本書「知っておきたい 太陽電池の基礎知識」は、太陽光発電に関する「知識の幕の内弁当」として現時点で最も薦められる一冊。同著者による「知っておきたい エネルギーの基礎知識」とあわせて読むとなおよい。
目次 -
Si新書『知っておきたい太陽電池の基礎知識』概要齋藤勝裕 著 (サイエンス・アイWeb)より
- 第1章 太陽電池ってどんなもの?
- 1-1 太陽電池ってどんな形?
- 1-2 太陽電池ってなにをするもの?
- 1-3 太陽電池って永久にもつの?
- 1-4 太陽電池って故障しないの?
- 1-5 太陽電池のつくる電気って、電力会社のものと同じなの?
- 1-6 太陽電池システムの寿命は?
- 1-7 太陽電池っていくらかかるの?
- 1-8 太陽電池は原価償却できるの?
- 1-9 どこに設置したらよいの?
- 1-10 効果的に設置するには?
- 1-11 世界中のどこに設置してもよいの?
- Column 恒星の起源
- 第2章 太陽電池の長所は?
- 2-1 故障知らず
- 2-2 運転人員不要
- 2-3 エネルギー源(燃料)無尽蔵
- 2-4 製作資源は無尽蔵
- 2-5 消費地生産型発電
- 2-6 スキマ発電
- 2-7 廃棄物ゼロ
- 2-8 自然エネルギー
- 2-9 環境にやさしい
- 2-10 太陽電池のデメリットは?─ハード面
- 2-11 太陽電池のデメリットは?─ソフト面
- Column 恒星の運命
- 第3章 電気ってなんだろう?
- 3-1 電気は電子の流れ
- 3-2 物質は電子をもっている
- 3-3 電子は原子の中に収まっている
- 3-4 原子は原子番号の個数の電子をもつ
- 3-5 原子の性質は電子の個数で決まる
- 3-6 電子は電子殻の間を移動する
- 3-7 原子から電子が飛びだすとイオンになる
- 3-8 電池ってなんだろう?
- 3-9 電池のしくみ
- 3-10 いろいろな電池
- Column 太陽の運命
- 第4章 電気と光は同じもの?
- 4-1 熱・光・電気は同じエネルギー
- 4-2 光は電磁波
- 4-3 太陽光とエネルギー
- 4-4 電気を光に換える:水銀灯
- 4-5 電気エネルギーが光エネルギーに変わる
- 4-6 電気発光と発光の色
- 4-7 光発電のしくみ
- Column 地殻の構成成分
- 第5章 太陽電池のしくみって?
- 5-1 絶縁体と良導体
- 5-2 金属の伝導度
- 5-3 半導体
- 5-4 真性半導体と不純物半導体
- 5-5 不純物半導体─n型半導体
- 5-6 不純物半導体─p型半導体
- 5-7 太陽電池の構造と発電機構
- 5-8 太陽電池をつくるもの
- 5-9 pn接合の電気状態
- 5-10 光照射で起こること
- Column レアメタルの重要性
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- 第6章 シリコン太陽電池ってどんなもの?
- 6-1 太陽電池にはどんな種類があるの?
- 6-2 シリコン太陽電池って?
- 6-3 シリコンってたくさんあるの?
- 6-4 太陽電池に使うシリコンはどんなもの?
- 6-5 シリコンの精錬法は?
- 6-6 高純度シリコンの製造法は?
- 6-7 結晶シリコンとアモルファスシリコン
- 6-8 単結晶シリコンと多結晶シリコン
- 6-9 単結晶シリコン太陽電池と多結晶シリコン太陽電池
- 6-10 単結晶球状シリコン太陽電池
- 6-11 アモルファスシリコンのつくり方
- 6-12 アモルファスシリコン太陽電池
- 6-13 薄膜シリコン太陽電池
- Column レアメタルが希少な理由
- 第7章 化合物太陽電池ってどんなもの?
- 7-1 元素と化合物
- 7-2 ガリウム−ヒ素(Ga−As)太陽電池
- 7-3 ガリウム−ヒ素/インジウム−リン太陽電池の特色
- 7-4 カドミウム−イオウ−テルル(Cd−S−Te)太陽電池
- 7-5 2種以上の元素からなる太陽電池
- 7-6 化合物太陽電池のつくり方
- 7-7 化合物太陽電池の特色
- 7-8 量子ドット太陽電池の基礎
- 7-9 量子ドット太陽電池の実際
- Column 単結晶シリコンとルビー
- 第8章 有機太陽電池ってどんなもの?
