情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

大本営発表、そして、冷温停止のまやかし~いったいいつになったら燃料棒の処理ができるのか?

2011-07-20 08:47:09 | そのほか情報流通(ほかにこんな問題が)
 昨日久しぶりに東京電力の記者会見に参加した。事故収束に向けた工程表の発表から3ヶ月経ち、第1ステップから第2ステップへと進むことを前提とした新たな工程表の発表があるからだった。相変わらず、「大本営発表」が行われており、東電、そして政府に真摯さが足りないことを痛感した。

 私が行った質問は3点。いずれも、政府の代表として参加した園田康博政務官(衆議院議員当選3回、岐阜3区)に対するものだ(細野さんは先に退席)。ちなみに園田さんは、公式ウェブサイト(※1)に【日本国憲法に「知る権利」がないことを知りそのあり方を研究してきました。そしてこの問題に議員が誰も取り組んでいないことを知り国民誰もが「知る権利」を憲法に明記したい!その熱き思いで、国会議員になりました】という方で、その思いをぜひ、会見でもぜひ、実現させてほしいと思っています。

※1 http://homepage3.nifty.com/yy-sonoda/profile.html


 質問の一つめは、今回の新たな工程表においては熱交換器を使用した冷却方法が断念されており、冷却機能が大幅に低下した状態(現在の方法=単に水を胃原子炉に注入する方法)での冷却を行うしかないこととなるが、その場合、燃料棒を取り出す等の状態まで冷却するのにどの程度の時間がかかるのか?

 もう一つは、原発から放出されている放射線量について、毎時10億ベクレルとし、その場合、原発の敷地境界での被ばく量は年間1.7mSvとなるとのことだが、その数値を出すための計算式を明らかにされたい。

 3つめは、東電は、外国からの支援リストすら明らかにせず、作業員の負傷事故が起きたときにも所属下請け先を明らかにしない(下請け側が発表した後でさえ)というように情報公開するつもりがないようだ。きちんと情報公開するように東電に指導するつもりはないのか?


 一つめの質問は、「大本営発表」に対するものだ。下の表は昨日の資料の一部(※2)で、下から4つめに、「熱交換器の確保」という欄があり、そこに、「現段階では不要と判断」とある。おいおい、熱交換器による冷却ができるに越したことはないはずで、「不要と判断」ではなく、「現段階では断念」というのが正確な表現だ。




※2 http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu11_j/images/110719v.pdf

 冒頭の図は、東京電力が福島第一原発について説明している資料(※3)の一部だが、この左下にある残留熱除去系(RHR)がいわゆる熱交換器を利用した冷却装置だ。※3の資料の説明によると、この装置は次のようなものだ。


 
※3 http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_110618_04-j.pdf
 

 熱交換器を利用した冷却がいかに効果があるかが分かる。原子炉停止後に冷温停止に持ち込むためには、このような装置が必要なのだ。だからこそ、東電は4月の段階では、次のように熱交換器を設置することを目標としていた(※4)。



※4 http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu11_j/images/110417e.pdf

 それがメルトダウンが明確となり(東電は当初から分かっていたと思うが…)、炉内の水循環ができないことが明らかとなったために熱交換機の設置を不可能と言わざる得なくなったいま、東電は、断念とはいわず、不要と言い換えた。まさに、「撤退」を「転進」とした大本営発表そのものだ。

 だからこそ、私は、撤退の意味を明らかにするために、熱交換器を使わない場合の冷却能力(これが熱交換器を使う場合よりもはるかに能力が劣ることはこれまでの会見から明らかになっている。※3の資料からも分かる)をデータで出すよう求めた。結局、この日、それを明らかにしなかったが、これを秘密にすることは事故収束の根幹部分を明らかにしないことになるわけで、工程表の実現性に重大な疑問を抱かざるを得ない。細野さん、園田さん、速やかに明らかにしていただきたい。

