マーケティングの名門・ノースウェスタン大学ほか、全米トップスクール37校の教科書である『ザ・マーケティング【基本篇】』『ザ・マーケティング【実践篇】』。この夏、1975年の初版以来、40年近く読み継がれた最新第8版がついに邦訳された。
本書を、「混迷深まる時代、これからのビジネスに必要な共通言語ともいうべきマーケティングノウハウがぎっしり詰まった本」と評する神田昌典氏に、「フリーエージェント社会」を切り口に、リアルなビジネスの最前線を語ってもらう連載最終回。
誰もがビジネスのできる「フリーエージェント社会」に、我々はどう立ち向かうべきなのか。

【最終回】<br />フリーエージェント社会でしぶとく生き残るために神田昌典(かんだ・まさのり)
上智大学外国語学部卒。外務省経済局に勤務後、ニューヨーク大学経済学修士(MA)、ペンシルバニア大学ウォートンスクール経営学修士(MBA)取得。その後、米国家電メーカー日本代表を経て、経営コンサルタントに。多数の成功企業やベストセラー作家を育成し、総合ビジネス誌では「日本一のマーケッター」に選出されている。著書に、『全脳思考』『60分間・企業ダントツ化プロジェクト』『あなたの悩みが世界を救う!』『成功者の告白』『人生の旋律』『非常識な成功法則』、監訳書に、『ザ・コピーライティング』『伝説のコピーライティング実践バイブル』等がある。

ロングセラー『フリーエージェント社会の到来』から10年

「フリーエージェント社会」とは、簡単に言えば「雇われない生き方」、つまり会社に所属せず、個人でビジネスを立ち上げ、収入を得るという働き方を指しています。

『フリーエージェント社会の到来』(ダイヤモンド社)の著者、ダニエル・ピンク(→私と同い年です)は、米国の労働人口の4人に1人が、この「雇われない生き方」を選んでいる(2002年刊行当時、原書は2001年刊)としていますが、発刊から10年経ったいま、この流れは早晩、日本にも到来するでしょう。

  フリーエージェントという、企業に雇われない生き方ができるのは、前回申し上げたように、広告が極めてユーザーフレンドリーになり、かつインターネットが社会インフラとなって、誰もが容易にビジネスに参入できるようになったからですが、これに加えて、マーケティングを行ううえで有用なツールが、いまや無料で提供されているという事実にも、目を向ける必要があります。

グーグルの高度な分析ツールが、誰でも自由に使える

  たとえば、グーグルアナリティクスというウェブ解析ツールをご存じでしょうか。
  マーケティング関係者の間で、このツールを知らない人は皆無と言ってもいいかと思います。
  問題は、使いこなせている人がほとんどいないということなのですが、それでも世界最高のツールを「無料」で提供しているという事実は、驚愕に値します。

  金融の世界で言うならば、ゴールドマン・サックスやメリルリンチといった、世界でもトップクラスの金融機関が使っている、最優秀の運用モデルを、無料で個人でも利用できるというイメージです。そのくらい、これはすごいことなのです。

  この手のマーケティングモデルを開発している人は、ひたすらモデルを開発することに関心があるのであって、成約率やコンバージョンがどのくらいで、直帰率(ウェブサイトの最初の1ページで離脱してしまった割合)がどうなのかといった数字や分析結果を見るのは好きでも、何が売れているのかということには興味がなく、お客様の反応やどういうキャンペーンを、どういうオファーで提供すればいいのかということにも無関心です。

  そういう事実はあるけれども、一つ確実に言えるのは、このツールが、グーグルによって世界中から集められた最も優秀な頭脳によってつくられているものであり、現時点でこれを使いこなせる人がほとんどいないけれども、なかには真剣に使いこなそうと考えている人が徐々に表れてくるということです。

  そして、そういう人たちが、2%の勝ち組になるのです。