしこれをヴェトナムで知った時、私は折れてしまった。
アップル - OS X Lionの復元機能 - Lionの復元機能、登場。ハードドライブが正しく機能しなくなった時や、OS Xが入っていないハードドライブをインストールしていた場合など、Macの問題が少し複雑になったら、インターネット復元機能が自動的に引き継ぎます。この機能はブロードバンドインターネット接続を利用し、AppleのサーバからLionの復元機能を直接ダウンロードして起動します。だからあなたのMacは、まったく同じLionの復元機能にオンラインでアクセスできる、というわけです。
そう。新 Air は世界初のクラウドリカバリー対応パソコンなのだ。
これは、自分の目で確認してみないと。
右は、実際にそれをやっているところ。我が家の回線が高速ということもあって、インターネットリカバリーが起動完了するまで3分とかからなかった。Snow Leopard以前にDVDで起動するより高速なのではないか。ちなみにリカバリーパーティションから起動した場合は、起動時間は通常の場合とほとんど変わらない。
しかし先代と当代には、決定的な違いがある。
このリカバリーパーティションすら存在しない場合、あるいは壊れている場合である。
先代までは、起動メディアをどこからか引っ張りだしてくるしかなかった。付属のソフトウェア再インストール用ドライブか、あるいはLionインストーラーから「非公式」に作成するインストールメディアか。
当代は、何もいらない。
正確には電源とブロードバンドインターネットが必要であるが、それこそ今や「どこにでもある」ものである。いや、我が家に限れば10年前からあった。しかし潜在顧客にそれがあることを「普通」に期待できるようになったのは、やはりここ数年のことである。
ここまで、待つか。
ここまで、やるか。
リカバリーメディアを1から0にするために。
リカバリーメディアの不在そのものは、PC、特にnetbookの世界ではむしろ当然ではある。しかしそこから受ける印象は Lion Recovery とは天と地の差がある。
404 Blog Not Found:tips - Lion - Recovery HD とその影響OS X v10.7 Lion で加わった新機能の一つが、リカバリーパーティション。わずか650MBだが、OSの再インストールにとどまらず、Time Machineからの復旧など、今までのリストアDVD/USBメモリーに出来ることがすべて出来る上にSafariまでついているので、復旧方法を調べたり人に尋ねたりすることも出来る優れもの。よくWintel Notebook についている「リカバリーしか出来ない」パーティションとは天と地の差がある。
インターネットを使ったリカバリーも、先例がないわけではない。たとえばSharp NetWalkerは、リカバリーメディアをネットを使って作成するようになっている。
最低の代物だった。
何度やっても途中で止まる。のでリカバリーメディアをリバースエンジニアしてみた結果、リカバリーメディア中のリカバリーイメージファイルが腐っていた。シャープが配布しているそれと、作成されたリカバリーメディア中のMD5ハッシュが一致しなかったのだ。幸いリカバリーメディアの作成プログラムはただのシェルスクリプトだったので、それを参考にリカバリーシステムを自作して復旧にこぎつけたが、これほどひどいUXは四半世紀程前に某ハンバーガー店でカメムシ入りのハンバーガーにかじりついて以来だ。
MacBook Airの「インターネット復元機能」は、それを見るがためにわざと起動ドライブを壊したくなるほどすばらしいものだった。
- cmd + opt + R を押しながら起動
- Wifiをプルダウンメニューから選択
- Wifiパスワードを入力
- あとはユーティリティ選択画面が表示されるのを待つだけ
Appleは技術は惜しみなく捨てるが、ユーザーは感動的なまでに捨てない。それが端的に現れているのが、この「ソフトウェア再インストール用ドライブ」だ。他社がコスト削減のために導入した「リカバリ領域」をAppleはかたくなに導入しなかった。それはメーカーの都合であって、ユーザーの都合ではないから。リカバリ領域を一度破壊したら、ユーザーだけでそれを元に戻すことはできないが、これならたとえ100% Windows化しても、あるいはUbuntu化しても、後でいくらでも買ったときの状態に戻すことができる。
そこまでしてつけたソフトウェア再インストール用ドライブを、わずか一代、一年弱で廃止するなんて。
そのためにここまで下準備をするなんて。
兎を狩るのに全力を尽くすと言われる獣の名がついたOSにこれほどふさわしい機能が存在するだろうか。
これを見れただけでも、入手した価値があった。
以下、雑評
- 強いて残念な点を一つあげるとすると、「アンテナが二本」だったこと。MacBook Pros Early 2011 は3本で450Mbps出るそうなので。iMacとMac miniはどうなのだろうか。ご存知な方はコメントを。
- 先代より確実に静かになっている点も指摘しておきたい。この点かなり心配したのだ(しかもBTOでCore i7にした)が、よい方に裏切られた。同じ負荷であれば確実にそう。先代はCPUが非力な分、「がんばっている」時にファンがかなり回ったのだ(この点はBTO版の方が顕著)が、当代は同じ負荷をかけても余裕な上、回った場合でもすぐ止まる。というか、Time Machine の初期バックアップの時以外、全然回らなかった。
- どんなベンチマークより、以下のスクリーンレコーディングが22.4FPSで録画できたことの方が驚き。iMac 27-inch, Late 2009 Core i7でさえ15FPSしか出なかったのに!
- リカバリーに関しては上記の通り。その代わりMac App StoreからダウンロードしたLion Installerから作成した起動SD Cardから起動しようとすると、進入禁止アイコンが出て止まる。この点においても MBA Mid 2011 は他とは世代が異なる。
これほど「軽い」パーソナルコンピューターは、先代含め今まで体験したことがない。軽さとは物理的なものに留まらない。心理的な軽さが心に占める重さはそれよりずっと大きい。Mobile Time Machine もさることながら、 Internet Recovery はハードウェアとソフトウェアを一緒に作っているからこそなし得た軽さ。
その上財布にも軽いとあっては、
フラグが立つとわかっていてもつい言ってしまいそうになる。
もう何も怖くない、と。
Dan the MacBook Air Owner for Two Generations in a Row
http://www.macotakara.jp/blog/index.php?ID=12551