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菅政権は機能しているか?
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情報の真空地帯

福島第1原発4号機へ注水するコンクリート用ポンプ車[東京電力提供]=2011年3月22日【時事通信社】

 地震が発生した11日の夜、政府は福島第1原発で放射能漏れの危険があると発表し、原子力緊急事態宣言を発令した。翌12日午後、原発1号機で突然、爆発。その後、2~4号機も爆発や火災を起こし、放射能漏れが現実のものとなった。

 この間、首相官邸の対応は混乱をきわめた。典型的だったのは、原子炉と燃料プールを冷却するための放水作業である。17日、政府が最初に試みたのが自衛隊ヘリによる上空からの放水。だが、霧状になった水は原発冷却に効果があるようには見えなかった。次に警視庁、自衛隊、東京消防庁が順次投入され放水は徐々に効果を上げ始めた。22日に切り札として登場したのが生コン圧送機である。工事現場で高所から生コンクリートを流し込むために使用する装置で、これなら原子炉やプールを狙ってピンポイントで水をかけたり、注入したりすることができる。

 この圧送機による放水を最初に提案したのは公明党だった。18日に圧送機メーカーから「圧送機が放水に使える」との情報が伝えられ、ただちに首相官邸に連絡し、瀧野欣彌官房副長官に資料を渡した。冷却作業に四苦八苦していた首相官邸はすぐにこの案に飛びつき、19日朝、圧送機は横浜から現地に向けて出発。22日から放水作業が始まった。現時点で、かなりの効果を上げているとみられている。

 圧送機投入は公明党のお手柄だったわけだが、当の公明党幹部は少し首をかしげて、こう言っている。
「こういう圧送機が国内に存在していることは、建設現場に詳しい国土交通省ならば絶対に知っていたはずだ」

 しかも、公明党が首相官邸に提案するよりも随分前の段階で、インターネット上では、生コン圧送機が有効であることが指摘されていたのだ。

 官僚たちが知っていたのに官邸に伝えなかったとすれば、職務怠慢である。ただ、これまで付け焼き刃の「政治主導」を唱え、官僚たちとの信頼関係を築いてこなかった民主党政権側にも問題がある。また、ネット上でいくらでも流れていた圧送機の話に本当に気がつかなかったとすれば、今の首相官邸は情報の真空地帯にいることになる。これは国家の危機管理上恐るべきことである。

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