日中関係「第1次大戦前の英独」 首相発言がダボスで波紋
安倍晋三首相は22日の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、外国メディア関係者と懇談した際、日中関係を第1次世界大戦で戦う前の英独関係に例えて説明した。経済的に深く結び付く日中両国の衝突があってはならないとの真意は伝わらず、英紙など外国メディアは「1914年の英独に似ていると発言した」と報じた。
首相はダボス会議でメディア関係者だけでなく、世界の経営者らと意見交換し、経済政策を力説した。ただ、各国の出席者は中国や韓国が反発した昨年12月の靖国神社への参拝に関心を寄せた。
首相と対談したフォーラムのシュワブ会長は「靖国参拝で近隣諸国との関係が悪化しているように思える」と質問した。首相は「戦死者が祭られている場所で、不戦の誓いをした。中国や韓国の人々を傷つけるつもりは毛頭ない」と説明した。
外国メディア関係者との懇談では、記者から「日中が武力衝突に発展する可能性はないのか」と問われた。首相は「今年は第1次世界大戦100年を迎える年だ。当時英独は多くの経済的関係があったにもかかわらず第1次世界大戦に至った」と指摘。そのうえで「質問のようなことが起きると、日中双方に大きな損失であるのみならず、世界にとって大きな損失になる」と強調した。
だが、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は「首相が武力衝突は論外だと明言しなかった」と報道。「何度もダボス会議に参加してきたが、最も不安にさせられた経験だった」との記者の感想も伝えた。英国放送協会(BBC)は「首相は経済的に相互依存する日中は1914年の英独に似ていると認識している」と報じ、「日本の指導者が現在の日中関係について100年前の英独を思わせた。衝撃的だ」とした。
誤解されて報じられたことを受け、菅義偉官房長官は記者会見で、首相発言を正確に紹介。「(英独が戦った)第1次大戦のようなことにしてはならないという意味で言った」と釈明した。
一方、首相は23日、日本国内の中国語新聞「中文導報」「東方新報」などにメッセージを送り「戦後68年間、ひたすら平和の道を歩んだ」と訴えた。「日中両国は今後さらに手を携え、地域と国際社会全体の発展のために責任を果たしていかないといけない」と呼びかけた。