 ちなみに、「冷温停止」(cold shutdown)とは、通常運転している原発を停止した場合、仮に制御棒がはずれても、炉内の圧力が下がっても安全なレベルという意味で使われてきたのであり、メルトダウンしている場合には、意味のない言葉だ(※5)。いまの福島第一原発で重要な問題は、いまのように水を入れて冷やすようなことがいつまで続くのかということだ。熱交換器を使わない以上、冷却までに時間がかかり、燃料棒をはずしたり、あるいは、チェルノブイリのように埋めてしまうなりするまでの時間もかかってしまうのではないか? この疑問に政府は答える必要がある。今回、政府は、「冷温停止状態」を「圧力容器底部の温度が概ね100度以下になっていること」「圧力容器からの放射性物質の放出を管理し、追加的放出による公衆被ばく量を大幅に抑制していること」としたが、それなら4月にすでに実現していたわけで、まやかしの定義と言うほかない。


※5 http://en.wikipedia.org/wiki/Shutdown_(nuclear_reactor)




 二つ目の質問については、園田さんは明らかにすると約束した。その姿勢は買いました。でも、一つ目の方もよろしく!この質問については、数式なんて明らかにしてもらっても分らないだろうっていう疑問もあるかもしれない。しかし、私が分からなくても、世の中にはこの数式が分かる人はたくさんいる。明らかにするということは嘘がつけないということだ。情報公開というものの狙いはまさにそこにある。法廷が公開で行われるということもそれが狙いだ。不正をしたらばれる可能性がある、それが不正を防ぐために必要だ。情報を公開しないということは不正をしていますと自白するようなものだ。

 現在の放射性物質放出量について、細野さんは「保守的に見積もった」と胸を張ったが、その言葉を千回繰り返すよりも、数式を明らかにすることの方がはるかに説得力がある。そう思いませんか、園田さん。



 3つめの質問はいわずもがな。先に退席した細野さんだけでなく、知る権利を実現するために議員になった園田さんにも大いに期待しています!


 



 



●日本、特に東北・関東の保護者必読の書●

「ICRP Publ. 111 日本語版・JRIA暫定翻訳版」(http://www.jrias.or.jp/index.cfm/6,15092,76,1,html)

「緊急時被ばく状況における人々に対する防護のための委員会勧告の適用(仮題)=109」
(http://www.jrias.or.jp/index.cfm/6,15290,76,1,html)

アメリカ科学アカデミーの文献「BEIR-VII」(Biological Effects of Ionizing Radiation-VII、電離放射線の生物学的影響に関する第7報告)
http://archives.shiminkagaku.org/archives/radi-beir%20public%20new.pdf






◆東電本社の記者会見は、午前11時~正午から始まる単独会見、午後5時ごろからの統合本部会見の2回となっている。インターネットで生中継と録画配信されている◆

 → ニコ生 http://live.nicovideo.jp/ 

   岩上さんのサイト http://ow.ly/4wCEr





◆以下参考◆


原子炉建屋とタービン建屋の図。クリックで拡大できます。

   ↓

 


【日弁連会長声明】
「東北地方太平洋沖地震による福島第一原子力発電所の事故に関する会長声明」 http://ow.ly/4n21n

●今後想定されるあらゆる事態、並びに、各地の放射能汚染の実情と被曝による長期的なリスクに関する情報、被曝防護に関する情報を正確かつ迅速に国民に提供し、適切な範囲の住民を速やかに避難させるよう求めるとともに、原発の新増設停止、既存原発についても電力需給を勘案しつつ危険性の高いものからの段階的停止を提言



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Marine in Futenma must go back to your country. There is no place where the base of Marine is acceptable in Japan.

Okinawa and a lot of Japanese oppose the transfer of the Futenma base to Henoko


At least180 MPs of ruling parties say NO to Futenma relocation within Okinawa. Check this http://bit.ly/9jQIW8



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