収入額に左右されない支出管理のヒント

生涯同じ給料で過ごす人もいるかもしれませんが、ほとんどの人は、給料は変動するものです。転職、結婚、離婚などにより生活が変わる場合にも、支出の見直しをしなければなりません。ということで今回は、 収入額の変動に左右されずうまく支出管理をするためのヒントをご紹介いたします。

収入額を目安に支出の調節をしがちですが、環境の変化に合わせて心境も変わり、そして支出も変動するものです。そんな中、上手に資産管理するにはどうすべきか『I Will Teach You To Be Rich(お金持ちになる方法)』の著者であるRamit Sethi氏と、負債返済のエキスパートであり、ReadyForZeroのCEOであるRod Ebrahimi氏に聞きました。

■収入が増えた時の支出管理方法

収入の増加による支出の見直しとは嬉しい悩みですが、それが簡単なことだとは言い切れません。手元に入るお金が増えれば当然支出が増えがちになります。支出を減らさなければならないということではありませんが、計画的なお金の使い道があるに越したことはありません。

ステップ1.散財する前に計画を立てる

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誰しも昇給や臨時収入に心が弾むでしょう。でもまだお金を使うのは待ってください。Ebrahimi氏によると「高額なものを購入する前に、しっかりとした支出計画を立てるべき」なのだそう。

まず重要なのは、収入が高くなったからとすぐさまライフスタイルをアップグレードするまたは生活への理想を高くしすぎてはいけません。なぜならば収入の増加とともに幸福感が増し、さらに生活への期待も大きくなるため、結局そこそこの幸福感しか味わうことができなくなる「ヘドニック・トレッドミル」と呼ばれる状態へ近づくリスクを背負うことになり将来への資産を増やすための素晴らしいチャンスまでもを逃しかねないのです。

もちろん増えた分の収入を使っても問題ありません。しかし短期間だけやひとつの目標だけのために貯金するではなく、やはり将来のための貯金をしなければなりません。

「今稼いでるお金を全て銀行に預けるべきだ」と言う専門家もいますが、あまり現実的ではないですね。収入が増ればヘドニック・トレッドミルに直面するものです。しっかりとした計画さえあれば支出が増えても問題ありません。「収入が増えたから」とただ出費を増やすのではなく、収入に見合った「出費の割合」を算出しましょう。

収入と支出だけに限りませんが、良いバランスが重要です。 臨時収入が手に入っても、将来を視野に入れた支出計画を立てましょう。もちろん、頑張った自分へのご褒美も忘れないでくださいね。

Photo by JD Hancock.

ステップ2.将来に備える

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余った現金があれば、公共料金や借金の返済に使いたいところですが、「将来への備え」が一番目のステップです。Ebrahimi氏はお金を別のものに使ってしまう前に緊急用の貯金を作るようにと薦めています。

理想は6ヶ月分ですが、まずは最低3ヶ月分の生活費をまかなえる金額を目安にします。収入がなくなったときだけでなく、急に体調を崩したときや、車が故障したときなど、予期せぬ出費に備えられます。

「まずは支払いを済ませたい!」という気持ちもあるでしょうが、未来の支出状況は誰も予測できません。将来への備えが未来の生活を豊にするのです。

Photo by Tax Credits.

ステップ3.高利子ローンを自動返済

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Sethi氏は「自動化への切り替え」の提唱者です。貯金、予算管理など全てが自動で行え、なによりシンプルです。例えば、収入全体の5%である1万円をクレジットカードの返済に使っていたとします。そして収入が増加するとその金額も上がります。この方法の良い点は、収入金額が変わっても、支出の割合は変わらず簡単に管理できます。

ただし複数のローンを支払っている場合は例外で、利息の高いローンの支払いを先に済ませるべきであるとEbrahimi氏は語っています。

利子の高いローンを完済することで今後の生活が楽になり月々の返済額をもとに支出の計画を立てる必要もなくなります。

既に家計を自動化しているのであればさらに高利息ローンに目を向け、もし自動化を利用していなければ、この魔法の力で家計を楽にしましょう。

Photo by Ruben Schade.

■収入が減った時の支出管理方法

解雇や給料の低い仕事への転職などにより収入が減った場合どうすることもできないと感じてしまうかもしれません。しかしそんな時こそポジティブな姿勢を保ち、負債削減に向けて支出を見なおしましょう。

ステップ1.支出を見直して前向きに

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収入の減少による支出見直しは簡単ではありませんが希望を捨てないでください。そんな時こそ慎重に行動し、新しい収入に見合った支出計画を立てなければなりません。

まずは一時的だけでも良いので生活の質を変え前向きでいることが第一です。

もちろん外食から自炊への切り替え、リサイクルショップの利用、流行の洋服からセール品に切り替えるなどと、新しい収入に見合った生活レベルへ切り替えるための努力も必要です。

料理の腕前に関わらず、誰でも簡単に作れるメニューはたくさんあるので、自炊は簡単に始められます。リサイクルショップの利用は「いつ、どこへ行くか」を知るだけです。 高級住宅地に近いリサイクルショップでは良い物が手に入りやすく(英文)、春はさらにお買い得です(英文)。

Sethi氏は「交際費」も出費の大きな要因であると言います。あなたの「まかなえる金額」に問わず、家族や友達からの誘いは尽きないでしょう。Sethi氏のシンプルな解決法は以下の通りです。

それはまず、「決まり台詞」を用意することです。誰しも自らの弱点をさらすように「お金がないから......」などとは言いたくありません。彼の著書に「計画を作りその計画に責任を負わせる」と書かれています。「もちろん行きたいけれど、今月の支出計画に妨げられているんだ。」というように断れば、あなたではなく計画が悪者であるかのように聞こえるのではないでしょうか。

残念ながらこのシーンへの対処法は恐らくほかにはありません。しかし、この状況を改善する方法はいくつかあります。

Photo by Memphis CVB.

