離婚理由の定番「性格の不一致」に対処法はあるか
熟年離婚「私の選択」(2)
筑波大学大学院教授で、多くの夫婦のカウンセリングも行う宗像恒次さんは、「夫婦の性格が合わないのは当たり前」と言い切ります。「人間は自分にないものを持つ人に魅力を感じるので、夫婦は違う気質のことが多い。むしろ、ないものを補完し合うから、カップルが成立するのです」。
宗像さんは、人格は遺伝子の影響を受けていると考え、行動遺伝学や類人猿の動物行動学も研究し、人間が持つ気質は、人格面とストレス面からそれぞれ3タイプに分類できると言います。(3つの人格気質は下の囲みを参照)。
1 ヒーロー・ヒロイン気質
特徴 陽気でユーモアがあり社交的だが、さびしがり屋で孤独を嫌う
期待できること
●頭の回転の速さ、気軽な付き合い
●テンポのいい会話
期待できないこと
●謙虚な態度
●浮気をやめること
2 親分・世話焼き気質
特徴 面倒見がよく、義理堅くて頼れるが、変化に弱く融通が利かない
期待できること
●礼儀正しさ、深い愛情
●心の落ち着き
期待できないこと
●カジュアルな付き合い
●茶化し合う楽しい会話
3 マイペース気質
特徴 本音を大事にし、自分の世界を持つ。真面目だが、だまされやすい一面も
期待できること
●一途な愛、正直なこと
●孤独に耐えること
期待できないこと
●リーダーシップ
●ごますりやおべっか
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「気質は生まれ持ったもので、容易には変わりません。相手の気質から『期待してもいいこと』と『期待できないこと』を理解し、過度の期待を持たなければ、失望することはなく、逆に相手を深く理解することができます」。
宗像さんはさらに「夫婦の関係には自分と親との関係が反映されている」とも指摘。「親の顔色をうかがうように育つと、愛されるために服従したり、褒められようとしたり、あるいは弱い親を守ろうとする行動をとりますが、結婚しても相手に同じことをしてしまいがち。そんな行動をとるうちに、結婚相手に親の影を投影するようになるのです」。幼少期、愛されないのではと不安になると、脳内には怒りや悲しみを感じたときに分泌される神経伝達物質「ノルアドレナリン」が増えるといいます。
幼少期の経験は潜在意識の中に残っています。夫の態度にイライラしたり、不安や不快になる人は、自分の父親、母親の嫌な面を夫の言動や態度の中に感じて、敏感に反応してしまうとも考えられるのです。
■「愛されて育った」と考える
心の中の不安を消すには、想像でいいので、「自分は愛されて育った」と感じることが有効だそう。宗像さんが提案しているのが「代理顔表象」という方法。見ていると気持ちが穏やかになれたり、開放感を感じられたりする「顔」の写真や絵を探し、よく見える所に張るなどして「私はこんな表情の親に愛され、守られて育った」と念じてみるのです。
顔は、アニメやマンガのキャラクター、仏像画などでもいいのですが、憧れの韓流スターといった、胸がドキドキするような顔では効果が期待できないそうです。「親の代理顔表象を見て、ずっと愛されて育ったと想像するだけで気持ちが落ち着きます。すると一緒に暮らす相手に対しても自然と優しくなり、不快感やイライラも薄らいでくるでしょう」(宗像さん)
(ライター 中津海麻子、構成 日経ヘルス プルミエ 村上富美)
[日経ヘルス プルミエ2010年11月号]