ライオンやチーターが駆け回るアフリカのサバンナだが、この小さなハンターも壮絶な狩りを繰り広げている。ヒヨケムシだ。
ヒヨケムシは英語でウインド・スコーピオン(風のサソリ)やキャメル・スパイダー(ラクダのクモ)と呼ばれるため、よく間違われるが、クモでもサソリでもない(もちろん、ラクダでもない)。ヒヨケムシはクモ綱のうち、ヒヨケムシ目というグループに属している。
巣は張れないし、毒液も出せない。だがスピードは驚異的で、ぎざぎざした特大の顎で小型のトカゲを難なく真っ二つにできる。(参考記事:「サハラ砂漠の華麗なムシたち ヒヨケムシ編(閲覧注意画像アリ!?)」)
動画が撮影されたのは、南アフリカ共和国のクルーガー国立公園に隣接するロンドロジー動物保護区。サファリツアーを案内していたガイドのガイ・ブランスキルさんが、格闘中のヒヨケムシを見つけ、すぐに自分のカメラを取り出した。
意外に思うかもしれないが、ブランスキルさんの動画は早送りはしていない。ヒヨケムシの実際の速さだ。
しかし、ヒヨケムシの武器はスピードだけではない。のこぎり状の顎も備えており、大きいもので体長の3分の1にもなる。顎の縁には鋭い突起が並び、シロアリやその他の節足動物はもちろん、小型のトカゲを覆う硬い外皮も引き裂くことができる。(参考記事:「噛みつく奴ら」)
並外れたスピードの理由
ヒヨケムシは並外れたスピードで獲物を不意打ちし、相手をしっかりつかむと、強力な顎でばらばらにする。
ブランスキルさんは、今回目撃したシーンをブログ記事で取り上げ、ヒヨケムシの狩りの能力を賞賛している。「この小さくて独特な虫に、誰もが強く興味をそそられます。獲物をスピードで圧倒できるよう、どんなふうに適応を遂げたのか…」
機敏な脚の動きゆえに、ヒヨケムシはヤスデをあっという間に倒すことができる。だが、環境問題研究家で、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーでもあるアルベルト・ボルヘス氏は、ヒヨケムシが素早く動く理由は別にあるのかもしれない、と考えている。
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