医療者のグリーフ

先週「医療者のグリーフ」という研修に参加させていただきました。

なかなか興味のある内容でした。

普段、患者さんのグリーフケアに関してはある程度の時間をとっているのですが

私達医療従事者のグリーフとはどういうことをいうのか

皆目見当もつかず参加するまでは、頭の中が疑問符でいっぱいの状態でした。


講師の先生は現在オーストラリアのモナンシュ大学で看護・助産師学科講師として

ご活躍されていらっしゃる下稲葉かおり先生でした。

先生が医療者のグリーフに携わるようになったのはご自身が以前ホスピス病棟に勤務されており

その際の経験が大きく影響されていたそうです。

とても、ゆっくりとした穏やかな口調は確実に一人一人の心に

何かを投げかけてくださいました。

研修に行った後にステーションでもカンファレンスを開き

この研修について感じたことをざっくばらんに語り合いました。

それぞれに感じたことや学んだことは違っていましたが

一様に「とても良い研修だった」との感想でした。



“グリーフ”という言葉自体私が学生時代は使われていませんでしたから

まだまだ一般的には知られていないのだと思います。

そこで、ご存じない方のためにまずはグリーフの定義から。

対象喪失に対する精神的、行動的、社会的、身体的、
スピリチュアルな反応、その経験プロセスである。

グリーフは喪失に対する個人的な経験であり、喪失とは死のみをさすのではない。


この場合の「死のみをさすのではない」というところに少々引っかかりませんか?

さてグリーフの原因となる“死”以外の“喪失”とは一体何でしょうか?

それが、以下のようなことだそうです。

愛する人の死  ・引越し
・離婚、離別   ・転校
・ペットの死   ・失業
・病気      ・試験に失敗する
・身体の一部喪失 ・自尊心を失う

ここまで講師の先生のお話をうかがい、今まで何となく

分かっていたようで分かっていなかった“グリーフ”というものが

すっきりと理解できたような気がしました。

また、新しい言葉も多く学びました。

“コンパッション疲労”“コンパッションサティスファクション”
レジリエンス”“コーピングメカニズム”

がそれなのですが、(長くなってしまうので、詳細は割愛させていただきます)

どれも看取りというケアの中で

スタッフがそれぞれ意識しないままに感じたり、考えたりしている事なのだと思います。



うちのスタッフはそれぞれ経験年数も違いますが

今までの看護経験も人生経験も多種多様です。

ですから、在宅における看取りの看護も回数だけで言えば

かなりの開きがあるのです。



ただ、この研修で分かったことはそれぞれの看護師としての経験や

看取りの回数、人生経験の違いによりケアを行っていく過程で

それぞれが全く違う心理状態になっているのだということです。

それが、お互いに分かりあえたということもこの研修における

大きな収穫だったと言えるかもしれません。

訪問看護は一見、個人プレイのように見えますが実はチームプレイですから

お互いスタッフ同士の心が通じていないと良いケアは出来ません。



また、医療従事者も心を抱えている生身の人間ですから

人の死に向き合うことが“嬉しい”と思える作業ではないのです。

ですが、それぞれが本当にまじめに真剣にそして真摯に

「死」というものに向き合うことで必ず何かが良い方向に変わっていく、

そんな不確かなことを心に秘めて日々ケアを行っているような気がします。

看護師という仕事の重みと尊さを改めて感じることが出来た研修でした。
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