冷却機能、薄氷の回復作業続く 福島第1原発
東京電力福島第1原子力発電所の1~4号機で冷却機能を回復させる作業が難航している。4基とも外部電源とは接続したが、原因不明の黒煙や、現場の放射線量が多すぎることで、作業は遅れている。本来の冷却装置が元通りに動くかどうかも定かではなく、復旧時期はいまだ見通せない。薄氷を踏む作業が続いている。
3号機 被曝・黒煙で「作業遅れ」
3号機は22日に中央制御室の照明が点灯し、1~4号機の中で最も冷却機能を回復させる作業が進んでいた。消火ポンプで海水を入れて炉心を冷やす応急措置に代わり、真水を使う冷却装置に切り替えるのが当面の目標だった。海水だと不純物が多く、機器類に悪影響を与えるからだ。
だが24日、タービン建屋で電源用ケーブルを敷設していた作業員が放射線を浴び、作業を中断した。
高い放射線量が復旧作業を阻むようだと、予定通りの場所から真水を送り込めない。「別のルートも含めて検討する」(原子力安全・保安院)とされ、作業が振り出しに戻る可能性がある。
東京電力によると、協力会社の作業員3人が被曝(ひばく)した。20~30歳代の男性で、24日午前10時半ごろから正午ごろまで作業に就いていた。現場から戻った後、身に付けていた放射線計測器を調べたところ、放射線量は173~180.07ミリシーベルトに達した。2人は、やけどのような症状が出るベータ線熱傷を両足の皮膚に負った疑いがあり、病院に搬送された。
現場の足元に放射性物質を含む水がたまっていた。東電によると、水の表面からは毎時400ミリシーベルトが計測された。大気は同200ミリシーベルトだった。
厚生労働省は15日、福島第1原発の緊急作業で受ける放射線量の限度を100ミリシーベルトから250ミリシーベルトに引き上げている。東電は今回、20ミリシーベルトで作業を中断するように指示していたが、なぜ値を超えたかは不明という。
23日午後にも原子炉建屋から黒煙が発生し、作業は半日以上遅れた。
24日中にも冷却装置の試運転を目指してきたが、24日午後に記者会見した東電の武藤栄副社長は「全体としては遅れている」と話した。
2号機 温度など安定、部品交換急ぐ
2号機は原子炉圧力容器の温度も圧力も安定した状態が続いている。使用済み核燃料プールの水温も24日午後5時でセ氏40度となり、通常の状態に近づいた。
だが、原子炉内を冷やす機能を取り戻す作業は難航している。
いち早く外部電源と接続したものの、モーターやポンプなどの損傷が大きい。ポンプの状態などを改めて調べている。交換部品の特定やその後の試運転には時間がかかる。
計測機器につなぐ電源ケーブルの復旧なども急ぐが、中央制御室への通電は早くても25日だ。
タービン建屋では、18日午前に2人の作業員がそれぞれ5分間で50ミリシーベルト、60ミリシーベルトを浴び、作業の中断を余儀なくされた。放射線量が高く、現在も近づけない状態が続く。
1号機 なお高い圧力、保安院「注視」
1号機は一時的に原子炉圧力容器の上部と下部で温度がセ氏約400度まで上昇したが、24日午後には上下とも同200度前後に下がった。だが、格納容器の圧力は同じ時点で約3.6気圧と高く、使用上の最高圧力(約5.3気圧)に迫る。温度や圧力が不安定な状態が続く。
経済産業省原子力安全・保安院は「今は落ちついた状況にあるが、データはよくみていく必要がある」と話す。容器の破損を避けるため圧力を逃がす弁を開く手段もあるが、放射性物質を含む水蒸気が外に出てしまう。現時点で必要はないとみているもようだ。
24日午前、中央制御室の照明が点灯した。今後は冷却システムを駆動させるポンプの復旧を急ぐ。
4号機 燃料プール、放水を再開
4号機は「生コン圧送機」による放水作業を24日に再開した。使用済み核燃料プールに入る燃料の本数が多く、過熱のリスクが依然残る。保安院はプールの温度がセ氏100度に達している可能性があるとの見解を示していたが、そのデータが不確かなことを24日の会見で明らかにした。正確な温度は測れていない。
1~3号機と同様に中央制御室に電気を通し、計器類などを回復させる。同時に、使用済み核燃料プールの冷却機能を元に戻す作業を進めているが、実現のメドはまだたっていない。
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