筆者はここ5年ほど、日経NETWORKが毎年実施しているWebアンケート「ネットワークの実態調査」にかかわっている。今年も例年通り4~5月にかけて、企業のネットワーク担当者を対象として実施した。ITproの読者をはじめ1115件の回答を得ることができた。ここではネットワークトラブルに関して、最新の「ネットワークの実態調査 2011」の集計結果と過去2年の調査結果を比較し、「変化のあるところ」と「変わらないところ」を紹介したい。

トラブルの遭遇率が高まっている

 過去3年分の調査結果で明確な変化のある項目は、「ネットワークトラブルに遭遇しましたか」という設問に対する回答だ。各年で母数にバラつきがあるので、絶対数ではなく全回答数に対する割合を見ていただきたいのだが、明らかに高くなっている(図1)。最新の2011年調査結果では、実に「4人に3人」がトラブルに遭遇したことになる。

図1●企業のネットワーク担当者がトラブルに遭遇した割合
図1●企業のネットワーク担当者がトラブルに遭遇した割合

 変化が見られる項目はもう一つある。トラブルが判明してから解決するまでの「時間」だ。2009年は調査項目としていなかったので、2010年と2011年の集計結果を比較すると、「数時間」で解決したトラブルの割合が高くなっている(図2)。前述の結果と合わせて考えてみると、比較的短時間で解決するトラブルの発生率が高まっているということになる。トラブルを発見したら、すぐさま迅速な復旧に努めるネットワーク担当者の姿が目に浮かぶようだ。

図2●トラブルが判明してから解決までに要した時間
図2●トラブルが判明してから解決までに要した時間

 一方、傾向が変わらないのが、トラブルの「原因」と「解決手段」だ。回答数の上位三つは2009年、2010年、2011年のいずれの調査でも同じ結果になった。そこで最新の2011年調査結果を紹介しよう。

 2011年調査で「トラブルの原因は何でしたか」という設問の回答は、「ハードウエアの不具合」が約4割でトップだった(図3)。続いて「LANケーブルの接続ミスなど、ハードウエアの人的ミス」が約3割、「サーバーの設定ミスなど、ソフトウエアの人的ミス」が約2割と人的ミス関連が上位を占めた。ネットワーク運用の現場で「人的ミスは避けれない」とはよく言われるものの、それを裏付ける結果となった。

図3●トラブルの原因
図3●トラブルの原因

 では、どのような人的ミスがあるかというと、選択肢にもあるが、代表的なものにLANケーブルの誤接続がある。これがもとで発生するトラブルが「ループ構成によるブロードキャストストーム」だ。ネットワーク担当者なら、ブロードキャストストームの発生で業務に深刻な影響が出たという事故を、体験したことや耳にしたことがあるだろう。最近では東京消防庁の119番通報トラブルが記憶に新しい。いつになってもなくならない典型的なトラブルと言える。