ロシアの自動車産業は消滅し完全な輸入車市場に取って代わられるのも時間の問題、などと言われながら、しぶとく生き延びているのがロシアの自動車産業である。

 2011年11月の新車販売速報を見ると、売り上げ1位から10位までに入っているのは、すべてロシアで現地生産されているモデルばかり。それも「Lada」のように20万ルーブルから40万ルーブル(50万円から100万円)で手に入るモデルが上位を占めている。

中流層が厚み増し低価格車が売れる

表1:ロシアの新車販売速報(2011年11月)(ロシアNIS貿易会 MoscowBusinessNewsより)

 日本車の評判は大変高いし、日露貿易における日本からの輸出の半分は自動車が占めることを考えると、販売モデルの上位10位に日本車が出てこないのはちょっと解せないが、事実はこの通りである。この自動車の販売動向にロシアの中流階級の成熟が見られる。

 モスクワ郊外に林立している巨大なショッピングセンターには必ず、アシャンをはじめとする大型スーパー(ハイパーマーケットと呼ばれる)が中核テナントとして入居している。

ハイパーマーケット「アシャン」のずらりと並んだレジ、多いところでは100台ものレジが同時稼働していて、圧倒される

 食品を例に挙げると、品揃え、価格など、どの点から見ても、市内の食品店や小型スーパーとは比較にならないほどの魅力がある。

 大きなカートに1週間分の食品を満載して100台以上もあるレジに行列を作る消費者の姿は、我々の持つ従来のロシアのイメージをはるかに超えるものがある。

 アシャンにしても、ほかのハイパーマーケットにしても、クレジットカード払いは受け付けず、現金払い、というのが原則だったが、最近アシャンではクレジットカード使用が開始され、小口消費者金融がいよいよ本格的な普及時期に入ったことを感じさせる。 

 そのような巨大ショッピングセンターには、これまた巨大な駐車場が付属していて、土日の午後ともなると、2000台、5000台収容というご自慢のパーキングが満車になってしまう。カートに満載した購入品を自宅に持ち帰るには、どうしても車が必要だ。

 そしてその車は、贅沢や趣味のための車ではなく、生活のための車、ということになる。