水没した都市のための「浮遊式ユニット」

海面上昇が懸念されている中、浸水した都市に浮遊式ユニットを提供するプロジェクトが進められている。避難所となるほか、食料、衛生設備など必要不可欠なものを備えるものだ。
水没した都市のための「浮遊式ユニット」
ジャカルタのスラム。Photo: Jonathan McIntosh/wikimedia commons

浸水した都市のスラム街に、柔軟性のある浮遊式都市空間を提供するプロジェクトが、2012年度の「建築と海面上昇(2012 Architecture & Sea Level Rise Award)」を受賞した(リンク先で各種の画像が閲覧できる)。

この浮遊式都市構造は「シティ・アプス(City Apps)」と呼ばれる。避難所になるほか、食料や衛生設備など必要不可欠なものが搭載された移動式空間を提供することにより、都市インフラの穴埋めができる

シティ・アプスは、コーエン・オルトゥイスらWaterstudioチームの作品だ。同チームは、水上の生活・保養空間の建築を専門分野としている。

受賞したプロジェクトは、浸水したスラム街が直面する問題に焦点を当てている。水辺にある都市の貧困地域は、人口密度が高く、公共サービスや医療などを利用しにくい。こうした特定の問題を念頭に置いて、Waterstudioチームは、食料や衛生設備、避難所、エネルギー源のニーズに応える、賃貸可能な浮遊式都市構造を考案した。

シティ・アプスは今回の賞金を使って、バングラデシュのダッカにある浸水したスラム街、コライルで初めて実際に建設される予定だ。

※世界が今後の温暖化ガス排出を制御できたとしても、100年から200年以内に海水面は数m上昇し、「水没都市」が世界各地で大量に出現すると予測されている(日本語版記事)。

TEXT BY PHILIPPA WARR

TRANSLATION BY MINORI YAGURA/GALILEO