2010年11月29日
(1238)ホルヘ・グリッファとカルロス・テベス
その子のプレーを見て、私はジュニアの監督に言ってやった。
『マラドーナみたいな子ではない。これはマラドーナだ!』とね」
アルゼンチンユースサッカーの父が語る、『成功の条件』ホルヘ・グリッファの定義(GIANT KILLING extra vol.03)
「サッカーの基礎は5つ。パス、トラップ、ドリブル、ヘディング、シュート。
当たり前のように聞こえるだろう?でもサッカーとは、どうゆう競技なのかを理解するには、この5つの基礎を徹底的に学び取らなくてはならない。これができなければサッカーは出来ないのだから。」
ところが、プロ選手になることを夢見て入団テストを受けにくる若者の中には、5つの基礎のうち、たった一つしかできない選手もいる。バティストゥータがそうだった。
「あの子はサッカー選手になれるような身体つきでもなかった。お尻が大きくて、どちらかというとオフィスワーカーに向いていたと思う。
だがとにかく、ヘディングが上手かった。ボールはとんでもない方向に飛んでいったがね」
そこでグリッファはバティストゥータにヘディングとシュートの照準を合わせる練習を徹底的にやらせることにした。短所を補うことよりもストライカーとしての長所を伸ばしてやることで、体型のハンデを感じさせないまま自信を与えたのである。
「まったく同じプレーが存在しないのと同様に、まったく同じ選手もありえない。選手ひとりひとりに適した指導をしてやることが大切であり、そのためには指導する側に経験と学習力が必要になってくる」
グリッファの頭の中には「理想的なプレーヤー」の条件が定まっている。
「テクニシャンで器用で、強く、コーディネーション能力があり、フィジカル面でもメンタル面でも速く、インテリジェントで感情のバランスが取れていること。これら全ての要素を満たしていれば理想的な選手といえよう」
コーディネーション能力とは、すべての動きを上手くコーディネートする能力を指す。グリッファは、コーディネーション能力と強さを対にして見ており、一人の選手には、なかなか共存しない、この2つの要素を兼ね備えている素質を高く評価するという。
グリッファによれば、現在のアルゼンチン代表でこれらの条件を全て満たしているのはメッシではなくテベスだそうだ。
メッシの場合は、強さとインテリジェンスの面でやや劣るというが、だからといって、テベス以下だというのではない。
「メッシには他の選手にはない速さとテクニックがあり、それを最大限に活かすことができるかどうかは、チームを作る監督の手腕次第なのだよ」
《ホルヘ・グリッファ》
リオネル・メッシ(FCバルセロナ)がジュニア時代に所属していたことで知られるニューウェルス・オールド・ボーイズで、1972年から23年間にわたってユース世代の育成に携わり、その後10年間は名門ボカ・ジュニオルスの下部組織の総監督を務めたホルヘ・グリッファは、それまでアルゼンチンには存在しなかった下部組織における指導モデルを作り上げた存在。
ホルヘ・バルダーノやガブリエル・バティストゥータをはじめ、グリッファが発掘・指導した名選手は枚挙にいとまがなく、現代表にもカルロス・テベス(マンチェスター・シティ)、ワルテル・サムエル(インテル)、ガブリエル・エインセ(オリンピック・マルセイユ)、ニコラス・ブルディッソ(ASローマ)らを送り込んでいます。
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