「プロメテウス」35点(100点満点中)
Prometheus 2012年 8月24日(金) TOHOシネマズ日劇他ロードショー 2012年/アメリカ/カラー/124分/配給:20世紀フォックス映画
監督:リドリー・スコット 脚本:デイモン・リンデロフ 製作:リドリー・スコット、トニー・スコット、デヴィッド・ガイラー、ウォルター・ヒル キャスト:ノオミ・ラパス マイケル・ファスベンダー シャーリーズ・セロン イドリス・エルバ ガイ・ピアース

宣伝が上手かった

この洋画不況の中、予想以上のオープニング成績を残して意外なヒットとなった「プロメテウス」は、宣伝戦略が成功した好例として記憶されるだろう。だがそれが、長期的に見て良いことなのかどうかは微妙である。

科学者のショウ(ノオミ・ラパス)は世界各地の遺跡の中に、地球外生命体からのメッセージが隠されていることを読み取る。やがて大企業ウェイランド社の出資により、宇宙船プロメテウスでそのメッセージが示す惑星を目指す。2093年、ハイパースリープから目覚めたショウたちクルーの前に、その惑星は姿を現すが、そこには彼らが予想もしない恐るべき世界が待ち受けていた。

「人類最大の謎、それは《人類の起源》」と、「人類の起源」に焦点を当てた宣伝戦術をみて、その大胆さに私は驚かされた。なぜならこのコピーは、ほとんどこの映画の中身と無関係といってもいいほど離れているからである。

おそらくこの映画を見に行く人の多くは、これが古典SF映画「エイリアン」の、リドリー・スコット監督自身による前日譚として企画されたことも、それがいろいろあってこういう半端な形にまとまったことも知らずに映画館に行くことだろう。

重厚な超A級大作のふりをしつつ、実際はB級怪物ホラーのごとき幼稚さをはらんでいることもまたしかり。

エイリアンマニアを喜ばせる数々のディテールや謎が仕掛けられ、それらをあえて放り投げたまま終わらせることで論争を巻き起こそうとしている事も、そしてそういう企画を喜ぶマニアックな人以外には、到底楽しめないタイプの作品であることも知る由はあるまい。

もしこれらを正直に世間に申請すれば、ただでさえ縮みきった国内の洋画マーケットで、20億30億なんて興収は望むべくもない。だから宣伝側が、万人が興味を持つ「人類起源」の重厚ミステリアスドラマとして広めたがった気持ちはよくわかる。なにしろ日本人はハリウッドでド定番の人気手法「前日譚もの」にはまったく興味を示さないし、映画を見てあれこれネットで議論する暇人もほとんどいない。

だがこういう騙しリンクの如き宣伝を繰り返していくと、やがて洋画を見る人は本当にいなくなってしまう。ここはなんとか皆で我慢して、苦しい時期を乗り切ってもらいたいところだ。

そんなわけで、宣伝会社の熱意ある若き社員たちを力いっぱい激励しているようで、あまり言ってほしくないことばかり書いている超映画批評である。

さて肝心の映画について。まず映像についてだが、さすがはリドリー・スコットということでクォリティ自体に安っぽさはない。ただしスペクタクルの見せ方は平凡で既視感たっぷり。今の時代こうした点で意外性をみせるのは映像派のリドリー・スコットでも無理ということか。残念ながら3D効果についても特筆すべき点はない。

エンジニアと呼ばれる創造者と人類、アンドロイド、そしてクリーチャーといった「創造主と創造物」の関係性は意図的にダブらせてあるが、そうした思わせぶりなテーマはこの映画だけでは完結せず、リドリー・スコット自身がやる気たっぷりといわれる続編に持ち越される。いったい創造主はなぜこんなものを作ったのか。劇中で語られるあるセリフがその答えなのか。それは今のところ観客の解釈にゆだねられる。

もしあなたがリドリー・スコットのSF映画が好きで、エンドロールを含む細部に隠された元ネタに反応できるほど傾倒するマニアであれば、この映画を楽しむことができるだろう。だが、そんなものには付き合いきれないと思うライトユーザーなら、この映画はきつい。危機意識なさすぎの経営者や1兆ドルの無駄遣いなど、笑ってしまいそうな終盤の流れ、突っ込みどころ満載の細部のあれこれにも不満が残るだろう。

ともあれ当記事を読んで自分がどちらのタイプに当てはまるか、よく判断してから映画館に向かえば後悔は無い。ここまで読んだあなたはもう宣伝文句や予告編に惑わされることもない、堂々たる情報強者である。



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