ステップ2.予算の無駄を省く・自動更新費用を削減

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なんと言ってもまずは無駄な出費をできるだけ減らし、これまでなら使っていたであろうお金を「使いたくない」と思うように思考回路を変えてしまいましょう。

まずは「出費を抑える」ことが肝心です。減らしたり無くしたりできる出費がないかチェックします。毎月の出費は金額が高く、一部しか削減できません。例としてあげられるのは車のリースやローンです。安い車が買えるお金を持っているか、電車やバスの利用へ切り替えられなければ完全に省けません。

新しいライフスタイルにすぐに溶け込める場合を除いて、もし金銭的に余裕があればそこまで大胆な行動をとる必要はありません。

その理由は、この様な状況下におかれると人はどうしても短期間で無理に出費を抑えようとしてしまう「認知的倹約家」になる傾向にあります。認識力や自制心には限界があるため、例えばコーヒー代から住宅ローンに至るまでの全てを制限してしまうと、大きな問題へと繋がります。

より多くのお金を使っている対象の上位2位までを考えてみてください。若い世代は「外食やアルコールへの費用を削るなんて絶対に無理!」だと思うでしょう。 出費をゼロにするなんて到底無理で長続きしません。半年以上をかけて30%削減を目標にゆっくりとがんばってください。

もうひとつの方法も月々の出費の削減が基本です。信じがたいかもしれませんが、少しの行動で出費を抑えられます(英文)。そしてわずかな努力で支払すべての金額を減らすことも可能です(英文)。ケーブルを解約して大幅節約し(英文)、代替サービスとしてオンラインに登録したり、場合によってはセットトップボックスを購入する(英文)ことでも節約できます。

月々の支払を個別にチェックして節約できる出費は減らしましょう。ワイヤレス・インターネットが使える職場で働いていれば携帯のパケットサービス料金を見直して、安い折りたたみ携帯電話のSMSをフル活用してスマートフォン顔負けの機能(英文)を利用することもできます。 こうした少しの積み重ねで驚くほどの節約ができるようになります。お財布の中身に関わらず無駄な出費はないに越したことはありません。

Photo by Images Money.

ステップ3.自動振替と自動積立の利用

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ここでもまた「ファイナンスの自動化」が重要なカギです。その理由は生活費の支払い後の残金を明確に把握でき、わざわざ余計な時間を使って、残りの予算を計算せずに済むからです。

家計簿で出費の行き先を記録している人はたくさんいるでしょう。しかし自動化に切り替えれば同じ内容を確認でき、わざわざ細かい確認をする必要もなくなります。

もちろん今後の金銭管理をせずに済むわけではありません。個人向けファイナンスサービス『Mint』を利用すると何に出費しているかをとても簡単に把握できます。

そして、「収入が減った=貯金ができない」と考える必要はありません。予算だけに気を取られるのではなく、シンプルに自動システムの中で予算の見直しをするだけでよいとSethi氏は語っています。

心理学や個人向けファイナンスの書籍に「自動積立や自動投資は成功への近道」という研究結果が記されています。まずは少額から始めて、少しづつ金額を増やしていくだけで良いのです。給料を引き出す前に、自動で別の場所に移動させてしまいましょう。

貯金も手元にある現金も、結局はお金です。支払いにお金を使ってしまうより貯金に回せば後からそのお金を支払いに使うことができるのです。収入の増減に関わらず、同じシステムで「与えられた生活費でのやりくり」ができることが肝心です。借金の完済をする場合そうはいきませんが、それでも赤字を出さないようにしなければと肝に命じる手助けになるでしょう。

ステップ4.公共料金と所持品の見直し

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どんなに厳しい予算管理をしても、必ずしも予想外の出費まで月々の給料でまかなえるとは限りません。そんな時こそ見直しが必要です。Ebrahimi氏が推奨する方法は以下の通り。

必要があれば所持品をネットオークションなどで売って、緊急用の貯金へと変えましょう。不要な本や洋服、アクセサリー、電化製品が驚くほど高く売れるかもしれません。もし家を所持していて、そこに使用していない部屋があれば貸間としての賃貸を検討する手もあります。

Photo by Dan McKay.

ステップ5.副業をはじめる

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ここでそろそろ収入を増やす方法について考えてみましょう。収入を増やすことに集中するためSethi氏、Ebrahimi氏ともに副業を薦めています。当たり前のように聞こえるかもしれませんが、収入が大きく減った時にはそれを意識しなければならないのです。

短時間の仕事が探せるサイトや、Mechanical Turkのようなサイトで仕事を見つけたり、Mechanical Turkのようなアンケートに答えて報酬を受け取ったり、空き時間でタイピングをする仕事もあります。時間さえあれば、少しの努力で収入が得られます。

スキルがあれば今の仕事を続けながらフリーランスをはじめる(英文)ことも可能です。しっかりとした料金設定などを考えた上で臨みましょう。

どのような金銭的状況の変化の中にいる時も、その変化を把握し、状況に順応しなければなりません。お金を取り巻く環境は絶えず変化しますが、支出コントロールを身につけることにより将来は明るくなるのです。

Title image remixed from United States government, ~bsp2232, and Ildar Sagdejev.

How to Change Your Spending Habits when Your Salary Goes Up (or Down)|Thorin Klosowski

Thorin Klosowski(原文/訳:Rhyeh)