WiMAX製品の相互接続テストやWiMAXの技術仕様を定めるWiMAX Forumは2012年10月30日(米国時間)、米国シカゴで開催しているモバイル通信の展示会「4G World」(旧WiMAX World)において、新たなWiMAXのロードマップを明らかにし、新バージョン「WiMAX Release 2.1」を発表した。

 Release 2.1は、UQコミュニケーションズなど多くのWiMAX事業者が採用するIEEE 802.16eベースの「WiMAX Release 1.0」と、これを進化させたIEEE 802.16mベースの「WiMAX Release 2.0」(WiMAX 2、関連記事)を包含し、さらにExtendedモードとして、3GPPのTD-LTEに関連する無線とコア・ネットワークの一部規定を取り入れた仕様という。つまり、Extendedモードを採用したWiMAX Release 2.1のネットワークでは、3GPPベースのTD-LTE端末が収容できるようになる。

 WiMAX ForumはRelease 2.1について、「増え続けるデータに対するニーズを柔軟に満たすため、WiMAX Forumでは複数のブロードバンドアクセス技術と共存・調和する道を選んだ。WiMAXエコシステムの進化を継続できる」としている。

 WiMAX陣営は昨今、同じTDD(時分割複信)技術を用いるTD-LTE陣営の勢いに押されているのが実情だ。例えば、当初はモバイルWiMAXの有力事業者の一つであった米クリアワイヤは、モバイルWiMAXからTD-LTEへのシフトを進めることを明言している(関連記事)。WiMAX Forumでは、ピーク速度を165Mビット/秒(20MHz幅、4×4 MIMO、上下比率5:3の場合)に向上したWiMAX 2を仕様化するものの、導入を検討する事業者はUQコミュニケーションズやマレーシアのYTLグループなど一部にとどまっていた(関連記事)。

 今回のWiMAX ForumによるTD-LTE互換モードの追加は、TD-LTEのエコシステムを利用しTD-LTEデバイスを取り込みつつ、既存のWiMAXシステムの運用を進めるという、WiMAX陣営の生き残りをかけた現実的な選択といえる。

 なおKDDIの田中孝司社長は、10月17日に開催した端末発表会の席上で「(UQコミュニケーションズが新たに2.5GHz帯の追加周波数帯の割り当てを受けたら)、WiMAX 2みたいなものを導入していきたい」と発言している。この発言にある“WiMAX 2みたいなもの”とは、TD-LTE互換モードを備えた今回のWiMAX Release 2.1を指している可能性が高い。

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■変更履歴
当初、第2段落で『IEEE 802.16eベースの「WiMAX Release 2.0」』としていましたが,正しくは『IEEE 802.16mベースの「WiMAX Release 2.0」』です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2012/10/31 11:00]