こんにちは。一日3時間をニコニコ動画に費やすダメ社会人、山田井ユウキです。

今日もさっそく最近流行の動画や埋もれている良動画を独断と偏見で皆さんに紹介していこうと思います。選ぶ基準はただ一つ、僕の趣味です!

ニコニコ動画にはたまに、「何でこんな人がニコ動に!?」と驚いてしまうような人物が普通に動画をアップしていたりしますが、今回ご紹介する藤山晃太郎氏もそうした意外な人物の一人です。

ニコニコ動画に和の文化を定着させた仕掛け人であり、そして自らも伝統芸能の世界に生きる藤山晃太郎氏とはいったい何者なのでしょうか。動画と共にご紹介していこうと思います。

・「勝手に『ニコニコ動画』案内」のバックナンバーはこちら
・2010年2月5日以降の記事はこちら

藤山晃太郎氏が初めてニコニコ動画に動画を投稿したのは2009年4月のこと。当時ニコニコ動画で爆発的な人気を誇っていたボカロ曲「ダブルラリアット」の楽曲に合わせてひたすらシルホイールで回るというシュールな内容が話題となりましたが、それと共にもう一つ話題になったのが、この藤山晃太郎氏が日本の伝統芸能である江戸古典奇術『手妻』の継承者・手妻師であるということでした。

こちらの動画が、そんな彼の本業である手妻を披露している映像です。ここで使用している「幽雅に咲かせ、墨染の桜」は、ニコニコ動画でも大人気の「東方Project」の楽曲であり、そもそも藤山氏が同人やネットカルチャーに明るい人物であったということがわかります。そう考えれば、藤山氏が自らニコニコ動画に動画を投稿したのも、ある意味自然な成り行きだったのかもしれません。

そんな藤山氏が、ニコニコ動画の中で一気に知名度を挙げることになったのがこちらの動画。当時ニコニコ動画で大ヒットしていたゲーム「エルシャダイ」のPVを実写で忠実に再現するという内容で、藤山氏は主人公のイーノック役として出演。コスプレして殺陣を披露した本動画は再生数100万回を突破するなど大きな話題となり、ニコニコ動画の中で藤山氏は「エルシャダイ演ってみたの人」として定着していったのでした。

その後、ニコニコ動画のイベント「ニコニコ大会議2010-11 全国ツアー in 高崎」にも出演して手妻を披露するなど、すっかりニコニコ動画の著名ユーザーとしての地位を確立した藤山氏。そんな彼が、今度は動画のプロデュースに乗り出しました。

三味線奏者の杵家七三と、笛・尺八奏者の竹井誠。日本の伝統芸能を代表するメンバーを集め、何とも豪華な演奏動画をプロデュース。楽曲の「法界唯心」はやはり東方ProjectのBGMをもとにしており、和楽器アレンジされた荘厳な音色は多くのニコニコユーザーを感動させました。当たり前ですが、これらの方々は"ガチプロ"であり、これほどのメンバーを集めることができたのは、ひとえに伝統芸能の世界に生きる藤山氏の人脈によるものであることは間違いありません。

「エルシャダイ 演ってみた」以来、ニコニコ動画内では「イーノックの人」として認識されがちな藤山氏。あまりにも自然にニコニコカルチャーに溶け込んでいるため、ついつい勘違いしそうになるのですが、藤山氏の本業は面白コスプレイヤーではなくて、伝統芸能「手妻」界の偉い人ですので、そこのところ誤解なきようよろしくお願いいたします。

ニコニコ動画と伝統芸能という一見相容れないように思える文化同士の架け橋として尽力してきた藤山氏。そんな彼がプロデュースした動画で、最高傑作と名高い作品がこちら。

出演は「法界唯心」に引き続き、三味線奏者の杵家七三と、笛・尺八奏者の竹井誠。さらには三味線奏者・佐藤さくら子、箏の大畠菜穂子、尺八奏者の水川寿也、打楽器奏者の多田恵子など、前回よりもさらにメンバーが増えており、いずれも大御所ばかり。楽曲はニコニコ動画内で最高の再生数を記録している「BadApple!!」を邦楽アレンジした「傷林果」で、もはや「これをタダで聴いていいのか?」と心配になってしまうほどの完成度を誇っています。藤山氏がいなければ、ニコニコ動画に伝統芸能音楽が根付く時期はもっと遅れていたに違いありません。

最近では、この「傷林果」に歌い手の杏ノ助さんがボーカルとして加わった動画がランキングを賑わしています。ニコニコ動画らしい二次創作の波が、伝統芸能の世界にも押し寄せてきているのかもしれません。

新旧の日本文化が融合した「ニコニコ伝統芸能」の世界。その立役者として、藤山晃太郎氏はこれからもさらなる活躍を見せてくれることでしょう。

勝手エヴァンジェリスト・山田井ユウキ

1980年生まれ。レビューサイト「カフェオレ・ライター」で、映画、漫画、ゲームなどを独自視点からレビューする他、「builder by ZDNet Japan」「ハリウッドチャンネル」など各種媒体で記事を連載中。どんなに忙しくても一日数時間ニコニコ動画に費やすという、社会人としてあるまじき生活を謳歌中。好きな動画ジャンルはゲーム実況、ボカロ、他エンタメ系全般。

(タイトルイラスト:3P3P)

※本コラムで紹介している動画は、作者やサイトなどの都合により削除されることもあります。あらかじめご了承ください。