- 8-1 有機物と無機物
- 8-2 有機太陽電池の特色
- 8-3 有機太陽電池の長所と短所
- 8-4 有機太陽電池の種類
- 8-5 有機系半導体
- 8-6 有機薄膜太陽電池
- 8-7 有機色素増感太陽電池の基本
- 8-8 有機色素増感太陽電池の実際
- 8-9 有機色素
- Column C60フラーレン
- 第9章 太陽電池システムの改良
- 9-1 タンデム型太陽電池
- 9-2 集光型・反射防止型太陽電池
- 9-3 エネルギー集約型太陽電池
- 9-4 太陽電池モジュール
- 9-5 シースルー太陽電池
- 9-6 カラー太陽電池
- 9-7 フィルム型太陽電池
- 9-8 生体再現型太陽電池
- Column 有機太陽電池と有機EL
- 第10章 太陽電池の経済的価値
- 10-1 エネルギー事情
- 10-2 太陽電池の技術的発展
- 10-3 太陽電池の原料の入手
- 10-4 太陽電池の生産コスト
- 10-5 組み立て・設置コスト
- 10-6 太陽電池の発電コスト
- 10-7 太陽電池市場の実績
- 10-8 太陽電池市場の将来規模
- 10-9 太陽電池の将来戦略
- 10-10 大規模太陽光発電
- Column 宇宙太陽発電
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名著「新・太陽電池を使いこなす」と最も異なるのは、その後の技術革新が反映されていること。特にシリコン以外の太陽電池に関して、同著ではさわりしか紹介していなのに対し、本書では独自の章を割いて取り上げている。
太陽電池の基礎知識に関しては、タイトルもそのままの本書にまかせて、ここではなぜ太陽光発電なのか、特に日本ではそうなのかを紹介したい。
NIMBYフリー
NIMBYとは"Not in my backyard"の略。社会的に必要でも、自宅の裏庭に置くには不快な施設をどうするかを語る時によく使う言葉であるが、太陽光発電にはこれがない。「我が家を発電所」にしたければ、エンジン駆動の非常用発電機を除けば事実上の一択ですらある。風力ですら景観や騒音の問題があり、NIMBYフリーではないことを考えると、この一点だけでも太陽光発電が21世紀の最重要発電手段たる理由となる。
ムーアの法則が味方
「ムーアの法則」というのは、「集積回路上のトランジスタ数は18ヶ月ごとに倍になる」というものであるが、そこから転じて、コストパフォーマンスが幾何級数的に向上するありさまを示すのによく使われる言葉となった。
発電の場合、それは「1kWあたりのシステム価格」ということになるが、本書211ページのグラフにまさにそのありさまが示されている。1993年に400万円弱だったものが、2005年には60万円程度。ただしそこからしばらく停滞している。これは日本において政府補助が打ち切られた年に当たるが、これ以外でも読者は本書でそれが日本の太陽光発電が他国に抜かれるきっかけとなったことを知るだろう。
要するに、日本はあと一歩というところで手を抜いてしまったのだ。
それでも太陽光発電が、すでに家庭用電力としてはブレイクイーブンしていることはもっと知られてもよいし、未来予測ではなく実勢ベースで効用を見積もれるところまで来ているのは知っておくべきだろう。
受給マッチ
今では誰もが知っているように、電気は貯めにくい。必要な時に必要なだけ作っているのが現状だ。原発がその逆の特性を持っていて、太陽光発電は、その特性にぴたりと合致する。この事は過去にも繰り返し主張してきた。
自然エネルギーの可能性と限界 風力・太陽光発電の実力と現実解 - 情報考学 Passion For The Future自然エネルギーの可能性はよくわかるが、現状1%に満たない自然エネルギーを10年や20年で、主力の代替にするのは現実的には難しいのではないか、とも思える。
全然わかっていない。10年や20年で、それまでは「知る人ぞ知る」技術だったものが「みんな使っている」技術になった例を、我々はいくつも知っているではないか。ブロードバンドインターネット然り、携帯電話然り。太陽光発電でそれが成り立たない理由こそ、私には思い浮かばない。
太陽光発電にとっての2011年は、インターネットにとっての1995年になるのではないか。
Dan the Powered Blogger
発電所で作った電気を現在の交流送電方式ではなく直流送電方式で送り、家庭に届く前の部分で再度交流にすればだいぶロスが減ります。原発や太陽光発電の議論の前に送電方式の見直しに時間やコストを使えば良いじゃんか、と思うのですが、これは無理なのでしょうか?